10/82
第十章 灯の道しるべ ― 9 隠者(The Hermit)
夜。霧が立ち込める山道をひとり歩く男がいた。背を丸め、手に小さなランタンを持つ老人――バラン。
「お前も迷い人か」
レオは頷く。バランは手元の灯を掲げて言った。
「灯りとはな、暗闇に進むためにある。見える道を歩くだけなら、いらんのだ」
小さな灯が、足元を照らす。ほんのわずかな光でも、進むには十分だった。
「知識は積まれた書にあるが、智慧は自分の中にしかない。お前はその旅に出ている。だからこそ、急ぐな」
静かな言葉が、深く胸に響いた。