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計画は順調。じゃあ次の段階は?

「大丈夫?」

「うん」

「ふらふらしたり、気持ちが悪かったりしない?」

「うん、しないよ」

魔法陣の縮小コピーの魔法は魔力を多く使うからと、俺が縮小コピーで魔法陣を魔道具に転写する度、お母さまは心配そうに聞いてくる。


 前世では、母を早く亡くした俺には、何だかくすぐったい気分になる。

「無理はだめよ」

「うん!」

俺の魔力量は、父方から受け継いだのかかなり多いらしく、今のところ縮小コピーだけで、体調が悪くなることはない。より詳しくは、父の実家のクラルヴァイン公爵家は、「剣」の家なので、「剣」と「魔法」の融合のための政略結婚をした、俺の祖母に当たる人から受け継いでいるらしいけど。


「だいぶ小さくできるようになったのね」

何でもない俺の様子に安心したらしく、お母さまが俺の作ったばかりの魔道具を見て感心したように言った。

「もうちょっと小さくしたいんだけど……」

俺が目指しているのは、目立たずにつけられる防御の魔道具だ。理想としては、指輪くらいのサイズを目指しているけど、今は、まだ大人の手のひらくらいのサイズだ。

「でも十分小さくなったわよ」

「そうかな?」

「ええ」

お母さまは褒めてくれたし、思い起こせば最初に魔道具を作り始めたころに比べれば、確かにだいぶ小さくなってはいる。それに、防御の魔道具を渡したい相手はまだこの世に生まれていない。実際に使いたいのはもう少し先の話なのだから、焦る必要はない。


うむ。

「じゅんちょー」

「ええ、順調でしょう」

俺が胸を張ってみせると、お母さまも笑って頷いてくれた。魔道具の縮小化が順調だと思うと、別のことが気にかかってくる。……兄さんはもうこの世界にいると思うんだよな。小説の中では、今の時期はお祖母さまに引き取られているはずだ。前世の兄が俺みたいに転生しているんだと何となく、でも確信しているけど、違うかもしれないという躊躇いもあるし、何しろ今の年齢とこの小さな体だ。1人でお祖母さまの屋敷に突撃することはできない。そうすると、どうやって兄とコンタクトを取ればいいだろう。魔道具の開発が順調だと思ったら、兄とのコンタクト方法がいよいよ気になり始めた。

うーむ。

魔道具の勉強の間に悩んでいたら、

「あずき」

俺が魔道具の勉強をしている間に、とお散歩に庭に出ていたあずきが戻ってきた。

「あれ?」

その背中に何かが乗っている。


「とり?」

あ、もしかして。

「ぴーちゃん?」

「ぴぃ!」

呼びかけに、あずきの背中に乗っていた鳥?みたいなものが前世と同じ鳴き声で答えてくれる。

「でも……」

これ、鳥じゃない、よな?羽はついてるけど、頭は前世の頭とは似ても似つかない、いかついものだし、体も全体的に様子が違う。

「これは、もしや」

鷲の頭と羽と、獅子の体、とかいうグリフォンじゃないだろうか。……前世のファンタジーで得たイメージよりはだいぶ小さいけれども。


「ぐりふぉん?」

「ぴぃ!」

思わず本鳥に確認してみると、相変わらずの鳴き声と共に首を縦に振っている。……グリフォンの鳴き声ってぴぃ!なの……?とこちらは思わず首をかしげたけど、ぴーちゃんの振っている首に何かついている。手を伸ばすと、ぴーちゃんは、取って、と言うように首を差し伸べてきた。促されるままにぴーちゃんの首から巻き付けられているものを手に取る。すると、それは布に包まれた紙だった。

「これは……」

紙を広げてみると、そこには。

「にいさん……」

この世界に生まれてからは初めて見た日本語がびっっしりと書いてあった。……兄からだ。前世の名前で俺のことを呼ぶ宛名から始まり、元気でやっているか、大切にされているか、辺りまでは状況がわからない中では当然の問いだと思うけど、そこからが兄らしい心配性っぷりだ。事細かに色々なことを心配している。腹を出して寝ていないか、お前はすぐ腹を壊すから、て俺をいくつだと思っているのか。……まあ、今の体は幼児なんだけど。


「ぴーちゃん。へんじもってってくれる?」

「ぴい!」

「じゃあ、ちょっとまっててね」

返事を書くまでの間待っててもらい、兄さんが使っていた布を使って来たときと同じように首に結びつけたところへ俺の様子を見に来た侍女のブリギッタが現れた。ブリギッタは、ぴーちゃんを見て、また俺が何か尋常じゃないものを拾ってきたとぎょっとして、それから俺がぴいちゃんを窓から放つのを見て、ホッとしていた。けど、ホッとするのはちょっと早いんじゃないかな。たぶんぴーちゃんはしょっちゅう来ることになると思うから。

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