とうとうあの子と会えた
兄さんと俺は緊張してお祖母さまと座って待っている。この屋敷に着いたとき、今住んでいるアッヘンバッハ侯爵家の別邸で迎えられたときよりさらにすごい出迎えを受けて、内心で引いていると、すぐにお祖母さまが現れて、この部屋まで導いてくれた。そして、待っている間も緊張している俺たちを、
「アンネマリー殿は、お前たちに含むところはないから、そんなに緊張しなくても大丈夫だ」
お祖母さまがなだめてくれているところへ、ノックの音がする。
「「!」」
思わず兄さんと俺がビクッとすると、
「失礼いたします」
涼やかな声がして、その人は部屋に入ってきた。
「まあ、この子達がエルヴィンが会いたがっているお兄さまたちですのね!」
胸の前で手を組んで勢いよく歩み寄ってくるその人を、
「ああ、そうだ。……こちらがアンネマリー殿だ」
お祖母さまが紹介してくれる。
「ヴィルマーと申します。よろしくお願いいたします」
すかさず兄さんが、緊張していた割に卒なく挨拶をしたので、俺も慌てて、
「アンゼルムでしゅ。よろしくお願いしましゅ!」
挨拶したけど、噛んだ……。
俺が密かに落ち込んでいると、俺の目の前に立ったアンネマリー様はそっと俺の手を取ってくれて、
「なんて可愛らしく、しっかりしたお子たちだこと」
感心したように、優しく言ってくれた。それから、
「さすがトルデリーゼ様のお孫さまですわね!」
と熱烈にお祖母さまを褒めた。その熱烈さに思わず兄さんと俺が、お祖母さまを見ると、お祖母さまは苦笑交じりに、
「アンネマリー殿は、どうも私のことを尊敬してくれているようでな」
説明してくれた。
「ええ、ええ、トルデリーゼ様にお会いしたくて嫁いできたのですもの!」
「それは……」
何というか、すごい。結婚の理由についてお話してたとき、お祖父さまが歯切れが悪かった理由がわかった。ちょっとこの勢いを表す言葉を探せなかったのだろう。
「あなた達に会えてうれしいわ」
これは、お祖母さまの孫であることが大きそうな歓待だ。お祖母さまの孫で良かった。
俺がそんなことを思っていると、
「トルデリーゼ様のお孫さまだから、というだけではないのよ」
アンネマリー様は、俺に視線を合わせて言ってくれた。
「そうなの?」
あ、思わず聞いてしまった。
「そうなのですか?」
慌てて言い換えると、
「いいのよ、そのままで」
とアンネマリー様は微笑んでくれる。
そして、
「あの子が……」
と言葉を続けようとしたとき。
「にーに!」
声が聞こえた。
振り返ると、いつの間にか開いていた部屋のドアから、小さな男の子が入ってくるのが見えた。
「凛!」
「りん!」
兄さんと俺は、思わず前世の名前を呼んだ。それは、確かに弟だった。年恰好とか状況とかから推測できるだけじゃない。ただわかった。
「にーに!」
よちよちと歩いてくる弟を待ちきれずに、俺もとてとてと駆け寄った。そして、ぎゅっと抱きしめあう。
「やっとあえた」
「にーに」
俺たちが抱きしめあっていると、
「やっと会えたな」
兄さんも歩み寄ってきて、そっと俺たちを抱きしめてくれた。
俺と、り、じゃないエルヴィンは、
「にーに」
「兄さん」
揃って、兄さんに向きなおって、3人で抱きしめあう。やっと3人揃うことができた。抱きしめあう俺たちを、お祖母さまもアンネマリー様も優しく見守ってくれていた。
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