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縁-えにし-  作者: 狸塚ぼたん
二章
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未解決事件専従捜査


「で、話って?」


「未解決事件専従捜査班って聞いたことあるか。名前の通り、長期未解決事件の捜査強化のために設置された捜査班のことなんだが」


「えげつないくらい仕事の話でドン引き」


葵は顔を引き攣らせながら、ビール缶を空けた。


「まあ、最後まで聞け。大体は事件発生から五年以上経ったものを引き継いで捜査するんだが、その中でどう考えても人間が起こせるような事件とは思えない事件があって……」


「で、その事件の担当にお前がなったと」


「ああ」


はー、つまんな。


「なんで柳原のおじさんもお前もそういう話ばっか持ってくるわけ。僕、別に怪異オタクとかじゃないし。そういうの仕事だけって線引きしてるんだけど」


「……そうか。お前の親戚が絡んでる話だから、少しは興味を示すと思ったんだが」


悪かったな、と巧は立ち上がり帰り支度をしようとする。


「は? なに、親戚って」


「これ以上は捜査上教えられない。……お前が捜査協力してくれるのであれば話は別だが」


「はあ?」


いつもの意地の悪いにやにや顔は、完全に消え失せていた。

そこに笑みは一切ない。

鋭い目つきで葵を見下ろしていた。


……これが人に物を頼む態度かね。


巧は警察官になってから仕事の話をしたことは一度もなかった。

仕事に対する愚痴一つ聞いたことがない。

そんな巧が頼りに来るということは、それだけ捜査が難航しているということだろう。

恐らく、葵が最後の頼みの綱。

本当は藁にもすがる思いでここに来たに違いなかった。


「お前の親戚が絡んでるかまだ確証はないが、嫌なら無理に協力しろとは言わない」


「お前さ、もう少し素直になったら?」


「あ?」


「俺にはもうお手上げです。葵くん、どうか捜査に協力してくださいお願いしますって、なんで素直に言えないわけ。わざわざ親戚が危ない的な雰囲気まで匂わせてさ」


「……お前が興味無さそうだったから」


「興味はないよ、親戚嫌いだし。まあでも、次の物件に飛ばされるまではどうせ暇だから、心優しい葵くんが付き合ってあげてもいいよ」


にこにこと人の良さげな笑みを貼り付ける葵。

初対面の人間であれば恐らく十人中八人、「優しい人」「いい人」「頼りがいがありそう」と思うに違いない。

あとの聡い二人は「胡散臭そう」と答えるだろう。

付き合いの長い元初対面聡い側の巧は、眉間に深い皺を寄せた。


「何が望みだ。因みにちゃんと話は上司につけてあるから、それなりの謝礼は……」


「ひっど。金目当てだとでも思ってんの。一応社長の一人息子なんだけど」


「じゃあ他に何がある」


「僕がここにいる間、住み込みで夕飯作ってよ。お前料理上手かったよね」


巧の眉間の皺が更に深くなった。


「住み込みは無理だ。それ以外ならやってやる」


「あ、もしかして女いるの? 僕というものがありながら他の女と住んでんの?」


「……馬鹿か。親父がぎっくり腰やってる」


顔真っ赤にして、わっかりやす。

こいつに犯罪者は向いてないな。

葵は肩をすくめた。


「ま、どっちにしろ帰るのはおすすめしないよ。本当に捜査内容がソッチ絡みならの話だけど」


「どういう意味だ」


「縁の問題。向こう側に足を踏み入れることになれば、僕もお前も向こう側の奴らと少なからず縁が結ばれる。そうなると向こう側からの干渉があるかもしれない。僕なら直ぐに切れるだろうけど、お前はそうもいかないでしょ。縁は周りに伝染するから、一緒に住んでる人になにも起きないとは保証できないよ」


巧は少し迷うように目を逸らす。


「そもそもなんでお前みたいな真人間がそんな事件担当してんの? 人選したやつはバカなの?」


「俺が志願した」


志願?

目に映ったものしか信じられなかった、あの佐々木巧が?


「気になってる女の子がオカルト好きで話合わせるためとか?」


「違う。ーーどれくらいの間ここにいたらいい」


何か言おうとして飲み込んだ言葉が気になるものの、聞かなかったことにして話を続けた。


「事件現場行って見なきゃわからないけど、二、三週間くらい僕のそばにいた方がいいかもね」


「わかった」


「あと、僕の好物はミートスパゲティです」


「知るか」


巧は深くため息をつきながら再びソファに腰を下ろした。

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