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縁-えにし-  作者: 狸塚ぼたん
一章
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教え


夢日記の一件から、視えてはいけないモノが視えるようになった。

夢を媒体として隠世のモノを視てしまったからではないか、と先生は言っていた。


私生活に支障はそれ程なかった。

変わったことと言えば、最低限の言葉遣いと礼儀を身につけたこと。

同級生とは無理に仲良くしなくてもいい、保護者や周りの大人には礼儀正しくいなさい。

これが、先生の初めの教えだった。

言われてからは、きちんと自分から挨拶をするようにした。

そうすると、周りの大人は割と簡単に「ひよりちゃんは大人しくて礼儀正しい良い子」と認識を改めた。


ただ、友だちは相変わらずできなかった。

机に向かってノートに意味不明なことを書き連ねているような子に、声なんて掛けたくないだろうから無理もない。

でもそれはただ、人がいる前で直接会話ができない先生と筆談をしているだけであって、決して気が狂っているわけではないのだ。

それでも私の周りには人を近づかせない空気が漂っているらしく、幸か不幸かいじめさえ起きなかった。


学校には視たくないモノがたくさんいた。

それは人だったり、人の形すらしていないものだったり様々。

大抵は無視して解決できるのだが、本当に視てはいけないモノを視てしまったときは、決まって先生が私の目を手で覆った。


「目を瞑っていなさい」


先生のこの言葉が合図だった。

「いいですよ」と言われるまで目を瞑る。

そして、数秒後には何事もなかったかのように終わっているのであった。


きっと先生のことだから、刀を振るう自分を見せたくなかったのだろう。

わかっていても好奇心に抗えず、一度薄目を開けて先生が刀を振るう姿を見てしまった。


先生は一切の躊躇も慈悲もなく、彼らに斬りかかっていた。

子供の私が見ても、先生の無駄のない素早い身のこなしと流れるような刀捌きは美しいと思った。

まるで重力を感じさせない、舞っているかのような軽やかな動きで確実に相手の首を落とす。


「私が怖くないのですか」


目を閉じていないことに気づいた先生は、呆れたように聞いてきた。


「全然」


無意識に笑っていたらしい。

恐らくこの時、私は初めて先生に笑いかけた。

先生は叱るでもなく「そうですか」とだけ言って直ぐに目を背けた。

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