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縁-えにし-  作者: 狸塚ぼたん
三章
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白いうさぎのぬいぐるみ


残念ながら彼らを見つけただけでは、完全に解放したことにはならない。

現世で見つけたことによって切れるのは、土地との縁だけだ。

隠神との縁はまだ深く繋がっている。

隠し神を浄化しない限り、囚われた全ての魂が現世を離れることはできない。


私から将平くんのことを聞いた葵はそう言った。


「本来であれば、土地と密接な関係である隠し神との縁が繋がっている以上、自由に行動することも難しいはずです。それでも将平くんがここから離れられたのは、葵さんの力が働いているのでしょう」


友膳の言葉を聞いて、澪のことを思い出した。

澪の場合は土地との縁が強く結ばれているために、地縛霊となってそこから行動が制限されていた。

それとは別に土地ではなく、土地に根付いたモノとの縁が繋がったままの状態でも同じく行動制限はされるらしい。

葵の力により、一時的に隠し神との縁が緩んでいる状態だからこそ、将平くんは離れることができているということか。


「あ、あの、テントとか用意した方がよろしいでしょうか」


と、真壁が真剣な顔で友膳に問いかける。

その問いかけに、私たちは首を傾げた。


「まさか捜査のためにここでキャンプさせるつもりじゃないよね? 嫌だよ帰るよ。真剣な顔で何考えてんの」


葵がぞっとしたような顔で抗議する。

私も予想外の考えに真壁の正気を疑った。


「ご安心ください、私と佐々木刑事もいます」


「いや、そういう問題じゃない。わかってる? 墓場でキャンプするようなもんだよ? さすがの僕でもこの場所で寝泊まりするのは無理」


仕事で地方を転々とし、事故物件の処理をしている葵ですらここは嫌な場所らしい。

しかし、謎のやる気に満ち溢れている真壁にそんな言葉は通用しなかった。


「きっと亡くなった方々もわかってくれます。それにあちらから何かしらのアクションがあれば、それはそれで好都合かと」


「この子、大丈夫? いろいろと毒されすぎてない?」


「真壁刑事はその……責任感が人一倍強くて、周りがよく見えてないことも多々あるだけで、決して悪気があるわけではないんだ」


同期のフォローを巧が担う。

その空気感に真壁がおろおろとし始めた。


「わ、私、何か変なこと言いました?」


「真壁刑事、仕事に対する熱意は素晴らしいものです。が、寝泊まり以前にすべきことがあるでしょう」


「死者のよすが。それがなくちゃ話にならない。ここで延々とキャンプするほど暇じゃないんだよ」


「……す、すみません」


上司と葵に嗜められ、しおしおと俯く真壁。

この人も基本はとてもいい人なんだろうが、刑事としては少し不安になる。


「ひよりさん、他の子たちが生前どんなものに執着していたか、心当たりはありませんか」


友膳からの問いかけにマキちゃんとカナちゃんの姿を思い出す。


「マキちゃんはわかりませんが……カナちゃんは、いつも白いうさぎのぬいぐるみを持っていました。親から誕生日に貰ったとか」


白いうさぎのぬいぐるみ、という単語が出ると、巧と真壁は顔を見合わせた。

その様子からして、何か心当たりがあるらしい。


「白いうさぎのぬいぐるみなら調書に記載があった」


巧はポケットから手帳を取り出してページをめくる。

真壁は記憶しているらしく、話をそのまま引き継いだ。


「小宮佳奈失踪の日、彼女の家の塀の上に白いうさぎのぬいぐるみが置いてあったみたいなんです。聞き込みによると、そのぬいぐるみは同級生の男子生徒が失踪前日に、彼女から取り上げたものだったことがわかりました」


「いじめ、ですか」


「はい。当時の生徒たちが、小宮佳奈さんが複数の生徒からいじめを受けていたことを明かしています。男子生徒は彼女からそのぬいぐるみを取り上げたあと、この神社に隠したと嘘を吐いたようです」


しかし実際は男子生徒の手元にあり、家の塀に置いて帰った。

親は仕事から帰宅後、子どもがいないことに気づき警察へ連絡。

小宮佳奈はそれから二度と家に帰ることはなかった。


「神社に一人で探しに来たんだろうね。どこら辺に隠したとかは言ってなかったの?」


「ああ。しかも当時は連日雪が降ってた。形跡も目撃情報もほとんどなかったらしい」


そうして、捜索は三週間で打ち切られた。

その後、小宮佳奈の両親は離婚。

彼女の母親はもうこの町に住んでいない。


「至急ご遺族に連絡を取って、ぬいぐるみの所在確認を」


友膳に促され、真壁はその場を離れた。

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