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縁-えにし-  作者: 狸塚ぼたん
二章
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強行突破


しっかし、神さま関連かー。


葵の仕事は事故物件の心理的瑕疵の要因部分を取り除くこと。

その事故物件の中には、神関連ももちろんあった。

神社より高い土地に立地した物件、孤独死した人間が生前罰当たりなことをした物件、家の柱の木材に御神木を使った物件。

大体は祟られていた。


葵の特異体質であれば大抵の低俗霊は消せるが、神はそうはいかない。

だから次に飛ばされる物件が決まれば、まず周囲環境に神社仏閣はないか、物件が建つ前にそういった物が建っていなかったか、など必ず調べるようにしている。

それくらい難儀な案件なのだ。


「警察的にはこの事件、どう解決したいと思ってんの? 行方不明の子どもはさすがに死んでると思うよ。遺体も出てきたらラッキーくらい」


二十年以上引き込まれたままとなれば、肉体がもつはずない。

捜査とは言うものの、名ばかりなのだろう。

それは巧も了承しているのか、目を伏せながら口を開く。


「遺体が出れば、事故か自殺かで処理するだろうな。市や近所の住民たちとしては、あの不気味な神社をさっさと取り壊して市営公園にしたいらしい。被害者家族もそれに賛成してるんだが、工事をしようとすると現場に着く前に何かしらトラブルが起きて、もう四度は中止になってる」


「トラブルって?」


「トラックが悉く壊れて走行不可になったり、従業員が大勢急病になったり、道に迷って辿り着けなかったり、走行途中で交通事故を起こしたりだと」


「ウケる。神さま、超嫌がってんじゃん」


「笑い事じゃない。四度とも違う業者に依頼したそうだが、さすがに同業者間でもあの神社は近寄らない方がいいと噂になってるらしい」


ひとまず、最終目的はその神社を取り壊せるようにすることか。

葵がいれば間違いなく工事は強行的に進められる。


「いいよ。まずは神社を更地にする。その線でいこう」


強行突破。

神と土地の縁は切れないだろうが、今回それは仕事ではない。

とにかく神社を更地にする。

神社を更地にしている最中に、行方不明の子どもの骨でも見つかれば棚からぼた餅。

あとのことは警察がなんとかするだろう。

その後も行方不明者は出るかもしれないが、そこまで面倒を見てやる義理も時間もない。


榊ひより。

あの子が巻き込まれていなければの話だが。


「因みに今年の初午の日は二月二十三日なんだけど、もしかして今年がその行方不明者が出るであろう年だから今更になって捜査してんの?」


二月二十三日まであまり日がない。

もし日にちまで気にしているのだとすれば、この捜査を命じた人間は問題の神社が稲荷だと推測していたはず。

それなのに、巧に情報共有していないというのはどういうことなのだろうか。


「元々捜査はしてた。ただ、犯人が人間ではないという仮定で捜査をしてこなかっただけだ」


職務怠慢と捉えられたのが気に食わなかったのか、じろりと葵を睨んだ。


「警察のお偉いさんって頭固そうだもんね」


と、葵は嗤う。

協力を要請している手前、何も文句が言えないのを知っていて煽っていた。

しかし巧も少なからず同じことを思っていたのであろう。

咳払いを一つだけして話題を変えた。


「とにかく、二月二十三日までになんとか更地にできそうか」


巧は神社を更地にできれば、全てが解決すると信じているらしい。

ほんとお前、こういう案件には向いてないよ。

と、葵は心の中で呟いた。


「工事してくれる業者次第じゃない? 僕はその場に居ればいいだけだから、特にすることはないよ。でも一応、ひよりちゃんには会っておこうかな。いろいろ話聞きたいし」


今も無事でいるということは、神との縁は切れているのだろう。

あの子がどんなふうに育ったのか興味があった。

まあ、まともには育ってないだろうが。


「そうだな、俺もついていく」


「いや、お前は来なくていい」


「協力してもらってるんだから、行くのは筋だろ。それにお前、彼女の居所知ってんのか」


「知らないから教えて」


「俺が連れて行ってやる。あと、お前がそこまで気にかけてる彼女に興味しかない」


「馬に蹴られて死ね」


巧は例の意地悪い笑みを浮かべながら、缶ビールに口をつけた。

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