第2話 美しい少女の決意
凛は、いつもの通学路を歩く。学校が徒歩で通える距離にあるため、通学の時間はゆったりとしている。
今日のような快晴の天気だと、坂の上から綺麗な景色が見えるが、凛の憂鬱は晴れなかった。
なぜ自分がモテないのか?というより、そんな悩みを持っている時点で少しおかしい事に凛自身も気が付いてはいるが、それでも肥大するこの悩み。
はぁー、とため息をつきながら街路樹のしげる坂を歩く。坂道の重力に負けながら加速していく凛。
坂の終着点には、凛を待つ1人の少女がいた。彼女の名前は、早川 秋羅。凛にこそ負けてしまうが、彼女も美少女であった。
「おはよー。」
「はよー。」
2人は挨拶を交わす。どことなく沈んだ様子の欄を見て、秋羅はどうしたー?と声をかける。
「いやー。秋羅先生と比べて全然モテないから悩んでるんですよー。」
はー。と伸びをしながら洩らす凛に、苦笑いの秋羅。
「私もそんなにモテないからね。」
そんなことを言う秋羅に、そんなにー??と訝しげな表情を浮かべる凛。
「やっぱりファンクラブがある秋羅様は余裕が違いますねー?」
秋羅は笑顔を浮かべた後、一瞬だけ寂しそうな表情になる。あんたが特殊なのよ。と凛に聞こえないように呟いた。
「ん?なんか言った?」
「なーんも言ってないよ。まぁ、あんたも頑張れば私くらいにはなれるって。」
凛に軽口を叩く秋羅。今に見てなさいよ!!凛はビシッと秋羅に指を刺した。
そのまま、その指を秋羅のほっぺにぷにぷにと突き刺す。やえやはい、と言いながらも別に止めない秋羅。
そのぷにぷにの感触を楽しんでいる凛。そして、ぷにぷにに導かれるように彼女の中でアイデアが突如閃いた。
「そうだ!あっちから来ないなら、私から行けばいいのか!」
凛は、大声で叫んだ。突如、ガッと凛の肩を両手で掴む秋羅。突然の事に、驚く凛。
秋羅は、凛の方を真っ直ぐと見つめ、何かを言おうとした。しかし、秋羅は言葉を紡ぐ事ができない。
「あ、ご、ごめん。」
そう言って、秋羅は凛から手を離す。凛は自分の肩がジンジンと痛んでいることに気がついた。
あはは、と笑う秋羅。
「ごめん、ごめん。なんかよろけちゃって、つい凛の肩を掴んじゃった。」
何か不自然だったような気もするが、特に気に留めていない様子の凛。
「さては、私がモテちゃうことに焦りを感じてるな!?」
凛は明るく秋羅に言ってのける。まぁ、そうかもしれないねー。適当にあしらう秋羅。
「いずれ、あんたのファンクラブも私の物よ!」
高らかに宣言する凛。もう学校は間近に見えている。2人の1日が始まる。