第1話 あまりにも美しすぎる少女
ある所に、あまりにも美しすぎる少女がいた。彼女の名前は、真霧 凛。正真正銘の美少女であったが、彼女にはある悩みがあった。
それは、全くと言って良いほどモテないという事。というか全くモテないのだ。
それどころか、兄弟以外の男と話せた事もほとんどない。凛自体は、全くコミュニケーションが苦手という訳でもなく、むしろハツラツとした性格なのだが、なぜか男が寄ってこない。
ここで、凛は疑問を抱く。自分で見ても私は美人で、そして友人にも私が美人だと言われた事もある。それなのに何故モテないのか?
もしかしたら、私は醜い容姿なのではないか?そんな事を考えながら、起床する凛。
部屋のドアを開け、起き抜けの髪を手櫛で溶かしながら階段を降りる。
「おはよう。凛。」
良い匂いとともに、朝の挨拶が聞こえる。この声の主は凛の兄である真霧 蒼空だ。
蒼空は、キッチンで朝食を作っている。料理上手な兄をじっーと見つめる凛。
「ん?僕の顔に何かついてる?」
静かに首を横に振る凛。蒼空は不思議そうに首を傾げる。そのまま凛はテーブルに突っ伏した。
そんな妹の様子を見て、蒼空は微笑みを浮かべる。そして、また料理に意識を戻そうとした時、彼は鼻の奥にどろっとした物を感じた。
ぽたぽたっとキッチンに垂れる鼻血。おやおや、と言いながら愛おしそうにその血を拭く。
即座に、妹にバレぬようにキッチンを綺麗にした後、彼はすぐに料理に取り掛かった。
その一方で、机に突っ伏した凛は自身の容姿について考えていた。
もしも、私の容姿が醜いと言うのなら、遺伝子の観点から見てみよう。私の容姿が醜いのならお兄ちゃんの容姿も醜いはずだ。
ここで、凛はちらっと兄の方を見る。整った目鼻立ちに、優しい瞳、それぞれのパーツも完璧に配置されている。
妹である凛のひいき目を抜きにしても、明らかにイケメンであった。それに彼は、めちゃくちゃにモテている。
バレンタインにでもなれば、どこからともなくチョコレートが集まってくるし、モデルのスカウトを受けている姿も見飽きるほど見てきた。
という事は....。と考えたところで、テーブルに皿を置く音が聞こえてきた。
ランチョンマットを引いて、綺麗に皿を並べる蒼空。いれたてのコーヒーの香りがふわっと漂う。
さ、食べよっか。と凛に笑顔を見せる蒼空。こくりと頷き、トーストをひと口食べる凛。
和やかに朝の時間が進んでいく。朝食を食べ終え、ゆったりと学校へ行く準備をする凛。
蒼空は生徒会の仕事があるため、いつも凛より先に家を出る。
全ての準備が整い、凛は扉を開ける。快晴の空だ。どんな美しい物よりも美しい少女は、悩みを抱えたまま、外へ飛び出した。
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