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完成の条件


「さて、皆よく来てくれた。ラースタチカ内部なら情報漏洩の心配はない。各自、畏まらずにくつろぎながら私の話を聞いて欲しい」


 ラースタチカ船内に設けられた第四ホール。

 お馴染みの白衣を纏ったラエルノアが、よく透る流麗な声でそう呼びかける。


 ミアス・リューン艦隊で先王リリエリスによるクーデターが発生してから一週間。

 ラースタチカでも最上位のセキュリティ備えたこのホールには今、太陽系に集まる主要勢力の首脳たちがずらりと勢揃いしていた。


()()()()()()()()()()()()――――確かにそう仰いましたね、ラエル?」


「完成された種ってなんだ!? 俺のことかっ!?」


「あははー! ミナトは一番そこから遠いと思うけどー?」


「私は……ミナトは個として完成に近いと思います……」


「ヘッヘッヘ……心配することはない。我々ルミナスの宇宙警備隊も、この船の周囲は厳重に警戒している。無論、亜空間領域も封鎖済みだ!」


「ギャッギャッギャ! 姐さんに助けられてから俺たちゲッシュ艦隊は良いことばっかりだぁー! 完成だなんだに興味はねぇが、俺たちを食わせてくれるならどこまででもついていくぜぇーッ!」


「ラエル……完成された種が見つかったという話は私たちにとっても喜ばしいが――――なぜそれを伝える重要な場に()()()()()()()? もはやグノーシスの脅威は太陽系から去った。これ以上オーク共の手を借りる必要は――――」


「それは違うよアーレンダル。私たちの目的を達成するためには、彼ら()()()()()()()()()()()なのさ」


「オークの力が……? それは一体どういう……」


「あ、姐さああああんっ!? そこまで俺たちオークのことをおおおお!?」


 ホールに集まった面々の正面に立つラエルノアに、宿敵であるオークとの同席に異を唱えるエルフの騎士、アーレンダルが歩み寄る。


 しかしラエルノアはアーレンダルの疑問を一蹴すると、ツカツカと硬質の床を踏みならして後方へと進み、壁面に巨大なホログラムを投影しながら一同へと向き直る。


「ヴェロボーグがこの宇宙で最後に作ったとされる種――――それは()()()()()だ。地球に残されたヴェロボーグのデータベースの解析結果を見ても、それは確かめられている」


「キューン! なら、もしかして本当に私たち()()()()()()()()()()()()()()()()?」


「いいや、カビーヤ。太陽系人類そのものは完成された種ではない。ヴェロボーグは太陽系人類を()()()()()()()だと自信を持っていたようだけど、それでも人類はそれ()()()()()()()()()()()()()()んだ」


()()()()――――ですって? まさか――――!?」


「その通りだよクラリカ。私もストリボグも、完成された種とは単一の文明を指しているものだと思い込んでいた――――けど、()()()()()()()()()()()


『――――そうだ。太陽系人類はヴェロボーグの導き出したあらゆる文明の終着点。完成された種とは、その()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()存在だった――――』


 その時、ラエルノアのすぐ隣の空間がぽっかりと楕円形に抉られる。

 削られた空間はトンネルのように穴が空き、その黒の中から金属の肉体を持つ人物――――四人の創造主の一人、ストリボグが実体を伴って一同の前に姿を現わす。


「こうして実体を伴って会うのは初めてとなる。私の名はストリボグ。この宇宙存亡の時に至り、()()()()()()()()()()()()()()ことに興奮している」


「ストリボグ殿っ!?」


「ストリボグさんっ!? ストリボグさんって、来ようと思えば僕たちのところに普通に来れたんですかっ?」


「すまない。ヴェロボーグの子よ。私は大勢の者と同時に話すのが苦手なのだ。並列的に情報を処理することに最適化されていない」


 出現したストリボグに、ティオとボタンゼルドは共に驚きの声を上げる。

 ストリボグはどこか感慨深げにそのホールを赤いランプの瞳で見回すと、申し訳なさそうにそう言った。


「初めまして、偉大なる創造主様――――私の名はエーテリアス。貴方たちによって生み出されたエルフの国、ミアス・リューンの王を任されている者です」


「俺様はゲッシュB911だぁ!」


「貴方とは以前、地球上での会議の場でお会いしたな! 私はルミナスエイト! ルミナスエンパイアの宇宙警備隊大隊長を務めている!」


「こんにちはストリボグさん! 私とはもう何度もお話ししたよね? 私は太陽系人類イルカ種のカビーヤ・ルイーナ。改めてよろしくね!」


「おお……おお……! なんという輝き――――スヴァローグの言うとおりだった。確かに、間違っていたのは私の方だったのだ――――」


 現れたストリボグに向かい、次々と発せられる挨拶の声。

 ストリボグはそれらの音一つ一つを味わうように、頷きながら聞き入った。そして――――


()()()()()――――私は、今この瞬間の君たちの姿を決して忘れることはない。そして祝おう――――この場に集う君たちこそが、()()()()()()だ」


「やはりそういうことだったのですね……! つまり、完成された種とは――――!」


「――――そう、ヴェロボーグが見いだした()()()()()()()()()。それは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――――太陽系人類とは、それら異なる文明同士の交わりの基点となるべく生み出された、ヴェロボーグ最後の種だったのさ――――」





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