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未熟な種族


『わーははははは! なんだなんだテメェら! 揃いも揃って雑魚しかいねぇのか!? 根性見せろよオラァ!』


『ば、化け物……! こいつは化け物だ!』


『ちょっと!? 話が違うじゃないのっ!? クルースニクはバーバヤーガがいなきゃ()()()()()()じゃなかったの!?』


 地球上空、衛星軌道上で待機するラースタチカの至近。


 わらわらと群がる大小様々なTW(タイタンズ・ウェポン)が一瞬で炎に飲まれ、あっという間にその数を減らしていく。


 一方、ラースタチカは対空射撃すらしていない。悠々とその場を動かず、ただじっとそこにあるだけである。つまり、今この戦場で戦っているのは――――


『ええーい! ひるむなぁ! ラースタチカが地球圏に滞在する機会などそうあるものではない! ラエルノア不在でその力が落ちている今こそ――――!』


『はっはー! そいつは残念だったな! 確かにラエルはいねぇみたいだが――――ここにはこの俺! ()()()()()()()()()()()()がいるんだよぉぉぉおおおおお!』


 そう、それは漆黒の宇宙空間を青白い反物質粒子の尾を引いて疾走し、瞬間ごとに現れては消え、現れては消えるを繰り返す閃光の騎士型TW――――LN.08SA_クルースニク。


 そしてそのクルースニクを駆るのは、未だにその体に雑に包帯を巻き付け、片眼も塞がったままのミナト。

 しかしミナトはそんな怪我などお構いなしとばかりにクルースニクの二刀を振りかざすと、容赦なく眼前の戦艦を真っ二つに切り裂く。


『ぎゃああああああ――――!』


『ああっ!? 将軍様が死んだ!』


『俺たちの船が一撃で!』


『もうだめだぁ……! おしまいだぁ……!』


 それはあまりにも一方的な戦いだった。

 TWはその全てが様々な能力を持つ特注のワンオフ機体。


 直撃すれば巨大な隕石すら木っ端微塵にする一撃を持つ機体や、広範囲に目に見えないネットを張り巡らせ、相手の動きを封じる機体。様々な能力を持ったTWがラースタチカとクルースニクへと攻撃を仕掛けていた。


 だが、それらの攻撃はどれ一つとしてクルースニクの機動を捉えられず、ましてやミナトの持つ超人的な反応速度に追従することも出来なかった。


『はいはーいっ! ふつーならこのままサクっと死んで貰うところなんだけどー……一応()()()()()()()()()だよねー? だ・か・らー……今回はお情けで()()()()でおいてあげるー! 殺しちゃうと後々面倒そうだからねー!』


『ああ……!? 今度はなんだ!?』


『る、ルミナスだ! 事前データにあった、ユーリーとかいう火星の――――!』


『アハハー、そういうこと! それじゃ、再见またねー!』


『ぎゃーーーー!』


『あばーーーー!』


 鬼神の如きクルースニクの猛攻を前に、完全に気圧されるTW部隊。


 しかしそんな彼らもまた、背後からのにこやかな声の主――――()()()()()()()()()()()()()()()()()をその身に宿す少女――――ユーリー・ファンによって一瞬でバラバラにされてしまう。


 しかしどうだろう。


 見ればたった今ユーリーが破壊したTWや、先ほどミナトが爆発四散させた戦艦から()()()()()()()が飛び出し、ふよふよとラースタチカへと向かって飛んでいく。


『これでおしまーい! 後は大人しくしといてね。きっとラエルが帰ってきたら、()()()()()()()()()()()()()()ってことになると思うけど!』


『ありがとよユーリー! 一応これで片付いたな!』


 その緑色の光、それはそれぞれの艦艇やTWに乗っていたパイロットたちであった。ユーリーの持つルミナスの力によって命だけは助かった襲撃者たちは、そのままラースタチカで捕縛されることになるだろう。


『全然いいよー! でもさ、ミナトこそ大丈夫なの? あの後すぐ、()()()()()()()()()()()()()からみんな凄く心配してたよー?』


『へっへっへ! この俺がこんなもんで死ぬかよッッ!』


『あっそ――――なーんだ、()()()()()()()


『なんだよ?』


『別にー?』


 乗員たちを救助してくれたことに感謝を述べるミナトに、ユーリーは珍しくその身を案じるような言葉をかける。


 そんなユーリーの心配を知ってか知らずか、普段と変わらぬ自身の様子をアピールするミナト。

 だがユーリーはそんなミナトの返答にどこか面白くないとばかりに気のない返事で応じると、そのまま一人でラースタチカに戻っていく。


『なんなんだよ……? はっ!? もしかしてあいつ……俺が弱ってたらその隙に()()()()()()()()()()だったんじゃ……っ!?』


『――――聞こえるかいミナト。帰ってきて早々申し訳なかったね、怪我はもう大丈夫なのかい?』


『おっ!? ラエルじゃねーか! 俺は大丈夫だ! こっちも今片付いた!』


 ユーリーの態度にクルースニクのコックピットで怪訝な表情を浮かべるミナト。

 そんなミナトの元に、ラースタチカに帰還したラエルノアの声が届いた。


『でもこいつら一体なんなんだ? 俺もティオなんかと同じでこの世界の地球に来たのは初めてだけどよ。なんで()()()()()()()()()()()()()()()んだ?』


『ああ、それはこの後すぐに説明するよ――――ま、いつものことさ』


 ミナトが座るコックピットの通信用コンソールの向こう。その問いに答えるラエルノアの声は、心底下らないという侮蔑ぶべつの色に満ちていた――――。



 

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