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人生ってままならない  作者: キジトラ猫
8/8

七話 猫とメイド



なんと次の日には手紙の返信があった

結構忙しいに人に送ったつもりなので

とても驚いたが

返信が早いのは有難い



我が家を訪れたのは

水色の大きなペリカンの様な使い魔


手紙を口にくわえ…というか口元の袋の中にいれ

運んできてくれたようだ



取り出した手紙は

特殊な紙のためか、特に濡れていなかった


すごいなーって手紙を凝視していたら

背後から視線を感じる



ハッとしながら振り向くと


家の影から大きな猫の姿


頭を低くし、おしりをフリフリさせているトトが

瞳孔をまんまるに広げこちらを見ていた


視線の先にはペリカンがいる


ペリカンもそれを察知したのか

慌てて私の背後に隠れる


トトからしたら

庭に入り込んだスズメでも狙ってる感覚なのだろう


思わず吹き出してしまった

背後から「笑ってる場合じゃない!」と

ガアガアと鳴くペリカン


「ふふ、すみませんね。つい」


私はペリカンを撫でて

その手に魔力を込めれば

シュンっと音と共に

ペリカンは姿を消した



その光景にトトが「えっ!えっ!」といったように

こちらに飛び出してくる


私は吹き出して思いっきり笑ってしまった


笑いが治まってからトトをみると

めちゃくちゃ不満そうな顔

まん丸だった目は半分しか開いていない

これがジト目というやつか


そんな顔も可愛い

たまらん


きっと見えていないだろうが

顔がだらしなく歪むのを感じる



トトは興ざめ、とばかりに

尻尾をぶんぶん振りながら

寝床に帰ってしまった


流石に使い魔をいじめたとあっては

怒られてしまうからね

トトには悪いけど、ペリカンに危害が及ばないようにしないとね







家へと入り台所に行けば

紅茶をすすっているディアンがいた


誰がお茶を入れたんだ?と思っていれば

部屋の隅にメイド服の若い女性がいるのに気づく


右目は長い前髪で隠れており

後ろ髪は三つ編みにしている



「あなたは?」


私がその女性に声をかけると

彼女はニコリと微笑んだ



「ディアン様に仕えることになりました。ユマと申します。以後お見知りおきを」


ユマさんは頭を下げた


「こちらこそ、よろしくお願いします」


私も挨拶を返そうと頭を下げようとしたが

ユマさんにとめられてしまった


「ノヴァ様のことはディアン様から伺っております。私の様な使用人に頭を下げる必要はございません。また、敬語は不要となります。」


うーん、そうは言ってもなぁ


「そう…なんですね。ただこの口調についてはクセのようなものなのでご容赦下さい。」


「かしこまりました。」


彼女はそう言うと

静かに頷き、ディアンの傍に佇む


【で?】


ディアンは手に持っていたカップを置き

そう一言発した


「だから一言で済ますなよ…」


ディアンは 知らん という顔をした



私はため息を吐きつつも

椅子へと座り、ペリカンが届けてくれた手紙を開いた


スラスラと書かれた綺麗な文字を読んでいく



「とりあえず家に来てくれだとよ」



私は手紙を置きディアンの方を向いた



手紙の内容を要約すると

お願いは聞いてあげる

その代わり会いに来い

まぁ、そういう内容だった


【ほぅ、俺たちを呼びつけるだと?】


ディアンの眉がピクリと動く


「というより俺をだな」


【生意気な…】



「こちらはお願いしてる立場だし、俺から伺うのがスジだって」



ディアンはムスッとしてるけど

普通そうでしょう


「そんなに嫌なら、ディアンはこなくて…」


【あ゛?】


うわ、こわっ

睨まないでよ


「あー、ごめん、嘘、ディアンが来てくれると心強い」



そういえば飛んできた殺気は消えた



「まぁ、俺もあの家の人達のことは嫌いじゃないけど…ちょっと苦手な人もいるしね」


その人物には会いたくないなー


【あれは俺も嫌いだ】


ディアンは不味いものでも食べたような顔をする


「ははっ…会わないことを祈るよ」


そんなこと無理だと分かってはいるけど

できるだけ会わないようにすばやく要件を片付けて

家に帰ろう





次の日

私は朝からホムラをパンナさんに預け、町をあとにした

(ディアンは人前に出たがらないので、向かう時は私1人だ)


ホムラが寂しそうな顔をしてたので

行きたくない気持ちに駆られたが

そこをグッとこらえて背を向けた


そして 早く帰ろう! と決意した



向かう場所はブラウ領の中心地

領主様が住む街 リーグン である



本来ならトトの背に乗ったとしても

2日はかかる距離だが


2日もホムラと離れてるのは

私が耐えられない為


魔法を使った



簡単に言うと

テレポート



リーグンの近くの森まで瞬間移動したのだ


私がこの魔法を使える理由は置いといて…

なぜこの魔法を使って直接リーグンの入口まで飛ばないかと言うと

この魔法があまり一般的ではないからだ




この世界に産まれて色々な魔法が使えることを知った


火、水、雷といった

ファンタジーでよく耳にする魔法が主となるこの世界


その中でも私が使う魔法は珍しい部類で

使える人が限られている特殊な魔法なのだ


もちろんまったく使えるひとがいないわけじゃない


でも使えたら めずらしい! となるわけで


それはそれはめんどくさいことになるので

ある程度の間柄の人の前以外では使わないようにしている



森を抜け、街道を歩いていると

立派な外壁に覆われた街にたどり着く

門では兵らしき人達が

不審な通行人がいないか目を光らせていた


あやしい動き、あやしいものを持っていれば

すぐに止められ、身分確認をされていた


残念ながら私も門で止められてしまったが

手紙に押されている封蝋の家紋を見せたら

慌てて通してくれた


どこぞの将軍の印籠じゃないけど

なかなかの効果だ


さーて、行きますか



そう意気込み

私は門をくぐった






兵士の人に「あやしいやつ!」とか言われちゃったよ




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