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人生ってままならない  作者: キジトラ猫
5/8

四話 特産品と悩み



家にあがらせてもらい

お茶を1杯頂く


甘い香りを堪能しながらゆっくりとお茶をすする


「うわぁ、これ美味しいですね。甘酸っぱいようで、それでいてスッキリした味ですね」


初めて飲むお茶の香りと味に笑みがこぼれる


「最近、中央で流行っているトルナっていうフルーツがあってね。それと紅茶を合わせたもんなんだよ。気に入ってもらえてよかったよ」


パンナさんも一口飲んで うまい! と満足気だ



「確か町中でもジュースとか売ってましたね」


頭を叩かれていた果物屋の店主を思い浮かべる


「ロート領の新しい特産品らしくて、中央経由で各地に売り出しているみたいなのよ」



「へぇ、それは珍しいですね」



ロート領というのは炎の竜を祀っている貴族が治める領地である





この世界には竜が存在する


世界が誕生する前から

そこには7匹の竜が存在したという


竜が空をつくり大地を作り

そして海や森などを作った


この世界にとって竜は神様のようなものだ

だって、この世界を創った存在なのだから



そしてこの国にはそれぞれの竜を祀った王族や教会

そして貴族がいる


基本的に王族と教会が中心となり

政を行っている


それに連なる形で貴族が存在する


貴族は各領地を運営するのが仕事だ


そして私たちはその領地の中に住んでいる


祀っている竜の影響なのか

どの領地もそれぞれ個性がある



今住んでいるのは蒼竜を祀るブラウ家が治める領地内


ロート領からも遠いため

ロートの特産品だというこのトルナが出回っているのは

なかなか珍しいことだと思う

中央局(国の経済を管理する機関)が管理しているとはいえ

ここまで持ってくるのは大変なことだろうに


「最近開発された冷却機のおかげで商品の品質そのままで運べる様になったらしいのよ」



「え、冷やしたまま運べるってことですか?」

飲んでいたお茶を零しそうになった


前世の世界ではもちろん冷蔵庫や冷凍庫があった為

品質を保持したまま商品を輸送することは簡単に出来たが

この世界にはまだまだ技術が備わっていなかった


というより便利なものほど使う魔石が多くなってしまう

ましてや輸送先が遠ければ遠いほどその量は比例していく


ここ数年で技術革命なるものが多くおこってはいるが

一般家庭に普及するにはまだまだお金と時間がかかってしまう


有難いことに火の魔石については

昔ロート領が流通を多く回してくれたおかげで

広く一般家庭にも普及した


ただそれも領主の考え方で流通は変わるものだ



「ちなみにその冷やすための魔石を提供したのって…」


「もちろん私らの領主ダンデ・フォルン・ブラウ様じゃないか!」


パンナさんはエッヘンと自分の胸を叩いた


(なるほど)


ブラウ家の領地から大量の魔石が発掘された

またその魔石から新たな輸送方法が作られた

これはとても大きなことだと思う


今まで出来なかった 品質を保持した 輸送というのが

可能になったわけで

これによりブラウ家は輸送という分野に置いて

他の領地よりも優位になった


今回に限ってみれば

ロート家は特産品の品質を保持したまま高値で各地と取引できるし

ブラウ家は輸送方法を提供する代わりの見返り貰えるわけで


とりあえずWinWinなのだろう


まぁ、領地の運営が上手くいけばいくほど

我々の生活は潤うので

貴族様には頑張ってもらいたいものだ


「まったくあんたはホント世の中の出来事に疎いわね」


パンナさんがため息を吐く


「森の中で暮らしているのでなかなか…」


町に出てくるのは多くて週に1度程度

それも目的がすめばすぐ家に帰ってくるという始末



「あんた、そろそろ町で暮らしたらどうなんだい?」


パンナさんは真剣な顔をしていた


「なんだかんだ森は危険だし、今は上手くいっててもそれが続くとも限らない。それにホムラくんの今後のこともある」


ホムラの名前に私は黙る


確かに私だけだったら今の生活でいいとは思う


でもホムラに同じ生活をさせることについては

前から悩んでいた



町に住んで他の子と同じ環境で育てた方が

これからの社会の中でやっていく為の知識や力がつくだろう


それに町に在籍していないと学校に行かせてやることもできない


学校に行くことがホムラにとって良いかどうかもわからないが


あの子にはあの子の人生がある

あの子の人生の選択の幅を私が狭めてはいけない


そうはわかっているのだが色々な弊害があり

決断出来ずにいた


「私から言わせればあんただってまだ子供みたいなもんだよ。大人ぶってるからあんま言わないけどさ」


「一応、これでも私今年18歳になるのですが…」


「子供は子供さ!まったく出会った頃の無垢な感じはどこへ行ったのやら」


やれやれとため息を吐くパンナさんの姿に笑うしかない


精神年齢だけみればババア、ジジイといった歳なのだが

というか私にも無垢な時期があったのか

と的はずれな考えをしていると


「とうさーん!」


とホムラの声が裏庭から聞こえてくる


その元気な声に癒されつつも

パンナさんに一言断り

私は裏庭へと向かった



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