二話 教育と適正
畑に実った野菜を回収していく
畑生活8年目
なかなか良い出来ではないか
工夫に工夫を重ね
なんとか形になってきた
ツヤツヤとした野菜達を丁寧にとりつつ
今日のお昼はトマトとナスのミートソースパスタにしようと
今日の献立を考える
出来上がりを想像していたらお腹がなった
「とうさん見て見て!」
「ん?」
振り向き声のする方に視線を送ると
赤い髪を靡かせ掛けてくるのは
息子のホムラ
ぶんぶんと手を振りながらかけてくるその姿に
可愛いなーと思いつつ
その手に持っているものに一気に汗が吹き出る
「おっきなヘビ見つけたー!」
そう言いながらホムラの手には
ぶんぶんと振り回された青いヘビ
「ホムラ!!」
すぐさま駆け寄りホムラの手から
青いヘビが奪い取り
遠くへと投げた
「なんでとるのー!」
ホムラはぷんぷんと頬を膨らませながら怒るが
こちらはそれどころではない
「ホムラ!!」
「!」
もう一度、強く名前を呼べば
小さな肩がビクンっと跳ね上がる
膝をつき、目線をホムラに合わせ
その小さな肩にゆっくりと手を置き
驚いて丸くしているその目を見つめた
「ホムラ、あれはアイススネークという危険なヘビです。毒は持っていませんが、あのヘビは噛んだものを凍らせることができます。幸い振り回された影響で目を回していますが、噛まれる危険性があったんですよ」
私が怒っているとわかったのか
ホムラは黙ったままこちらを見返す
その顔は泣きそうな顔をしていた
「危険な生き物、危険な植物。それを教えている最中ですよね?まだ教わっていないものについては近寄らない、触らない、すぐに逃げなさいと伝えてましたよね?」
こくん、と弱々しく頷くホムラ
「あなたに怪我がなくてよかったですが…お願いですから心配させないでください」
ギュッと抱き締めれば
肩を震わせ泣き始めるホムラ
「ご、ごめん…なさい…!すごく綺麗だったから…!と、とうさんが喜ぶかと…思って…!」
更に強くホムラを抱き締め
優しく声をかける
「わかってます。あなたは優しい子だから…。でもあなたに何かあれば父さんは泣いてしまいます。だから心配させないでください」
自分の胸で泣きじゃくる息子のサラサラとした髪をなで
落ち着くまで数分
目を赤く腫らしてしまった
息子の手をそっとにぎり
ゆっくりと家へと歩く
「さて、今日のお昼はホムラの好きなオムライスに変更ですね!それを食べたら魔法のお勉強しましょうか」
そう語りかければ
さっきまでの泣き顔はどこへやら
ぱあっと輝く笑みを向けてくる
「オムライス好き!あ、でもグリーンピースはやだ!」
「好き嫌いはダメですよー」
「やーだ!」
仕方ないな、と笑いつつ
息子の元気になった姿にホッと息を吐く
あれから4年が経ち
ホムラも4歳となった
好奇心旺盛な為
とにかく色々なものを持って帰ってくる
できる限り注意しながら
色々と森での生活を教えているが
今みたいに危険だとは知らずに
魔物を連れて帰ってくる
というか持ってくる
本来ちょっとした森の魔物ならホムラに寄ってくることはない
なぜなら森の生き物にとってホムラは苦手な力を持つものだからだ
この世界には 魔法 がある
炎や水、雷といった魔法
自然界に存在する精霊や魔物が持つ力でもあり
そしてこの世界の人が持っている力でもある
人それぞれ、あった適正などがあり
その人にあった力を日々学ぶ必要がある
もちろん魔法の適正が低い人や中には適正がないものもいるわけだが
生活には困らない
なぜなら魔石という魔法の結晶ようなものがあるからだ
魔石を使った製品があれば
魔法がつかえなくてもまったく問題はないのだ
前世でいえば電化製品のようなもの
多くのものに利用されているため
生活水準は前世とほぼ変わりは無いだろう
そんなこんなで炎の適正があると思われる息子は
比較的この森でも安全に過ごすことが出来る
ただ適正があるからと放置してよいわけではない
教育と適正は別物である
ダメなことはダメと教えなければいけない
それが親のつとめだからだ
ニコニコと笑顔でご飯を待つ息子を
チラリと見ながら昼ごはんの準備を始めるのだった
ちなみにオムライスにはちゃんとグリーンピース入れました