一話 経歴と決意
人生って死んだら終わりだと思うじゃん?
私もそう思ってました
死んだその時までは
私は今年で14になる、ちょっと変わった経歴を持つ男である
なにが変わっているのかというと
前世と前前世の記憶を持っているということ
何を馬鹿なと思うかもしれないが
これはホントの事で
しかも前前世はごく普通の一般家庭で育った
ごく普通のOLだったのだ
仕事で取引先に向かう途中に事故に会い
そこで記憶がプツンと途切れた
気づいたら記憶をそのまま
2度目の人生を歩んでいた
2度目の人生も一般家庭に産まれ
1度目とは違う環境で育ち
記憶に戸惑いながら人生を歩んでいた
そんな2度目の人生も高校生までだった
大きな地震による土砂崩れにより
命を落とした
寝てる間のことだったから
正直、死んだ時のことを覚えていない
何故死んだかわかったのかというと
3度目の人生を迎えていたからだ
目が覚めたら赤ん坊になっていた
目を開けると女性の顔があり
身体が思うようにいかない
この2度目の人生がはじまった時に味わった出来事に
なんだこれデジャブか!?と思って
ただひたすら慌てていた
それ以上に戸惑う出来事があった
目の前の女性が何か言っているが
何を言っているのか分からないのだ
聞いたことの無い言葉で優しく語りかける
母と思わしき女性
その女性の口から語られる言葉を聞き取ることはできても
意味までは分からなかった
日本語でも英語でもその他どの国の言葉でもない
(といっても日本語と英語くらいしかわからないが)
とにかく今までの人生で聞き覚えのない言葉だったのである
目の前の女性は疲れ果てた顔ではあるものの
その表情はとても優しかった
そんな女性の微笑みに
不安は和らぎ、私の三度目の人生が始まるんだなと
思いながら眠りについた
そこからが大変だった
3度目の人生なんだから
慣れたもんだ!と思っていたのに
環境が今までと違いすぎていたのだ
言葉の壁は柔らかい子供の脳のお陰で
習得出来たのだが
この世界が現代社会と全く異なる世界だったのである
なんとこの世界 魔法 があるのだ!
しかもTheファンタジーともいえる
竜や精霊といった生き物の存在
そして王族や貴族といった国や階級制度があるのだ
言葉を身につけたことで
そういった世界なのだと知ることが出来た
そして胸踊った
新しい人生をよりよいものにしようと
頑張ろうと思った
でも人生ってままならない
結局のところ今にいたるわけで
こんな森の中1人で暮らしている
森の中にポツンと一軒家
見た目は昔ながらの日本家屋
これは前世が日本人だった時のなごり
ファンタジーな世界観には合わないだろう見た目である
そんなことを思いながら
庭に出した椅子でボーッとしていると
うわーんと小さな声が聞こえる
慌てて家に入れば
泣きじゃくる小さな赤ん坊
お腹が空いたのか起きてしまったらしい
赤ん坊はついこの間森の中で拾った
赤い髪に赤い瞳
森の中で特に目立つ見た目に
早く見つけることができてよかったと思ったものだ
一応この森にも獣がいるし
精霊や魔力をもった魔物といった生き物がいる
警戒心が強いためそう簡単に出てきたりはしないが
万が一とも限らない
赤ん坊をあやしながら急いでミルクを用意する
庭で飼っている山羊のミルク
それを、人肌になるまで温めていく
子供を産んだことも育てたこともない私にとって
赤ん坊の面倒をみるのは
とても大変なことだ
ましてや今は男として産まれてしまってるし
それでも忘れかけている前世達の記憶をふりしぼり
この子を育てていこうと思った
出会ったあの日
どうしようかと悩んでいたら
小さな指が私の人差し指をギュッと握る
力は弱いものだったが
生きていこうという強い意思を感じられた
そんな無垢な存在に
心打たれないわけがない
せめてこの小さな弱い生き物が
独り立ちできるその時まで
そばで見守ろうと
そう決意した
ホムラと名づけた赤い瞳の息子
この子と一緒に3度目の人生を歩もうと思う