第9話
教室の中は一気に騒がしくなった。
立花やその他のトイレに行った人達が出ていったっきり1人も帰ってこないのだ。
先生はその話を聞いてすぐに警察らの方に報告をしに行った。
みんなの心のSOS信号が赤色に光り輝いている。
「…あいつだ…あいつだよ、あの黒のパーカーを着てたやつがやったんだよ!」
全員が後ろを振り向く。
「俺…見たんだ…あいつがナイフを持ってるのを!最初は美術室辺にいたから彫刻とかするのかなって思ったけど、そもそもあんな人今まで見たことないし、職員でも生徒でもないならあいつしか有り得ないよ!」
普段大人しい性格の宮島が突然大声を出したことにクラス全体がどよめいた。
体は震え、充血した目は全く焦点が合っていない。明らかに普通ではない状況に気が狂ってしまったように見えた。
そんな宮島を周りの人が宥める。
「大丈夫だって、王利。多分警察とか先生がすぐになんとかしてくれるよ」
「そうだよ大丈夫。1回落ち着いて深呼吸しよ?」
そんなこんなで大声を聞きつけた先生が保健室に連れていく、と言って宮島を教室から出した。
「あんなに乱れた王利みたことないよなぁ、急にどうしたんだろ」
と1人が呟く。
「多分この状況がたえられなくなったんだよ。色々なことが急に起こり過ぎてキャパオーバー的な?」
「まあ、寝れば正気に戻るんじゃね?」
教室の中心で呑気な男子生徒が言った。
「今はそんなこと話してる場合じゃないでしょ!?さっきの王利の話聞いてた?犯人はナイフを持ってたって」
不安の色でいっぱいの顔をした女子生徒がそこに論をぶつける。
彼らに危険が迫ってくるように太陽が落ちて夜が迫ってきていた。
カチャ…
廊下側の1番前に座ってた背の小さい女子生徒がその音に気づく。後ろを振り向くと自分が座っている近くのドアのカギが閉められたようだった。
すぐにすりガラスになっている廊下を見るともう暗くなっているせいでぼんやりとしか見えなかったが、黒い服を着た誰かが通り過ぎるのを感じた。
すぐに近くの人に、
「ね、ねぇなんか廊下に誰かいる…先生かな、カギかけたみたいだったけど」
「ん、多分警察の人とかじゃない?それよりなんか雰囲気悪すぎてここに居たくなくなってこない?」
見ると教室の中心部では今だに口争いが続いていた。
「変に心配することないって、この堅物!だいたい本当にナイフなんか持ってたか分かんないじゃん。ここから美術室を見てもそんなはっきりとはナイフかどうか判断できないって!」
「でも可能性はない訳じゃないでしょ!もっとちゃんと危機感持ってよ!もしかしたら特徴的な刃物を持ってたのかもしれないじゃない!」
「例えば?」
男子生徒は挑むように問いかけた。
むっとした表情で女子生徒は吐き出すように答えた。
「確証はないけどこの距離で何を持ってるか分かったってことはサバイバルナイフだと思ったの、この前テレビで見て。」
女子生徒は真剣な眼差しで男子生徒を見た。
「サバイバルナイフはアウトドア好きには必須アイテムになるだろうって。色が緑の明細っぽいやつとか、普通の鉄になってるやつとか。でも1番特徴的だったのは形で…」
「鍔の部分が結構大きい、でしょ?」
後ろのドアから入ってきた人は女子生徒の言葉を続けるとポケットからサバイバルナイフを取り出した。その人物を見て全員が絶句する。
その人物は宮島が先程説明した通りの黒いパーカーでフードを被っていた。
「静かにしてね」
ナイフを近くの人に向けて脅すように声をかけた。