プロローグ
そこは、何も無い真っ白な場所だった。真っ白で終わりが無いような空間。まるで宇宙にいるような、また水の中を歩き続けているような感覚で頭がフワフワする。
ここはきっと夢の中なんだろうな、と宮島王利は思った。
そんなことを考えていると突然、「おーい」とどこからか声がした。しかし、周りを見回すも360度変わらない景色が宮島を包んでいる。
この声の主は一体どこにいるんだろう、と宮島は考えようとしたが頭がフワフワするせいか、上手く考えられない。運動が苦手な僕は体育の授業があった日の午後はだいたいこんな感じになる。
「おーい、もしもーし?」
考えるのがだんだん面倒になってきた。とりあえず目を瞑り耳を澄まして発声元を探る。
「おーい、おーい」
宮島はこの空間が声を吸収していてほとんど反響していないことに気づく。
はぁ、と俯いて溜め息をつく。
すると、足元に真っ白い世界に不似合いな子供の掌よりも小さい黒い穴が転がっていた。直感だが宮島はここから声が聞こえてるんじゃないかと思った。
ゆっくり跪いて穴に耳を近づけると、
「ねぇ、聞いてる?」と少し不機嫌そうな声が中から確かに聞こえた。多分年齢は同じくらいの女性だろう、と思う。
「聞こえてます。あのここがどこか分かりますか?」
跪いたまま穴に向かって答える。
「ここがどこかなんて見て分かんないの?」と彼女は少し侮辱するような言い方をする。
「ふーん、あのね、ここは…」
この不自然な間に宮島はなんとなく嫌な予感がする。そして、それはすぐに的中する。
「あの世、よ」
彼女は静かに答えた。