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5話

フカフカのベッドの中で目が覚める

しばらくボーッとしていたが、暗い視界の隅で何かが薄らと光を発している。

今は何時頃なのか、枕元に手を伸ばすが、目的の物は見つからない


「??…あ、そっか」


ここは自分の部屋ではない。

それどころか、生まれ育った世界でも無いことを思い出してきた。

しっかりと目が覚めてから、光の正体を探る。


「あれ、電気消したっけ?」


部屋が暗くなければ光には気づかなかっただろう。しかし、いつ電気を消したのか覚えがない。

不思議に思いながらも、机の上が光っている事に気が付き、ベッドから下りる

床に足をつけた途端、辺りが光った


「わ、びっくりした…」


単純に電気が点いただけなのだが、スイッチはいじっていない。勝手に点いたのだ


「あ、光ってたのはこれか」


光の正体は、タブレットだった。

どういう仕組みなのかは分からないが、恐らく充電されて自動的に起動したのだろう。

手に持ってみると、光の形が変わった


「手?」


光は手、それもパーの形に変わっていく。

その光は意志を持っているかのように明滅を始めた


「手…」


そこに置けという事だろうか。自分の手を思わず眺める。

そっと右手を差し出し、光の形に合わせるようにそっと置いた


『ピピピピ』

「?!」


タブレットから音が出る。思わず手を引こうとするも、くっ付いているのか離れない


『ショウニンチュウショウニンチュウ…シバラクオマチクダサイ』


機械的な音声がタブレットから発せられる

どうしようも出来ないので、言われた通りそのまま待つことにする。



『ショウニンカンリョウイタシマシタ』


どれぐらい時間が経ったのか。時計がないので分からない。

ホッと方を撫で下ろすと、タブレットから手が離れる。

指紋認証でもしたのだろうか。それにしては時間かかっていたように思う。


『サイキドウイタシマス』


タブレットはそう発すると、光も消え、最初に手に持った時と同じ状態へ戻ってしまった


「な、何だったんだろう…」


一先ずタブレットは元の場所へ戻す

その時、小さくキュルキュルと言う音が聞こえた。


「あーそう言えば、お腹すいたかも…」


最後に食事したのはいつだったか。まともなものは覚えていない。

栄養ドリンクの類は、確か仕事中に口にしたと思う。


こちらの世界に来てからは、まだ何もだ。

来てからどれぐらい時間が経ったかは分からないが、空腹を感じるからは、数時間は経っているだろう


「えーとご飯は…そうだテーブル」


この部屋へ来た時にハロルドが、テーブルについて注文すれば、等と言っていたはずだ。

テーブルの上には特に何も無い。どう注文すればいいのかも聞いておけば良かったと今更ながらに思う。

とりあえず座ってみることにした。


「わっ!」


椅子に座ると、テーブルの上に小さなディスプレイが現れる。

ディスプレイの上部には『ご注文の品を選択してください』とテロップのように流れ、右端に細長い矢印がある。

下部や左端、中央には何も表示されていない。


右端の矢印に触れる。豪華なフルコースが数種類表示された。


「なるほど、メニュー表か」


ディスプレイが何なのか理解出来た。

とりあえず今はフルコースの気分ではない。再び右端の矢印に触れる。

表示されるのは見慣れたものから、初めて見るものまで様々だった。

ページを進める度、素朴なものへと変わっていく。


「今はとりあえず…」


あれじゃない、これじゃないとページを捲り続け、目的の物を探す。

もしかしたら無いのかもと思い始めたところで、めくる手を止めた


「あった!」


嬉しさのあまり大声をあげそうになるのを堪えて、ディスプレイに触れる


『こちらでよろしいですか?』

YES・NO


と表示され、迷わずYESを押す。

すると天井から


『オマタセイタシマシタ』


と言う機械的な音声と共に、目の前にプレートが落ちてきた。

落下音は無く、プレートの上にはキレイに盛り付けられたままの…


「おにぎり!美味しそうー!」


おにぎりと味噌汁に漬け物

かなりシンプルな和食が目の前に現れた。



久しぶりに食べるお米をゆっくりと味わい、最後に味噌汁を飲み干す。

一息ついた所で、タブレットが再び光出した。


『サイキドウカンリョウイタシマシタ』


タブレットを取り中身を確認する

どこかで見た覚えのある表示が目に入ってきた


ココロ・サワムラ

HP:500/500

FP:1000/1000


「うん?」


まるでRPG等で見る、ステータスのようだ。しかしHPはともかく、FPというのは初めて見る。何を表しているのか分からなかった。

そしてその下には、『スキル』と記されている。触ってみるが、特に変化は起こらない。

それ以外は特に何も無いようだった。


コンコンッ


ドアをノックする音が聞こえる。

誰か…恐らくハロルドだと予想は着くが…尋ねてきたのか。向こうから開けてくることはないので、タブレットをテーブルへ置きドアへ向かう


「?」


僅かに違和感を感じた。嫌な気はしないので大丈夫だろうとドアノブを回す。

ドアの外にいたのは、やはりハロルドだった。


「おはよう。連絡せずに来てしまったけれど、良いかい?」


そう言えば別れ際そんな事を言っていた気がする。

それを思い出して、まだ起きたばかりで食事しただけの事に気がついた。

けれど…


「大丈夫そうだね。アレも使えたみたいだし」

「え?」


身支度を整えていないにも関わらず、気にも止めていない。

流石に起きたばかりの姿ではと焦るが、近くに鏡を見つけて驚く。

そこに写っているのは、起き抜けの姿ではなく、しっかり支度を整えた後の姿だった。服装も昨日のと似てはいるが、デザインが違う。変わっていないのはカーディガンぐらいだ。


「よし、じゃあ行こうか」

「あ、ま、待って」


咄嗟に、タブレットを取りに戻る。

手に持ってから急いでハロルドの元へ戻り、彼の後へ続いた。

色々と気になる、むしろ不思議なことがあるが、ここが異世界だと言う認識を強めれば、まだまだ不思議なことは沢山あるだろうと、強引に納得しておくことにした。

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