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日常・ヒロイン  作者: 篠
2/22

戦隊ヒロイン、日常クズになる記念日

キザキ・アカネは、入隊一年目の戦隊ヒロイン

日常と、戦隊とのバランスがとれずに、カウンセラーのオオヌキ姉さんとお話中。


「はい、あなたは正義を行使するので、日常がその正義に今押し潰されそうになっているのです」


「では?」


「はい、あなたは正体が正義なので、バランスをとるために日常でクズを演じるのです」


「はぁ?どういうことでしょ?」


正義カウンセラーのオオヌキさんは言った。

「日常の一般人のあなたは、自らすすんでクズになることで、正義の価値基準から解放されるんですよ!」


もう少し、理解しやすい話し方で、話して欲しかったけどとにかく、全部訊いてみることにした。

「正義を隠れて為すものは、潔癖な正義に押し潰されるんですよ。日常を蒸留された日常に侵食されていくんですよ…清い蒸留水の中では、生き物は生きていけません…生きていけないからこそ、正体を隠すのです…」






正義カウンセラーのオオヌキさんは言った。

「正義を隠れて為すものは、潔癖な正義に押し潰されるんですよ。日常を蒸留され侵食されていくんですよ…清い蒸留水の中では、生き物は生きていけません…」


「あの…ダメなムコどのの、中村主水みたいなものですか…?」

「はい、アイアンキングの霧島五郎みたいなものです」

「かえってその例はわかりません…」

「残念です…」


オオヌキさんはそう言うと、時計をちらちら眺めながら、言った。

「また、あなたは、例えて言えば、工業用のアルコールです…。工業用ののアルコールはエタノールと言って、機械を洗浄するためにあります…特に、純度99.5%の工業用のエタノールは、人体で摂取するものではありません」


「またわからなくなってきました」


消毒用のアルコールは摂取しないし…けど…アフターファイブって言いますもんね…と、頭の中で考えた。

なぜ蒸留水から、アルコールの話になったのか、なんだかわかるような気がしたので率直に伝えた。

「もういいですよ飲んでも…」


オオヌキさんは、あと五分だけど、いいかな?と言う。

甘いもの好きな人って、お酒嫌いだと思ってたけれど…違うんだなぁ…と、その飲みっぷりを見ながら、ため息をついた。


「オオヌキさんは、クズに乾杯!」と言いながら満面の笑みで中ジョッキのビールを飲み干した。


クズかぁ…と、とぼとぼと帰途につく。

「そもそも、一般人の正義と、正義の味方の正義は質が違うんですよ」とオオヌキさんが言っていた言葉を繰り返してみたが、よくわからない…。


「よくわからないから、劇薬の『正義』という薬剤を自分の中に取り込んでしまうと、自らが破綻してしまいます…ここは、ひとまず気を楽にして全く別の素材の『クズ』というものを、あなたには処方したいと思っています」と、呂律の回らないことばで、ゲラゲラ笑っていた。


「大丈夫なんだろうか…あんなに酔っ払っていて、正確なカウンセリングができるものなのかしらん…?」


それでも、なんとなくオオヌキさんの、美味しそうにビールを飲むその姿を見たからではないが、クズになるための準備としてビール六缶パックを買った。

朝飲むのだ。クズは朝から酒を飲むのだ…。


それが、クズになるプランの一つ目。

今日は、日曜日…。

明日は、月曜日…。

月曜から、無断欠勤をしてお酒を飲むのが、私のクズプランだった。


そう…。

実は、戦隊ヒーローたちは、ダブルワークで仮の仕事を持っている。

ヒーローでない時にはそちらが本業。

食品卸売の会社の営業事務。

クズがサボるのは、その営業事務だ…。

過酷な生活だからこそクズ的にサボるのだ…。

ラクをするために!!



その日の夜は、クズになるプレッシャーで、眠れなかった。

三時五十九分を超えて四時。

眠れない絶望で頭を掻き毟ったけれど、明日の会社は無断欠勤をするんだと、改めていつも通りに六時半に起きなくていいんだと肩を落とした…。


五時頃に、明るくなってきて泣きたくなったけれど、クズになるためには、この気持ちに耐えなくてはと思いながら、我慢した。


クズってつらい…。

寝たことにしよう、寝たことにして、十一時に起きたことにしよう…。

目は緊張と恐れで爛々としているけれど、布団の中でゴロゴロと時間を過ごしていると、肩が痛くなるし腰が痛くなるし…。

胃まで痛くなってきた…。


十一時に起きるはずだったが、十時に起きよう…と思った。

十時に起きた!十時に起きたのだ!

十分にクズなはず!


何気なく携帯を手に取ると、山ほど着信が入ってた…。

朝起きても、クズは携帯なんか見ないはずだった…。

間違ってしまった…。


山ほど着信!会社からだった…。

留守電には、心配する声。


同期の声とか、係長の声とか。

部長の怒鳴り声まで入ってた。


「社員アソートボイスサウンド詰め合わせ!なんの贈答品だよ…」

そんなことを、会社の新商品になぞらえながら、ぐったりしながら聞いた。

もちろん、返信したりしない。


私はクズなのだから…。

私、キザキ・アカネは、クズになる!と決意をし、冷蔵庫から取り出したビール缶のリングプルを引き上げて一気に呑み下した。

目は血走って憔悴していたが、クズになる決意は固かった…。



次は、変身ヒロイン、キザキ・アカネ(稀崎明音)さん、クズ的に外出をしてみる…の巻

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