7
-これが悪い夢ならば早く覚めて欲しい-
そう思いながら目蓋を開いた。
いつもと変わらない部屋の風景が広がる、壁に取り付けられた鏡にはやつれた女性が写っている。私だ。
部屋を見渡すと洗面台/トイレ/シャワー/ドアなど、生活するのに必要最低限の物があった。
しかし、唯一の出入口であるドアは一度も開いている所を見た事がない。
現状を説明すると、私は7畳程度の個室に監禁されている。
期間は約3年くらい。
1日2回、鉄でできたドアの下の隙間から食事と着替えが出される。食事が出されるタイミングから日数を計算した。
なぜ監禁されているのかは私にもわからない。
私の精神は限界にきており何度も自決を試みた。
しかし自分を致命傷に至らしめる程の道具もない。
それと奇妙な事に実行しようとすると意識が飛んでしまう。
とにかく早く外に出たい。これだけが願いだった。
最後に外にいた記憶は、とある森林地帯の中だった。
それは、ある人の死の真相を知る為に単独捜査を行っていたからだ。
その人の名は『高浜隆二』。信頼を置ける唯一のパートナーだった。
3年前、私は警視庁公安部の特殊事件捜査係(通称:SIT)の隊員だった。
隆二はある日、爆発に巻き込まれ殉職した。
隆二の死後、私は彼のアパートへ遺品の整理をしに向かった。
彼は独身で親も既に亡くなっており、パートナーであった私が選ばれたからだ。
隆二の部屋は綺麗に整頓されていた。
ベッドの横には初期SITメンバーの集合写真が飾られていた。
私はもの憂い気持ちになりながら荷物の整理を始めた。
寝室を片付けている時、ベッドの裏に拳銃が隠されているのを見つけた。
「あなたらしいわね。」
私は少し笑いながら拳銃を手にした。
そして、片付けを済ませた後に拳銃を自宅に持ち帰った。
隆二の遺品、彼の想いを忘れないための御守りにするつもりだった。
拳銃は『ベレッタM92』隆二が愛用していた物だ。
改めて手に持った際にふと重量に違和感を感じた。
「軽い...」
弾倉を抜き弾薬の数を数えた。
初弾に1発、弾倉に1発の計2発の弾丸が込められていた。
各パーツに分解したところ、弾倉の中に小型のUSBメモリが隠されている事に気付いた。
私はすぐさま内容を確認する事にした。