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白い猫と黒い猫

作者: 望光 ルナ

皆さんは白い猫と黒い猫どちらが好きですか?


双子の兄弟猫の白い猫と黒い猫のお話です。


田舎のとある村に住んでいた純白の猫のカイと漆黒の猫のリクは、街に出ました。

というのも、三毛猫の母親のソラの体調がすぐれないので、薬を調達しようと思ったからです。


ひと際目立つ、純白のお兄さん猫のカイは街中で人気者になるのはそう時間はかかりませでした。

カイの周りには、いつも大勢の仲間が取り囲んでいました。

気取り屋のカイは、あまりにもちやほやされるので薬の調達なんか忘れて、毎日仲間たちと新しい境地で、つるんだりして遊びほうけていました。


ある日のこと、それでは街に出てきた意味はないと思い直し、仕事を探すことにしました。

引く手あまたで、いろんな職種を紹介してもらい、とある飲み屋の接客業を紹介してもらい、そこで働くことにしました。


一方、漆黒の弟猫のリクは、誰からも相手にされずに薬の資金を稼ごうと懸命に必死に仕事を探していました。

そう簡単に田舎から出た青二才を雇ってくれるところなんてありませんでした。

やっと見つかった仕事は、街外れの炭鉱で石炭を採掘する仕事でした。

体が汚れるのを気にしないで、休む時間もろくに取らないで一生懸命に励みました。


カイは弟のリクの仕事が気になり石炭の採掘場へ足を運んできました。

泥や煤だらけのリクを見て、カイは言いました。


「リクはすごいな。力仕事をして自分の体が汚れること気にしなくて働けるのは。

 おれだったら無理だな。この純白の毛並みが汚れるのが嫌だからな。

 それに疲れるだろう。」


それを聞いたリクは優しく答えました。


「兄さんだって、街でバーの接客をしているなんてすごいと思うよ。

僕は、人と接するのが苦手だから、気兼ねがない採掘現場で一人で仕事をすることで気が楽でいいんだ。

兄さんは兄さんの得意な分野で頑張っているし、僕は僕で、自分のできることをコツコツ頑張っているんだ。」


それからというもの、二匹は仕事の内容は違うけれど、お互いに頑張りました。


ある日のこと、カイはお客さんとのトラブルでお店を解雇されてしまいました。

理由は、自慢の純白の毛並みにお酒をこぼされて、頭にきたカイと揉め事が起こったからです。お前の代わりはいくらでもいる、ここらから出て行けとオーナーに言われて、しょんぼり店を出て行きました。売り言葉に買い言葉ではどうしようもありません。

仕方なく、弟猫の仕事場へ行こうと思って歩き出しました。


その日は、リクは仕事が休みなので、久々に街に行ってお兄さん猫の仕事ぶりを見ようと思って歩き出しました。

郊外にさしかかった時、二匹は偶然出会いました。


突然泣き崩れるカイにどうする事も出来なく、リクはただ慰めることしかできなかったのです。

カイが言うには、

「街の人間は冷たすぎる。自分の考えを押し付けてくる。おれのことなんて考えてくれない。」


それを聞いてリクはまたしても優しく答えました。

「相手のことを考えたことがあるかい。白という色は、一見けがれのないまばゆい色だけど、自分にかけられる温もりをもった言葉を反射してしまうことがあるんだ。その点、黒は、一見、あまり見た目の良くない色だけど、優しい言葉をどんどん吸収して、どんどん温かい気持ちになれるんだ。」

その言葉で、カイはハッとしました。プライドや価値観で物を計っていた自分に気がつきました。


リクはというと、肉体労働で鍛えこともあって、心身的共にたくましくなっていました。

それを見て、カイはリクを見直し共に働こうと決意しました。


それからというもの、カイは自分の純白の毛並みが汚れるのをそっちのけで、リクと石炭の採掘にいそしみました。

もうそこには、気取り屋の純白のカイの姿はなく、真っ黒く毛並みを汚しながら一生懸命に働くカイの姿がありました。

もう、二人を見分けることはできないくらい、黒くなった毛並みだったので、採掘現場の同僚からは似たもの双子と評判でした。


仕事を懸命にした二匹は、とうとう薬を買えるだけのお金が貯まりました。

これからは、街の情報に詳しいカイの出番です。

飲み屋で働いている時の情報をもとに、お母さんに一番よく効く薬を調合をしてくれる長老のところへ行きました。


「あれ、黒猫が二匹きたな。

 わしは、分かっているぞ。

 つややかな毛並みは、リクじゃな。

 そして、煤だらけのみずぼらしい毛並みは、カイじゃな。」

「母親に飲んでもらう、薬が欲しいのです。

 どうか調合してくれませんか。」

「よしわかった。

 二人の働いている姿をつぶさに見てきた。

 カイよ、純白な毛並みに戻りたくないか。

 母親が見分けがつかなくて混乱するぞ。」

と、いうことで、カイは純白の毛並みに戻してもらい、薬も調達でき、実家の家路につきました。


母親の病気はみるみる回復していき、三匹で仲良く過ごしました。


まあ、カイの街での遊びはなかなか直らないにしても、リクを堂々と弟であると紹介し、その漆黒の毛並みが素敵で、そして持ち前の優しい甘い言葉でみんなを酔わし、純白のカイ以上にちやほやされていました。


カイのヤキモチが目に浮かびます…


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― 新着の感想 ―
[一言] 絵本の原作みたいな感じですね。絵を見てみたくなる作品だと思います。 寓話風なのも、いいですね。
[一言] お母さん元気になってよかったなぁと思いつつも、何かカイ君が不憫になります。なんだかんだでカイ君は、素直でいい子ですよねー。 面白かったです。ありがとうございました。
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