吾輩は猫である。ただしジャコウネコだが。
「吾輩は猫である」という小説がある。夏目漱石著の、日本人なら誰もが知っている超名作だ。猫の視点から描かれる世界は斬新で、当時人気を博した。
ここで言わせてもらおう。実は吾輩も猫なのである。ただしジャコウネコだが。いや、説明が足らないかもしれない。吾輩の職業は小説家である。自分では少しも思ってもいないが、売れっ子という分類には入るらしい。吾輩は気ままに、思いつくがままに、文章を書きたいのだ。ただ、そのろくに考えてもいない文章を人に見られるのは、自分の排泄物を人に見られているようなものだ。猫でも隠すものを、吾輩は、人間である吾輩は見られ、世に広められるのだ。こんな羞恥、ジャコウネコと同じではないか。自分の排泄物を、人からの評価は高いからと言って、自分の知らないところでコーヒーにされているのだ。ジャコウネコはいったいどんな気持ちなのだろうか。吾輩は恥ずかしいったらありゃしない。