守り抜く!
「おめでとうございます!妊娠していますよ。8週目ですね」
「…本当ですか?」
「本当ですよ!ほら。ここが赤ちゃんですよ。」
「よかった…」
華は涙を浮かべた。
「本当に良かったですね。妊娠は奇跡がいくつも重なっているんですよ。たまたま赤井さんのようにすぐに妊娠する人もいれば何年もかかる人もいる。お身体大事にしてくださいね。」
「はい、ありがとうございます」
華は診察室から出た。
俺は待合室で華が帰ってくるのを待っていた。
周りには大きなお腹をした妊婦さんがたくさんいた。
なんとなく気まずい。
華が見えた。
(…え?)
華は涙を拭きながら歩いてきた。
「は、華…?」
「湊人…私、妊娠してたよ!」
「本当か?」
「うん!8週目だって!」
「そっか!やったな!…8週目って何ヶ月だ?」
「3ヶ月だよ」
「そうか…」
俺は華を抱きしめたい衝動に駆られたが周りの目もあるので堪えた。
「俺が父親か…」
会計と次回の予約を済ませそのまま帰宅した。
華の実家と俺の実家には電話で報告した。
どちらもとても喜んでくれた。
華はそれからつわりがひどくなり、どんどん痩せていってしまった。
時には病院へ点滴をしに行くこともあった。
俺は自分の無力さに呆れた。
自分のできることは何か。
できる限り家事をし、栄養のある食事について調べたり、華の側に付いていたり。
俺にはこんな事しかできなかった。
「ごめんな、華。」
俺は華の背中をさすりながら言った。
「ううん。湊人、ありがとう」
華がどんどん母親になっていくのが分かった。
俺は父親になれるのだろうか…
不安でいっぱいだった。
ーーーーー
月日は流れ、ついに出産予定日になった。
「もうすぐで会えるね」
華が大きなお腹を撫でながら話しかける。
「いつ産まれるかな」
俺は華のお腹に手を当てた。
「まだ産まれそうもないんだよね。全然兆候ないの。」
「そうか。あと少しの2人だけの時間大事にしような」
「うん」
俺は華の頭を撫でた。
その4日後。
「赤井さん、深呼吸!大丈夫よ〜、赤ちゃん頑張ってるからね!」
「華、頑張れ!」
俺は華の背中や腰をさすり、できる限りの応援をする。
「いった…い…」
華はとても苦しそうだ。
「華は大丈夫なんですか?」
俺は不安で助産師に聞いた。
「大丈夫よ!パパが弱気でどうするの!ほらどんどんさすって!」
「は、はい!」
「もうすぐ産まれるからね〜!頭見えてきたよ!」
産む体制になり俺は華の手を握った。
「はい、いきんで!」
「ふぅん〜っ!」
何度もいきんで華は疲れ切っている。
「あと1回いきんだら産まれるよ!せーの!」
「…ほぎゃっ…おぎゃー!おぎゃー!」
「う、産まれた…!華、産まれたよ!」
「うん…よかった…」
俺は涙を拭いた。
「元気な女の子ですよ〜」
処置が全て終わり、華と俺は病室へ行った。
華は疲れ切っている。
「華、ありがとうな。俺を父親にしてくれて。ゆっくり休んでくれ。」
俺は華の頭を撫でた。
「うん…」
それから数日後。
無事に2人とも退院した。
子供の名前は彩花。
いろんな色の花を咲かせてほしいと願って付けた。
華は母乳に奮闘中だ。
寝る間も無く母乳をあげ続けている。
俺はミルクにして寝てほしいのだが、「母乳出るからいいの!」と却下されてしまった。
難しい問題だ。
小さい彩花を抱く。
これからこの子にどんな未来が待っているのだろう。
「かわいいね」
俺のすぐ隣で華が微笑む。
「あぁ。かわいい。誰にも渡したくない」
「え〜もうそんな事言っちゃう?」
華が笑った。
「彩花〜、パパ面白いね」
華が人差し指で彩花の手を触る。
ギュッ
「「あっ。」」
彩花はしっかり華の指を握った。
俺は彩花を片手で抱き、もう片方の手で華を抱き寄せた。
「俺、幸せだ」
「ふふっ。私も」
俺はこれからも華と彩花を守り抜くと決めた。




