大事な話
「ただいま〜」
俺はバイトから帰宅した。
誰もいない。
「あれ?華から連絡来てたっけ?」
俺はスマホを取り出して華からの連絡を確認する。
「来てない…買い物にでも行ったか?」
とりあえず俺は荷物を置き、椅子に腰掛け一息ついた。
…どこに行ったのだろう。
その時スマホが鳴った。
(華のお母さん…?)
「もしもし。ご無沙汰してます。はい。はい、分かりました。今から伺います」
華のお母さんに家に来るよう言われた。
華も実家に戻っているそうだ。
もしかしたらプロポーズしたのに挨拶に来ないと怒っているのだろうか。
それだったらまずい。
俺は急いで身なりを整え、バイクを走らせた。
「いらっしゃい。いきなり呼んでごめんなさいね」
「いえ、大丈夫です。お邪魔します」
俺はリビングに通された。
今日はお父さんはいないようだ。
華の姿も見えない。
「あの、華は?」
「すぐ来るわ。ちょっと待ってね」
ガチャッ
リビングのドアが開き華がやってきた。
「どうした?!」
華は泣きはらした顔をしていた。
華はお母さんの隣に座った。
「湊人くん、あのね。大事な話があるの」
「…はい」
「まずは…プロポーズしてくれたのよね?ありがとう」
「あ、はい!」
「それで、今日はプロポーズの話じゃないんだけど、これからのあなた達にとって大事な話。華、自分で話しなさい」
「うん。…私の卵巣、多嚢胞性卵巣症候群っていうのになってるらしくてね、不妊の原因になるんだって。私、赤ちゃん産めないかもしれない…」
華は淡々と話していたが辛そうだ。
「え、らんそうって卵巣?ま、待ってくれ!俺はまだ子供の事とかは…」
俺は驚いた。
そんな事考えた事なかった。
「でもいつかはこの話になると思うの。結婚してから妊娠できないかもしれないって話すより、結婚する前に知っておいてもらった方がいいかと思って。」
華のお母さんは真剣だ。
「湊人くん、いつか子供が欲しいのであれば華との結婚は難しいかもしれないわ。」
「え…」
俺は絶句した。
華は涙ぐんでいる。
「俺は…どんな華でも華と一緒にいたいです」
「湊人…」
「俺はまだ子供の事とか考えた事なかったし、もしいつか欲しくなっても華と2人で考えて考えて行動します。俺は華以外考えられないんです」
「湊人くんがそう言うなら私からはもう何も言う事はないわ。湊人くん、本当にありがとう」
「いえ…。華もそれでいいか?」
コクッ
華は静かに頷いた。
「じゃあこの話はおしまいね!今日はうちで夕食食べて行きなさい!すき焼きにするから」
「いいんですか?!おっしゃ!」
「あ、もうすぐお父さんが帰ってくるから結婚の挨拶したら?」
「え、心の準備が…」
「ふふっ。嘘よ。それは改めてやりましょうね。一生に一度の事だから」
「はい!」
俺は華を見た。
まだ落ち込んでいる顔をしている。
「お母さん、久しぶりに華の部屋に行ってもいいですか?」
「いいわよ。夕食できたら呼ぶわね」
「はい!華、行こうぜ」
「あ、うん…」
俺は華の手を引き華の部屋へ向かった。
「懐かしいな…」
俺は華のベッドに腰掛け華を隣に呼び寄せた。
この部屋には色んな思い出がある。
俺は華の手をギュッと握った。
「華、俺がそんなに簡単に結婚やめるって言うと思ったか?」
「…ううん。でも湊人はいつか子供が欲しいって言うと思って。その時に私でいいのかなって不安で…自信なくて。」
俺は華を抱き寄せた。
「バカだなぁ。俺、華と離れる事が1番辛いよ。子供はできてもできなくてもどっちでもいい。華がいてくれたら俺は幸せなんだ」
「湊人…」
「まぁ、別れたいって言っても離れないけどな!」
俺は華にキスをし、意地悪く笑った。
「…もう!」
華の頬は膨れた。
「…ったく。いつまでも可愛いな」
俺は華の服のボタンを外した。
「えっ…!お母さん呼びに来ちゃうよ?」
「いいじゃん、結婚するんだし」
「そういう問題…?」
そう言いながら華は俺に押し倒された。
俺が華のスカートに手を伸ばした時、お母さんが俺たちを呼ぶ声がした。
「「あ。」」
俺たちは急いで身なりを整えた。




