すれ違いの生活
華は橋本、菜月とよく連絡を取り合うようになった。
橋本と菜月はほとんどの時間一緒にいる為、橋本のスマホから橋本も菜月も連絡してくる。
「ほーんと、この2人仲良いよね。羨ましい。」
華はスマホを覗きながらため息を吐いていた。
「華ちゃん、お客さん増えてきたから入ってくれる?」
「はーい、分かりました!」
華は奥の休憩所から店内に戻った。
華はこのケーキ屋で働くのが大好きだ。
みんな楽しそうで、優しくて。
買いに来る人たちもなんだかワクワクしていて。
いるだけで幸せな気持ちになれる。
「いらっしゃいませ〜」
「あの…っ!」
「!!」
気付けば目の前に湊人と一緒にいたあの高校生がいた。
(平常心、平常心…!ここはバイト先なんだから!)
「はい、いかがされましたか?」
「…あのっ!…ショートケーキ2つください…」
高校生はなぜか挙動不審だ。
「…?かしこまりました。」
華は手際よくケーキを箱に入れお会計に移った。
お金を受け取る時に高校生と手が一瞬触れると高校生は驚いたように手を振り払った。
「し、失礼いたしました」
「あ、いえ…すみません」
高校生はケーキを受け取ると走り去ってしまった。
(今のなんだったんだろう…そんなに私の事嫌いなのかな…)
華はモヤモヤしていた。
華は家に帰ると寝る支度を済ませてベッドで今日の出来事を橋本と菜月に報告していた。
『え〜なんなんだろうね、その高校生。もしかして宣戦布告?』
メールを打っているのは菜月のようだ。
『そうかなぁ〜、やだなぁ〜。また何かあったら報告するね』
眠気が限界だった華はスマホを握りしめたまま眠ってしまった。
ーーーーー
「ただいま〜」
俺は真っ暗な家に帰ってきた。
華は寝てしまったようだ。
最近、すれ違いの生活をしている気がする。
テレビでよく見る芸能人の離婚理由も『多忙ですれ違いの生活が続いた為』が多い気がする。
昔は理解できなかったが、今なら分かる。
寂しい。
2人で一緒に住んでいても寂しいのだ。
俺は寝室にいるであろう華を見に行った。
華はスマホを握りしめながらすーすーと寝息を立てている。
「スマホぐらい置いて寝ろよ」
俺はスマホを華から取り、充電器にスマホを挿した。
その時スマホの画面が明るくなりメールが見えてしまった。
『うん。連絡待ってる。また会いたいなぁ。おやすみ。』
「え…はし、もと?」
俺は理解できず固まってしまった。
どうして華が橋本と?
また会いたいってなんだ?
俺がバイトしてる間に2人であっているのか?
考えたら考えただけ辛くなってきた。
(ダメだ。頭冷やしてこよう)
俺は外に出てしばらく散歩する事にした。
30分程散歩し、家に戻りシャワーを浴びて寝室に向かった。
ベッドに潜り込もうとすると華が目を覚ました。
「あ…湊人。おかえり。…あれ、スマホがない…」
「ただいま、スマホなら充電しといた」
「あ、そうなんだ。ありがとう」
そう言うと華はまた眠ってしまった。
俺は華を背後から抱きしめて眠った。
ーーーーー
それから何週間か過ぎたが、華が橋本と会っているかどうか分からなかった。
たまに坂下が「今日も華さんケーキ屋さんでバイトしてたよ〜」と教えてくれる。
俺はまた行ったのかと表面上呆れているがその情報が実は有り難かったりする。
塾講師のバイトの帰り、坂下が玄関の外で立っているのが見えた。
「お〜、坂下どうした?帰らないのか?」
「先生、先生のおうちに行きたいの!」
「えっ…」
「いいじゃん、ダメ?」
「ダメだろ…普通に。」
「華さんには私がちゃんと言うから!」
「…分かった。でも挫けるなよ?」
「うん!先生ありがとう!」
俺は次の1日休みの日を伝え帰宅した。
ーーーーー
「ただいま〜」
「おかえり」
華が今日は起きている。
ちょうどいい。
「華、今度の俺の1日休みの日、華に会いたいって奴がいるんだけど連れてきていいか?」
「え?いいけど…」
「さんきゅー!じゃあ伝えておくわ」
「うん」
華は不思議そうな顔をしていたが快諾してくれた。
(華、困るだろうな…)
俺は複雑だった。




