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忙しい中の幸せ

俺は講義が終わると華がいるラウンジへと向かった。


華の講義が早く終わる日はだいたい華は俺の大学のラウンジで待っている。


最初は華がラウンジで待っているとナンパされる事もあったが、虫除け効果の指輪をプレゼントしてからは激減した。



ラウンジに到着し、華を発見した。


華は小説を真剣に読んでいる。


俺はコーヒーを注文し、華の向かいに静かに座った。


華は小説に集中していて俺には全く気付いていない。


俺はこういう時間が好きだ。


ゆっくりとコーヒーを飲みながら華を見つめていられる時間。


華は小説を見ながらコロコロと表情を変える。


とても可愛らしい。


頬が緩んでしまう。


俺は頬杖をつき、しばらく華を見つめていた。



華はスマホを見た。


そして首を傾げ、こちらを見てハッとした。


「湊人!いつからいたの?!」


「連絡したあと、すぐ来たけど?」


「じゃあ15分前?!全然気が付かなかった…」


華は申し訳なさそうな顔をしている。


「いいんだよ。お互いちょっと休憩って事で」


「そうだね。湊人、もう行く時間?」


「あと20分したら行くよ」


「そっかぁ、今日も頑張って!」


「おう!」


俺たちは微笑み合った。



俺は今、早朝に新聞配達のバイト、夕方から深夜にかけて塾講師のバイトをしている。


なかなかのハードスケジュールだが、少しずつ慣れてきた。


華はケーキ屋さんでバイトをしている。


お互い多忙で一緒にいられる時間が少ない為、こういう少しの時間が大切なのだ。


「俺、そろそろ行くわ。」


「はい、お弁当」


「さんきゅー!じゃあ、気をつけて帰れよ!」


「うん、いってらっしゃい」


俺と華はそれぞれの道へ向かった。


ーーーーー


「赤井先生!ここが分かんない」


「これか?これはな。」


塾の自習室。


俺は今日は自習室担当だ。


バイト先の塾は自習室に先生を1人配置し、いつでも質問できるようにしている。


「ね、先生。彼女いるの?」


坂下茉莉さかしたまり、高校1年だ。


「え、なんで?」


「だってこれ。」


坂下が指を指した先には俺の右手があった。


「あ!」


右手の薬指にペアリングがはまっていた。


「外すの忘れてた…」


俺が急いで外そうとするが指が浮腫んでなかなか取れない。


「いいじゃん、別に外さなくても。それよりさ、彼女見せてよ!」


「坂下さん?ここは自習室だからお静かに!」


俺はわざと丁寧口調で坂下に注意をした。


「ケチ!」


そう言うと坂下はムスッとして机へ戻っていった。


(あと何分で終わりだ?)


俺は時計を見た。


あと30分。


あと30分で帰れる。


早く帰りたい。


「…先生?」


「…ん?」


「ここ、分からないんですけど。」


「あぁ、ここな。ここは…」


ーーーーー


バイトが終わり、俺はバイクに乗ってコンビニに寄った。


「すみません、コンビニ受取をお願いしている赤井です」


「はい、こちらですね」


「ありがとうございます」


俺は店員から受け取り、家へ急いだ。


家へ着くと明かりを確認した。


(起きてるな…)


俺はコンビニで受け取った荷物を段ボールから取り出し、家の中へ入った。


「ただいま〜」


「おかえり〜!」


華が玄関まで迎えにきてくれた。


「はい、2年記念日おめでとう!」


俺はプリザーブドフラワーを華に渡した。


「わぁ!きれい…!ありがとう!」


華は俺に抱きついた。


「私はね、バイト先でケーキ買ってきたんだよ!今1番おすすめのやつ!」


「お、まじか!早く食べようぜ!」


俺たちは平凡だが幸せなひとときを過ごした。



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