初めての。
ご覧いただきありがとうございます!
湊人は華の様子をうかがう為デートに誘います!
俺は公園のベンチでただぼーっと座っていた。
美奈は何も言わずに隣に座っている。
「…荒井さんの事だけどさ、きちんと話した方がいいよ。私達が誤解してるだけって可能性もあるし。」
「そうだな。」
「でも、あんまり無理はしないで。」
「あぁ。そうするよ。…遅くなっちゃったな。美奈、送るよ」
「ありがとう、でも大丈夫。」
「…そうか。じゃあまた明日な」
「うん。また明日」
美奈を見送ると俺はゆっくりと腰を上げ歩き出した。
あの男は誰なのか。
そこがまず問題だ。
親類だったら疑ってしまって申し訳ない。
でもそこまで親しい感じでもなかった。
華に聞いてもいいだろうか。
詮索しすぎと嫌われてしまうだろうか。
華に会えば何か分かるだろうか。
俺はスマホを取り出した。
『今度の日曜、デートしないか?湊人』
珍しくすぐに返事が帰ってきた。
『いいよ!楽しみにしてるね。華』
(楽しみにしてる、か。)
俺がどんな気持ちでいるか華は分からないだろう。
俺は今、挫けかけている。
ーーーーー
日曜日。駅前の木の下で待ち合わせだ。
俺は待ち合わせより少しだけ早く着いた。
華はまだ来ていない。
ふぅ、とため息をつくと急に視界が暗くなった。
「み〜なとっ!」
華が手で目隠しをしたようだ。
「湊人、なんか久しぶりだね!どこ行こうか!」
視界が戻ると華が俺の目の前で笑っていた。
俺はこの笑顔に弱い。
今までの気持ちが一気に吹き飛んだ気がした。
(やっぱり、気のせいだったんだ)
俺はホッとした。
俺たちは行き先を決めずに商店街を歩く事にした。
「あ、あれ見て!かわいいっ!」
「あれ美味しそ〜」
華は商店街を満喫しているようだ。
華の姿を見ていると和む。
華はいつの間にか1軒先の店に行ってしまった。
俺が急いで華を追いかけると、あの男がいた。
「こんにちは」
「あ、こんにちは!こんな所で会うなんて奇遇ですね!」
「華!急にいなくなるなよ」
俺はわざと知らないフリをして華の隣へ駆け寄った。
「ごめんごめん!かわいいお菓子見つけちゃって。」
「華さん、こちらは?」
「あ、彼氏です!」
「どうも」
俺が会釈をすると男は余裕そうな笑みを浮かべた。
「華さんのクラスで教育実習をしている中村です。」
「先生…?」
「そうなの!先生は今、カウンセリングの勉強もしてて、たまに相談に乗ってもらってるの!凄いよねっ」
「そ、そうなんだ」
2人で会っていたのは相談に乗ってもらっていたからだったのか。
俺は勘違いをしていたようだ。
「湊人、私トイレに行ってくるね」
華が小声で俺に言い、中村先生に会釈して走っていった。
「では、僕もこれで」
中村先生は俺の横を通り出口に向かった。
その時。
「華は俺がもらうから」
ボソッと中村先生が言った。
「!!」
俺は驚き振り返った。
中村先生は何事もなかったように店を出て行った。
俺の勘が当たっていた。
やはりあの時華への想いが漏れて見えたのは見間違いではなかった。
華は中村先生が好意を持っている事を分かっているのだろうか。
あの様子では分かっていないのか。
「くそっ」
俺の中の黒い感情が渦を巻いた。
ーーーーー
「湊人、どうかしたの?」
「…。」
俺は黙っていた。
どうすれば華がこれからも俺だけを見ていてくれるのか。
「おーい、大丈夫ですか〜?」
「…華。なんであの先生は華の事名前で呼んでいるんだ?」
「ん?あ〜、同じクラスに荒井が2人いるからだよ!それがどうかした?」
「…気になっただけだよ」
「ふ〜ん。ね、これからどうする?」
「華、俺としてみないか?怖かったら途中で止めるから」
俺は立ち止まり華の顔を見た。
「え…」
華は驚いた顔をしている。
「…いやか?」
「嫌じゃないけど…。今日、お父さんもお母さんもいるし…」
「じゃああそこ行こう」
俺が指差したのはホテルだった。
「え?!あんなとこ入っていいの?!まだ高校生だよ?!」
「私服だしバレないだろ。お金は俺が出すから」
俺は不安だった。
俺には繋ぎ止める方法がこれしか見つからなかった。
ーーーーー
「あの〜、ここ、すごいね…」
俺たちは意外にすんなりとホテルの部屋に入る事ができた。
部屋は大きなベッドに大きなテレビがある。
奥には洗面所とお風呂があるようだ。
「初めて入ったけど、こんなに凄いんだな。」
俺は興味深々で照明をつけたり、消したり、お風呂を覗いたりしていた。
「あの…!」
華が俺を止めた。
「…本当にする?」
「華が嫌じゃなければ俺はしたい」
「…分かった。お風呂に入ってくる」
「お、おう」
俺は生まれて初めての事に内心ドキドキしていた。
俺、ちゃんとできるのか。
そう、俺は初めてだ。
気持ちを落ち着かせるためにテレビを付けた。
「!!!」
すぐに消した。
まさか付けた瞬間AVが流れるなんて思ってもみなかった。
余計なことをしてしまった。
「…あの、終わったよ」
「あぁ…?!」
華は裸にバスタオルを巻き付けたまま出てきた。
俺には刺激が強すぎたが、平静を装った。
「俺もシャワー浴びてくる」
そう言うとそそくさとお風呂場へ行った。
俺たちはベッドの上で向かい合った。
「…華。俺、実は初めてなんだ。だから下手だと思う。分からない事ばっかだから遠慮なく言ってな。」
「…はい。」
俺は無我夢中だった。
途中で華が少し震えた。
「大丈夫か?」
「ちょっとだけ怖い。キスして…」
「分かった」
俺は何度もキスをしながらゆっくりと華に触れた。
「華、大丈夫だったか…?俺、その…」
華は俺の腕の中にいた。
「こんなに優しくしてもらったの初めてだよ。幸せだった。」
華は俺にギュッと抱きついた。
「湊人、大好き」
「俺も」
俺は抱きしめ返した。
「華、俺から離れないでくれ。」
自然と抱きしめる腕の力が強くなる。
「どこにも行かないよ。ずっと湊人のそばにいる」
華は俺に軽くキスをした。
ーーーーー
帰り道。
俺たちは手を繋いでいた。
「じゃあ、今日はありがとう。またね」
「…。」
俺は手を離さなかった。
「湊人?どうしたの?」
「…もう少しだけ一緒にいたい」
「どうしたの?湊人、今日は甘えん坊さんだねっ」
華が俺の頭を撫でてくれた。
体が交わっても不安は拭えなかった。
俺はこの手を離したら華が何処かへ行ってしまうのではないかと不安でたまらなかった。




