カレカノ宣言
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朝練に行くといつもいるはずの新がまだ来ていない。
その代わりに美奈がいて…?
次の日。
俺が朝練に行くと新の姿はなかった。
「珍しいなぁ〜、新がいないなんて!まぁいいや!今日もやりますか」
そう言ってウォーミングアップをしていると美奈がやってきた。
「おはよ」
「はよ!どうした?早いじゃん」
「新の外部のファンが昨日マネージャー室に忍び込んで色々してくれたらしくてさ〜、朝から片付けしてるんだよ。もぉ〜!ファンなら新や新に関わる人に迷惑かけるなっての!」
美奈が珍しく怒っている。
「…俺も手伝おうか?」
「え、ありがと」
俺たちはマネージャー室へ行った。
『新くんへ渡してください』
そう書かれたメモ紙の下にはゲイ雑誌がたんまり置かれていた。
他にも何が入っているか分からないドリンクや薬、男性用の下着までもが散乱していた。
「これ置いてく人達って何がしたいのかな?湊人、分かる?」
「えーと、新がゲイに目覚めたらとか想像して萌えてるとか…?」
「えー、気持ち悪い。ただただ気持ち悪い。あ、ゲイを否定してる訳じゃないよ?新に無理矢理送りつけるのが気持ち悪いんだよ?」
「わかってるって!さぁ、片付けようぜ」
「とりあえずダンボールに入れて?顧問に全部渡すつもりだから」
「おっけー」
片付けは10分程で片付いた。
「よし!あとはこれを職員室へ持って行くと。」
「俺が持つよ」
「いいの?こんな物持って歩いてると変な勘違いされるかもよ?」
「それはお前も同じだろ?説明は美奈がした方がいいから、一緒に行こうぜ」
職員室へ向かって歩いていると、前に新と華が2人で歩いているのが見えた。
「あれ、新と…荒井さん?!」
美奈は驚いている。
「あぁ。あの2人付き合いだしたんだって。新のやつ、だから今日の朝練は来なかったんだな。」
「そうなんだ〜!新が女の子と歩いているところなんて初めて見たよ!安心安心!」
「何目線だよ」
「マネージャー目線!かな、」
俺たちは笑った。
「それにしてもあいつら目立つよな」
「ほんとそれ。美男美女すぎてあそこだけ輝いて見えるよ」
「美奈、ドア開けてくれ」
「あ、ごめんごめん。失礼しまーす」
職員室に入り美奈が顧問に事情を説明した。
「そうか。こちらの物で盗まれた物はないかしっかり確認しておいてくれ。今日の部活はこの件のミーティングから始めるぞ」
「「分かりました」」
顧問の話が終わりクラスに行く途中、女子たちが何やらいつもより騒がしかった。
「ねぇ見た?ショックだよね〜」
「ほんとだよ〜今日、早退しちゃおうかな…」
「みんな新と荒井さんが2人で登校してるの目撃しちゃったんだね」
美奈がコソッと俺に言う。
「そういうことか」
!!
俺のクラスの前が大変な事になっている。
女子達で溢れかえっているからだ。
「あれ、新のファン達だよ!荒井さん目的だよ!私、新を呼んでくるから湊人は荒井さんを守って!」
美奈はそう言うと新のクラスに走った。
「ちょっと、通して…」
俺は女子達をかき分け教室へ入り、教室のドアを閉めた。
華を探すと、クラスの何人かに囲まれていた。
「どういうことなの?なんで華が新くんと登校するの?」
「私達、付き合うことになったの」
「そんなの、許されると思ってるの?」
「今すぐ別れてきなさいよ!」
教室内だけでなく廊下からもヤジは飛ぶ。
「やめろよ!お前ら何やってるんだよ。誰が誰と恋愛しようがお前らには関係ないだろ!」
俺は華の前に立った。
「湊人…」
華は俺を見て目を潤ませた。
(やっべ!めっちゃかわいい…!)
思わず見惚れてしまいそうになるがここはグッと堪える。
気を取り直し、女子たちを睨みつけた。
「俺は長年新といるけど、こんなに新の隣がお似合いな子、初めて見たね!お前ら、新と並ぶ勇気あるのかよ?」
「み、湊人…その言い方は…」
後ろで華が困っている。
が、俺は気にしていられない。
新が来るまで華を守らないといけないからだ。
「湊人くん、今の発言、女子を敵に回したよ?」
「え、」
俺は言ってはいけない事を言ってしまったようだ。
女子達からは殺気を感じる。
その時。
キャー!という黄色い声と共に勢い良く教室のドアが開いた。
「新…」
華が言うと女子達は一斉にドアの方を見た。
新は俺と華の方へ歩いてくる。
「華、怪我はないか?」
「うん。大丈夫」
「お前ら、俺の彼女に手を出したらただじゃおかないからな」
新は女子達を睨む。
「新くん、私達はそういうつもりじゃ…」
「じゃあどういうつもりで華をこんな目に合わせるんだ?」
「私達はただ、新くんに幸せになってほしいから…」
「俺は華といる事が1番幸せなんだけど?ファンクラブだか、なんだかって言ってるけど。俺の幸せを壊すクラブなのか?」
「ちがう!!」
「じゃあ、認めてくれ。俺は華と付き合ってる」
「…わかった。」
ファン達の中には泣き出してしまう子もいた。
「分かったなら教室に戻ってくれ。…華、迷惑かけてごめん。湊人も。」
「俺はいいけど。」
「私も、大丈夫。みんなの前で付き合ってるって言ってくれてありがとう。安心した。」
「おう。何かあったらすぐ言えよ?」
新は華の頭をポンポンと撫で、笑った。
俺は男なのに新に見惚れた。
なんてかっこいいんだ。
「湊人。華を守ってくれてさんきゅーな。同じクラスに湊人がいてくれて助かったよ。これからも俺がいない時は守ってやってくれ。華はきっと俺のせいで苦労するから」
「俺で良ければ何でもするぜ?親友の頼みだからな!」
「じゃあ、俺、行くわ。またな」
そう言うと新はクラスに戻って行った。
「ふぅ〜。イケメンを彼氏に持つと大変だな」
「ほんと。ある程度覚悟はしてたんだけど…こんなにすごいとは思わなかった。」
華は苦笑いしている。
「でも、大好きな人と付き合えたから、後悔はしたくない。私、頑張るよ」
「おう、応援してるよ」
華の顔はキラキラしていて眩しかった。
ーーーーー
部活。
ミーティングの後、今日は部室の掃除をして終了という事になり、掃除がてらみんなで紛失物は無いか確認した。
「おい、新。聞いたぞ!荒井華と付き合ってるんだって?」
先輩が新に絡む。
「なに〜!あの1年の美人か!俺狙ってたのに!」
「やめてくださいよ〜」
「くそ、羨ましいな」
「噂をすれば、ほら。彼女のお出ましだ」
遠くの方で華がグラウンドを見ている。
「新、紛失物を確認したらもう帰っていいぞ」
「え、」
「彼女を待たせたら悪いだろ?気をつけて帰れよ?」
「あ、ありがとうございます…!」
新は急いで支度を整え、華の元へ走って行った。
「いいなぁ〜新」
「ぼけっとしない!さっさと掃除!」
後ろを振り返ると美奈が鬼の形相でこちらを見ていた。
「ひぇ、すみません…」
俺は新の分も掃除して帰った。




