リハビリ
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湊人が朝起きると華から返信が!
嬉しくて元気いっぱいの湊人は…?
「ん〜!久しぶりによく寝たなあ」
俺は起き上がり大きく伸びをする。
スマホを確認すると華からメールが届いていた。
『薬の副作用で体がキツくて寝たきりだよ〜。今日は部活かな?頑張ってね!昨日はお父さん、嬉しそうに帰ってきたみたいだよ。ありがとうね。華』
男性恐怖症でもメールは大丈夫みたいだ。
華からメールか届いただけで一気に元気が出た。
やっぱり華は俺の女神に違いない。
「よしっ!頑張りますか!」
俺は支度をし、気合を入れてリビングへ向かった。
「おはよう」
父さんがコーヒーを飲んでいる。
「あら湊人、今日は早起きなのね。ご飯できてるわよ」
「さんきゅー」
三連休最終日の俺の1日が始まった。
「いってきまーす」
部活の為、学校へ向かっているとスマホが鳴った。
『今日、部活が終わったら私の家に来られるかな?お父さんとお母さんが湊人に相談があるんだって。お返事待ってます。華』
(やった!華に会えるかもしれない)
『おっけー!終わり次第行くよ。部活が終わったらまた連絡します。湊人』
俺は心の中でガッツポーズをした。
「何朝からニヤけてんの?」
「!なんだ美奈か」
「荒井さんじゃなくて悪かったわね。そんなとこでニヤけながら突っ立ってると遅れるよ?」
美奈は馬鹿にしたような顔で一瞬俺を見るとすぐに歩き出した。
「お前、可愛くねーな」
「あんたの目が節穴なのよ。私だって意外にモテるんだからね」
「へぇ、初めて知った。美奈、モテるんだ。」
「ま、湊人には関係ないけどねっ!」
「え、待てよ。美奈って彼氏いないよな?」
「いないけど?」
「まだ好きな人には振り向いて貰えてないのか。思い切って告れば?」
「ん〜、考えとく」
美奈が笑った。
どこか悲しそうな顔で。
今日の部活は一日だ。
日差しが照りつけ、すぐに汗だくになった。
「あちー!」
俺は芝生の上に寝転んだ。
他の人達も冷を求めて日陰に行ったり、マネージャーにドリンクをもらったりしていた。
「今日の暑さやばくね?」
橋本が隣に来た。
「なー!これじゃ死ぬ。本気でやばいよな」
「集合!」
顧問が呼んだ。
「他の先生方と話し合ったんだが、今日の部活は異常な暑さのため中止となった。各自しっかり水分補給をしてから帰宅するように。具合が悪い者がいたら言ってくれ。それでは解散!」
「湊人、今からどうする?メシでも行くか?」
「悪い、橋本。今日はこの後予定があるんだ」
「デートか?」
橋本はニヤついている。
「まぁ、そんなところかな!じゃあな!」
俺は急いで支度をし、一旦家に帰った。
「ただいま!」
「あら?早かったのね!湊人、お昼何食べたい?」
「ん〜、冷やし中華かな。あ、俺午後から華の家に行ってくる」
「分かったわ。失礼のないようにね」
「分かってるって!」
俺は風呂場へ向かい、シャワーで汗を流した。
華は今日、俺と会ってくれるだろうか。
やっぱり俺の事も怖いのだろうか。
少し不安になってきた。
(俺より華の方が不安だよな。俺がこんな気持ちじゃダメだ)
俺は鏡に写った不安そうな自分の顔をビンタし、風呂場を後にした。
ーーーーー
ピンポーン
俺が華の家のインターホンを押すとお母さんが出てきた。
「湊人くん、忙しいのに呼び出してしまってごめんなさいね。さ、入って!」
「これ、途中で買ってきたんで良かったらみんなでどうぞ」
「あら、気を使わせてごめんなさい。ここのケーキ、美味しいって華が言ってたわ!ありがとう」
俺は華と一緒に行ったケーキ屋でケーキを買った。
少しでも華の心が開くように。
リビングに通されると、お父さんが待っていた。
「昨日はご馳走様でした。」
「いやいや、こちらこそ有意義な時間を過ごせて嬉しかったよ。さぁ、ここに座ってくれ」
「はい。それで相談というのは…?」
俺はお父さんとお母さんを見た。
「まず、報告からいいかな。あと1週間で夏休みだろう。だから夏休みまでは華を休ませる事にした。そして、共学だとやはり今の華には厳しいと思うから夏休み明けから隣の女子高へ転校させる事にした。」
「そ、そうですか」
華をもうクラスで見られない。
寂しいが、華の為だ。
仕方がないだろう。
「ここからが相談だ。男性恐怖症を克服するにはリハビリが必要なんだ。だから湊人くんに協力してほしい。どうかな?」
「え、は、はい。具体的には…?」
「とりあえず、1週間に一度くらいのペースで華と会ってみてほしい。華の具合に合わせてペースを遅くしても早めても構わない。」
「わかりました。やってみます」
「忙しいのに、本当にありがとう」
「いえ。俺がしたくてしてることなので。今日は華に会えますか?」
「さっきは調子良さそうだったけど、どうかしら?華に聞いてみるわね」
そういうとお母さんは華の部屋へ行った。
「お父さんは大丈夫なんですか?」
「私もダメみたいだ。触れようとすると手の震えが止まらなくなってしまう。ある程度距離があれば大丈夫のようなんだがね」
お父さんは悲しそうに笑った。
「1番辛いのは華だからね。」
「そうですね…」
コンコンコン
リビングのドアが鳴った。
「??」
「華が来る時はノックをする事にしたんだ。私がドアの近くにいたら怯えてしまうからね。」
そういうとお父さんはドアから離れたソファに座った。
俺もお父さんの隣へ座った。
「いいぞ」
ガチャ
「湊人…!」
華だ。
華が立っている。
「華、具合はどうだ?」
「うん、今は調子がいいの。来てくれてありがとう」
華が微笑んだ。
やはりいつもよりは覇気がない。
「この距離だったら怖くないか?」
「うん。大丈夫」
2〜3mはあるだろうか。
「華、この前美味しいって言ってたケーキ屋さんで湊人くんがケーキ買ってきてくれたわよ!食べられる?」
「うん!食べたい」
華は嬉しそうに笑った。
そんな華を見られて俺は嬉しくなった。
ケーキは安定の美味しさだった。
「うまっ!」
「湊人、本当に美味しそうに食べるよね」
華が微笑む。
「そうなんだよ。昨日もすごく美味しそうに食べてくれて嬉しかった」
お父さんも笑う。
華はケーキを完食できた。
「華、もうちょっと近くに行ってみてもいいか?」
俺はどの程度近くまでいけるか試したかった。
「うん。来て」
俺は少しずつ距離を縮めた。
1m程になった時、華が少し震え出した。
「…今日はここまでにしようか」
「待って、もう少しだけ来て」
「分かった」
少しずつ距離を縮めていくと、華の顔色がどんどん悪くなる。
「これ以上はダメだ。」
俺は華から離れた。
「ごめんね、湊人」
「華が謝ることじゃないよ。ゆっくりリハビリしていこう」
「うん…」
俺は正直ショックを受けた。
どこかで俺なら大丈夫だという気持ちがあったらしい。
「…じゃあ、今日は俺そろそろ帰ります。また来週来ますね」
俺はそういうと玄関へ向かった。
「湊人…!」
靴を履いていると華の声がした。
「私、湊人の事が大好きなの。これだけは信じて…」
俺は胸が苦しくなった。
「それ、本当か?」
「うん」
「初めて言ってくれたな…。ありがとな。俺も好きだ」
俺ははにかんだ。
「じゃ、また来るから。何かあったら連絡してくれ。あ、何かなくても連絡してくれたら嬉しいけど!」
「うん…!」
俺はそういうと華の家を後にした。




