最悪
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走る湊人。
湊人は間に合うのでしょうか。
俺は走った。
今まで生きてきた中で一番全速力で走った。
「華っ!」
俺は華の家の玄関の扉をドンドンと叩く。
返事はない。
「くそっ!」
試しに扉を開けてみる。
…開いた。
玄関に入ると新の靴が脱ぎっぱなしになっていた。
「華、華っ!」
俺は必死に華を探した。
「ゔゔーっ!っゔ!」
どこかで華の声がする。
バタンッ
俺は部屋のドアを勢いよく開けた。
そこには口にはガムテープ、両手首を縛られている華と下半身裸の新が重なっていた。
「湊人、遅かったな」
新は華から離れると何事も無かったかのように服を着る。
華を見ると服はビリビリに破かれており、出血も見られる。
華は力なく、ただただ泣いている。
俺は華の拘束を解き、そこにあった布団を華に被せると新を睨みつけた。
「お前、何したか分かってるのか?!」
「華が悪いんだ。華、俺から離れられると思うなよ?」
「何言ってんだ!お前がした事は犯罪だぞ?!」
「華は俺のものだ。犯罪にはならない。」
その時、ピーポーピーポーとサイレンが聞こえてきた。
「…警察呼んであるからな。逃げんなよ。」
新は驚いた表情をし、その場から立ち去った。
が、警察がちょうど到着したようだ。
新は警察と一緒に戻ってきた。
一通り調べると新は警察に連れて行かれた。
華のご両親も来た。
警察から連絡があり急いで帰ってきたそうだ。
華と俺は華のご両親と一緒に急いで病院へ行った。
華と華のお母さんは診察室にいる。
「…。」
俺は自分が情けなかった。
「湊人くん、と言ったね?」
華のお父さんに話しかけられた。
お父さんはお茶を俺に渡すと俺の隣に腰掛けた。
「お父さん、すみません…」
俺は頭を下げた。
「湊人くんは何も悪くない。頭を上げてくれ」
「俺がもっと早く到着していれば…華は傷つかなくて済んだかもしれないのに…」
「それなら私達だってそうさ。私達が揃って出掛けていなければ、華を守ってあげられた。」
「…。」
「湊人くん、冷静に警察を呼んでくれてありがとう。君には感謝しかない。後は華の体が無事ならいいんだけど」
「そう…ですね」
俺たちは無言で華たちの帰りを待った。
華たちが診察室から出てきた。
華の怪我はほとんど打撲だと言う。
あとはピルという薬を飲むらしい。
「華…」
俺は華の肩に触れようとした。
「!!」
華の手が震えている。
「ごめん、湊人。湊人は悪くないのに…」
「湊人くん、本当にごめんなさい。華、ショックで男性恐怖症になってしまったみたいなの」
「え…」
「湊人、ごめんね…」
華は泣いている。
「華は、悪くないよ…」
正直、俺はショックだった。
お父さんもショックを隠し切れないようだった。
男性がいると症状が出てしまう為、華はお母さんと先に帰宅した。
「…俺も失礼します。」
俺が帰ろうとするとお父さんに呼び止められた。
「良ければ一緒に食事に行かないか?あと、湊人くんのご両親にもご挨拶をさせてほしい」




