2話 輪と鍵
今回はレグルス君ではなく
三人称視点での語りになります。
「そういや自己紹介がまだだったな。魔女のワースだ」
「素材屋のレグルスです」
それぞれ自己紹介をする。さっきまでの殺伐とした雰囲気は消え、和やかな雰囲気が漂う。
「そういやなんで女神がわざわざ通常世界に来たんだよ?正直死んだと思ったぜ」
魔女と女神とでは分が悪いのも当然である。魔女と天使の戦闘であればお互いの力の差が勝敗を分けるが、相手が女神となればそうはいかない。比べるまでもなく魔女の負けが確定する。
「ここらでとある物を探していまして。相手がわからない以上部下に行かせては危険ですし最高戦力である私が来たってわけです。」
「想像よりも上層世界は自由じゃないんですね?」
「だらけていては堕天してしまいますからね。地下世界は堕天使の集まりですのよ?」
レグルスは少し興奮気味に質問を重ねる。
未知への探求心というのはこういうものなのだろう。
「ということはワースさんは元は天使だったんですか?」
「いや、そういう訳では無い。そこの女神の言っていることは間違ってはいないのだが、堕天使の他にも様々な種族がいるのでな。私は魔族だ。」
「そうなんですね。ありがとうございます。
ところでアルシェさん、探し物とはどんなものなのですか?」
「終焉の鍵ってものですわ」
ワースがその言葉に反応したようにポツリと呟く。
「……マスターキー」
ワースが言葉を発した途端に女神の顔つきが変わる。
「女神の輪の存在を知っていてそれを欲しがるなんて随分物好きだと思っていたけど同じものを欲していたなんて驚きですわ。つまり鍵はあなたが持っているのかしら?」
「マスターキーとはなんなのですか……?」
その質問の後には時が止まったような長い沈黙が続いた。
やがてアルシェがマスターキーについて語り出した。