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私たちの勝利


 それに駆り出されてしまった私達。

 だが審査員たちが何故か無言で私達をじっと見つめている。 

 やはりこの歳で着るのはおかしいのだろう。

 そう私が今にも逃げ出したい気持ちになっているとそこで、


「素晴らしい、こういうのを待っていた!」

「うむ、確かにドレスも素晴らしいが、着ている人物のコンセプトが素晴らしい! こんなかわいらしい童顔の少女とは」

「言われていましたがここまで完璧に着こなさせるとは」

「確かに言われてみれば可愛い系でここまでの人材はそんなにいません」

「こちらの圧倒的勝利ですな!」


 次々に審査員たちが声を上げる。

 何が起こった、私が動けずにいるとりゼルが、


「やはり、元の素材が良いから大勝利だな」

「いやいやいや、ここで勝利しても私達が童顔だという事実が客観的に証明されたので、ある意味敗北なのでは?」

「何を言っているんだ。可愛いのはイズミだけだ」

「! だから、りゼルの方可愛いんだ!」

「本当?」


 リゼルがそう言って私に近づいてきて腰をかがめて見上げた。

 こうやって見るとリゼルは可愛い。

 それはもう可愛い人形の様な女の子に見え……。


 そこで私の頭がコツンと後ろから叩かれた。

 誰だと思っていると後ろにクロウがいて、


「何をやっているんだ」

「う、いや、リゼルが何だか可愛すぎて」

「そうか、イズミはそちらもいける口か」

「! ち、違う、私は男が好きで……でも、私の方がかっこいい美人のはず」

「俺から見ればどちらも可愛い女の子にしか見えないから、そんな風にしていると百合にしか見えないぞ」

「……」

「今の戦いがどれくらい不毛か分かったか?」

「……」


 私は沈黙しかできなかった。

 地味に傷ついているとそこで、ヒルデの声が聞こえた。


「納得が出来ないわ! 何で代役の子が勝利なのよ!」

「あら、ヒルデ、分かっていないようね。これは……私の戦略なのよ」

「……何ですって?」

「そう、童顔の子にドレスを着せる……そこに現れる、倒錯的な“美”を表現したのよ!」

「な!」


 ヒルデの顔が驚愕に変わる。

 そしてクリームリートがドヤ顔である。

 私はその二人の様子を見つつ、会話を聞きながら、


「え? そうだったんですか?」


 私が小さく呟くとそれにクロウが嘆息して、


「言ったものが勝ちなんだろう」

「……」

「とりあえず今回は、クリームリートの勝利だろう。少し待てば、お茶会になるんじゃないのか?」

「お茶会? ケーキとか?」

「ああ、実はあのクリームリートとヒルデは仲のいい親友だからな」


 こんな風に対抗意識を燃やしているように見えて、本当は仲が良いらしい。

 だがヒルデが私から見るにぐぬぬと呻いている様な気もするが……そこで、何だか音が聞こえた気がした。

 クロウが先ほどのドレスを着るクエストらしい紙を開き、


「クリアになっているな。良かった、これで後、98個か」

「結構簡単なんだね、クエストは」

「初めの方だからじゃないのか?」

「う、これからどんな難しいクエストが来るんだろう……」

「今のうちに、イズミがお願いしておいたら、優しめにしてくれるんじゃないのか?」

「そうなのかな? えっと、クロウのお父さん、クエストはこれからもずっとやさし目でお願いします」

「それは駄目じゃ~」


 私のお願いに即座にクロウのお父さんは、NOと答えました。

 酷いと思っているとそこでリゼルがシオンに後ろから抱きつかれていた。


「な、何をするんだ、シオン!」

「いえ、何時も夜は一人で眠れないと抱きついてくるので、そのお礼として後ろから抱きつかせてもらおうかなと」

「……どんな理屈だ」

「嫌ならヌイグルミを抱いて寝ますか?」

「……分かった。でもドレス姿だから抱きついてみたいのか?」

「そうかもしれませんね」


 シオンにそう答えられて、リゼルが珍しくむっとしていた。

 そこで私達が声をかけられる。


「今日はお礼にケーキを御馳走しますわ。それと……このお屋敷にしばらく滞在して頂いて構いませんわ」


 そう、クリームリートが私達に言ったのだった。








 それから早々にドレスを脱ぐ……事は許されず私達はお茶会に。

 クリームリートとヒルデは先ほどの戦いなど無かったかのように楽しそうに談笑している。

 ヒルデの娘はクリームリートの寝込んでいる娘達の様子見に、お菓子を手に行って今ここにはいない。


 実は母親達と同じように娘達も仲がいいらしい。

 というか、母親達の趣味に付き合わされて、うんざりしている者同士気が合うのだとさっきこっそり教えてもらった。

 彼女たちも色々と大変らしい。


 さて、そんな私達の目の前にはクリームとフルーツたっぷりのケーキ、それに焼き菓子などが並んでいる。

 それらを頂きながら紅茶を楽しむ。


「果物が凄くみずみずしくて美味しい」

「そうか、良かったな」


 私の言葉に、クロウが優しげに笑い私を見た。

 一瞬その笑顔に私は魅入られてしまいそうになる。

 やはり美形は男女関係なく魅力的に見える物なのでそうなのだろうと、私はすぐにそう思った。


 そうしていると、目の前ではシオンにリゼルがケーキを食べさせてもらっている。

 先ほどシオンのケーキが美味しそうでじっと見ていると、味見をしますかといって食べさせてもらっていた。

 二人は主従というよりは兄弟に見えるなと私が思っているとそこで、


「先ほどは失礼したね。でもドレスはよく似合っているようだ」

「あ、メノウさん。こんにちは」

「このまま連れて行ってもいいかな? 可愛いし……冗談ですよ」


 何故かメノウはクロウの方を見て、冗談だという。

 何でだろうと私が思っているとそこでメノウがクリームリートに、


「それでお約束の種を頂きたいのですが」

「ええ、そうだったわね。20粒で良かったかしら」


 そう言って、クリームリートが、傍にあったガラスの瓶を手に取る。

 中にはカットされたぺりドットの様な黄緑色の石が入っていて、


「えっと、1、2、3……19? 変ね、まだあったはずなのに……困ったわ」


 クリームリートがそう頬に手をあてて、そこで、クロウの頭に何かの紙が落ちてきたのだった。


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