魔王城の内部
やはり空飛ぶ乗り物を使うのは絶対に嫌だ、もう二度とこれには乗らない! と私は心に誓いながら、ふらふらと地面に降りた。
一緒に乗っていたリゼルはここの地面に降りても暫く私にしがみついたままだったので、とりあえず声をかけるとハッとしたように慌てて地面に降りて……へたり込んでしまった。
やはりあまりそういった空をとぶことに慣れていない(もちろん私もそう)りゼルはきつかったのだろうと思いつつとりあえず手を差し伸べると、それに捕まりフラフラとしながら立ち上がり、
「……まさかこんな速度で空を飛ぶなんて」
「そうだね。音速を超えていたらそういえば衝撃波があったなぁ、魔法の結界最高って途中から思っていました」
「そうなのか。だが、ここまで来てしまえば後は、戦って取り戻してしまえばいい。よし、行くぞ……って」
そこでガクンと膝をついてしまうリゼル。
どうやらこのまま突入はちょっとキツそうだし、私もまだ周りが少し揺れている気がしたので、
「とりあえずそこにある乗り物に腰掛けて、少し休んでから突入しようか。ここまでくれば後は中に入るだけだし」
「……そうだな」
「あ、お茶も持ってきたからそれを飲んで落ち着こうか」
といった話になったのだった。
さて、色の前に飛んできたイズミ達を見たクロウだが、ふらふらとしている様子に今にも助けに行きたい衝動にかられて、次にお茶をし始めたイズミ達に脱力していた。
「何をやっているんだ、あの二人」
「二人共大物かもしれませんね」
「それは大物と言っていいのか?」
「さあ、我々が信頼されている証かもしれませんよ? いきなり襲いかかったりしないと」
「シオンは襲う気があるのか?」
「そうですね、性的な意味でしたら」
ニコリと下ネタで返してきた彼を見てクロウは、全くその通りだと思ったのだった。
小さな休憩を挟んで私たちは、重そうな金属製の魔王の城の扉の前にいた。
見上げると不気味なほどに静かな城がそびえ立っている。
ここに本当にクロウはいるのだろうか?
「人の気配が全然しないけれどいるのかな? 留守だったらどうしよう」
「留守だったら今のうちに城を乗っ取ってしまえ」
「それだ! ……と言うかもしいたなら、よく来たな勇者よ~と言ったなにか声が聞こえたりするものなんじゃないのかな?」
「そうなのか? 戦略としてはいないふりして不意打ちした方がいいんじゃないのか?」
リゼルの当然のような疑問に私は今更ながらあれが、もしや魔王の城に魔王がいますよという説明だった事に気づいた。
何てことだ、ゲームの常識に捕らわれてしまっていたと、私は愕然とする。
と、そこで声がした。
「ヨクキタナユウシャヨ、イタイメニアイタクナケレバソッコクタチサレ」
「あ、クロウ、ここにいたんだ。今すぐ迎えに行くからね!」
私が嬉しくなって声を上げると、その説明? らしき声が一瞬沈黙してから、
「いいから早く帰れ」
「あー、この道具で帰るのきついから後でクロウを倒して皆で一緒に帰ろうと思うんだ。クロウなら、魔王で一瞬で転移とか出来るんだよね?」
「分かった、イズミ達だけもう一度メノウの屋敷に転送してやる」
「えー、そうしたらまた私この道具を作ってここに来ないといけないから嫌だ」
「……城のなかは危険な罠が一杯あるから、絶対に入るなよ。怪我をすると危ないし」
クロウがそんな事を私に言ってくる。
なんだ、私のことを凄く心配してくれているんだなと私は思いつつ、
「うーん、でもお城に入らないとクロウ達に会えないんだよね。よし、行くぞ……うーんんっ」
そこで私は入口の扉を押したがびくともしない。
少しも動く気配がない。
そこで後ろからリゼルが私に、
「イズミ、扉から離れろ」
私は慌てて横に飛び退くと、それからすぐに目の前の扉が爆発した。
振り向くとリゼルの手には以前作ってあげた魔導式バズーカが。
反動もない謎の魔法がかかったそれを見つつ私は、
「そうだね、押して開かないなら壊しちゃえばいいんだ」
「そうそう、さて、行くぞ」
そう促されて私たちはその扉をくぐったのだった。
魔王城の中は薄暗いが、窓からの光でそこそこ奥の方まで見えた。
ただ途中歩いて行くと、道が二つに分かれていたり階段があったりしたが、
「うう、クロウはあの迷子用の腕輪を外しちゃったみたい」
「あれがあれば、その光が通った時の障害物も、地図上に表してくれる優れものだったのにね」
「残念だね。そんなに居場所を知られたくないのかなクロウは……」
「イズミからまだ離れるべきとか対立したくないって思っているんじゃないのか? 後で説明すれば状況も変わるだろう」
「……うん」
私はリゼルにそう言われて頷く。
そこでまたも分かれ道にたどり着く。
「えっと、こっちからは何だか変な感じがして、あっちは何も感じない」
「よし、再びイズミの“勇者”としての勘を信じよう」
そんなこんなで何も感じない方の道を歩いて行く。
途中降りる所もあったけれど、さらに進んでいくも何もない。
こうまで何もないと逆に間違っている気がする、そう私が思っていると特に薄暗い広い場所に出て、そこには三つの扉とその直ぐ側に一輪ずつ、以前見たことのある“釣鐘の草”が生えている。
だが暗い中での輝きを見ると、
「これ、二つとも“赤釣鐘の草”だ」
私はそれを見つつ、その扉に近づくと変な感じがする。
先ほどの道ではなにもないところは何も感じなかったのだけれどと私は思って、あることに気づく。
「もしかして“赤釣鐘の草”が出来るには魔王としての力が必要なんじゃないのかな?」
「そうなのか? ……となると、魔王の力が殆ど無いからあの草が見つからないのは、その通りなのか?」
「それにだとしたら、少量とはいえ魔王の力は必要なんじゃないかな? “赤釣鐘の草”って有用な植物なんだよね?」
「確かに……それは私も考えたことがなかったな。なるほど」
頷きながらそこで私は更に、
「それに魔王の力を私は感じているのかも。変な感じがするところは、クロウの力で何かがしかけられているから避けられるのかも」
「それは異なる属性の力を感じると? 魔物のような?」
「……何となく違う気がする」
「だろう、魔物の気配なら私も分かるし、だとするとイズミが感じているのは違うものなんじゃないのか?」
「私には感じられる……勇者の力? それとも“空間転移適正”の影響かな? あ、でもこの花の色が違って見えるのは何だろう?」
私が考えていく。
それにリゼルが、
「勇者の血からその道具を使えるよう目覚めさす力だから関係ない。あるとしたら、“空間転移適正”だと思う」
「“空間転移適正”ってその世界に存在するための力だったよね。だからこの空間に存在する珍しい物、変質している物の見分けがつく、あるいは強調される、とか?」
「確かに、それなら魔王の力の影響という本来これまであまり存在しなかったものをイズミは感じているということになるんだ。イズミは変だ」
「何で私が変だってことになるんだ! ……うう、ここでそんな話をしていても仕方がないし大丈夫な道を進もうか」
「そうだな。そしてシオンを取りかえすんだ!」
というわけで普通の花の咲いているドアを進んでいくと、何事も無くそこを通りすぎて別の大きな部屋にたどり着く。
そこには、メノウとラティがいたのだった。
辿り着いたはいいのだけれど私たちは状況の把握に困っていた。
けれどいつまでも経っていてもしかたがないので私はその、顔を赤くしてしゃがんでプルプルしているラティと、その側には幸せそうなメノウがいるという訳のわからない状態の二人に聞くことにした。
「えっと、どうしてこうなったのでしょうか」
メノウは攫われたのではなかったのか、私はそう思うとメノウが顔を上げて、
「いやラティは魔王側になりそうだというのもあって私から離れようとしたらしいのだが、ついかっとなって私をさらってきたらしくて……それだけ私のことが好きだと気付かされたのだよ」
「そ、そうなのですか」
「なのでもう後は普通に甘やかせして可愛がればいいなと思って愛の言葉を囁くだけにしたのだ」
「……」
それはひょっとして言葉責め的な精神的な攻撃でラティを倒しているのではと思いはしたが……私は口にしなかった。
なんとなく二人共幸せそうだし。
リゼルの方を見るとリゼルは私に頷き、
「よし、そっとしておいて次にいこう」
「そうだね」
というわけでまた後で迎えに来ますとメノウに告げて私達は、次の部屋へと向かったのだった。
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