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私にとっては予想外の話

 幼い頃の出来事は遠い記憶の彼方で、おぼろげに像を結ぶのみであるけれど、時折酷く鮮明に覚えている事がある。

 彼との出会いもその一つだった。


「うう、暑いな。今年の夏は暑いってTVで言っていたけれど本当だったんだ」


 私、当時、六歳は土のむき出しの道を走りながら思った。

 夏休みなので、父方の実家に帰省しに来たのだ。

 周りは畑ばかりの何もない田舎町。


 都会のアスファルトも、照りつける日差しがとても暑く感じられていたけれど、ここの畑周辺も高いビルや遮蔽物がないのでそれはそれで暑い。

 結論としては、夏なのでどこに行っても暑い!

 それでも都会よりも空は広く、明るい。


 しかも時折涼しい風が吹いてくるのもとても良い。

 そう思いながら、ちょっとしたお小遣いと、先ほどの小さな商店(コンビニではない)で購入した二本のラムネを手に私は走っていた。

 今日はジューズを両手に持ち、二刀流にしてみようと思ったのだ。


 たまたま昨日TVで見た侍らしき人が、二刀流でやっていたので私もやることにしたのだ。

 後で思い返すと、それはそれでよかったのかもしれない。

 そして私はいつもの様に、私が見つけた秘密の場所に向かう。


 たまたま、地元では“神隠しの森”と呼ばれている場所を興味本位で訪れた時に、ちょうどいい小さな広い場所お見つけたのだ。

 上から光が降り注いでいるのに木々に隠れて周りからは見えなくて、そして虫もあまりいない。

 しかも涼しい風が吹き抜けるので居心地がいいのだ。


 そんなわけで私はいつもの様にそこに向かう。

 実は田舎のおばあちゃんたちの家にいると母に、ゲームばかりしていないでと怒られるのだ。

 一応宿題はやっているからいいじゃないかと思いつつ、私は携帯ゲーム機を持って逃げてきていた。


 というわけで、細い子供だから見つけられそうな道を歩いて行く。

 ここは幽霊を見かけたりするといった話もあったけれど、幽霊が出るのは夜だと私は思う。

 それにこんな明るい森に、出てくると思えないのだ。


 他にも理由があるとするなら、


「何となく居心地がいいんだよね」


 凄く安心するというか肌に合うというか、そんな場所。

 なのでついここに私は来てしまう。

 あまりここに来るなと前に祖父母に怒られたけれど、それでもここは私には魅力的な場所なのだ。


 そんなこんなで私はいつもの場所に向かっていたのだけれど、今日は先客がいた。

 それも私と同じくらいの年頃の子供で、ただ、髪の色が透き通る金髪に青い瞳で、変わった格好をしている少年だった。

 彼も私に気づいたらしく、


「あ、しまった、現地人と接触しちゃった」

「! もしや、宇宙人!」


 私は目撃してしまったので、帰ると黒服の男達メン・イン・ブラックに、目撃したことを話すなとか記憶を消されてしまったりするんだろうかと不安を思っていると、


「宇宙人じゃないよ。こう見えても私異世界の神様の卵なんだ」

「? そうなんだ」

「そうそう……たまたま近くにい世界があったからちょっと覗きに来ただけなんだ」

「ということは君は異世界人?」

「うん、そうなるね」

「わー、違う世界の人って本当にいるんだ、どんな世界なのかな?」

「それは色々かな。まだ作っている途中だし」

「そうなんだ、あ、折角だからお話しよう。ちょうどラムネも二本あるし」

「ラムネ?」

「ジュースだよ! あ、異世界の人には良くなかったりするのかな?」

「いや、この世界のおおまかな概念は感じることができるから大丈夫だと思う、大体の神様は、“空間転移適正”を持っているし」

「“空間転移適正”?」

「異世界での適応能力のことだよ。でもこの世界のこと、僕も興味があるかな」


 そういうので、よし、私も色々教えてあげよう、そう私は思って友達記念にラムネを渡す。

 そこで私は目の前の少年の名前を聞いてい無いのに気づいた。


「そういえば私、自己紹介がまだだったね。私の名前はイズミ。君は?」

「僕はクロウだよ。……でも現地人の場合は、“空間転移適正”があまりないから、個体識別名は、その存在を固定するのに大事なものだから、もし他の異世界人に聞かれても素直に答えては駄目だよ?」

「そ、そうなんだ」

「うん、相手を呼ぶのにも必要だし、“空間転移適正”が無いと呼ばれた先でその人物の力が体を保持するのに必要だから、それの力の対価として隷属を強いられる場合がある」

「隷属って、奴隷って事?」

「うん、それにイズミは可愛いから、変態に何をされるかわからないし」

「! う、うん、そうなんだ……というか可愛いってなんだ。私はもう六歳になったし、子ども扱いしないでよ! というか可愛いって言うならクロウだってどうなんだ!」

「僕よりもイズミが可愛いからいいんだ!」

「な、何だとぅ!」


 と言った不毛な言い合いを繰り返してから私たちは、ラムネを飲みつつ話をする。

 そしてクロウは私の持っていた携帯ゲーム機に興味を持ったらしく、私は色々説明する。

 しかもゲームに興味を持ったクロウに貸してみると、夢中になってしまう。


「よし、魔法でコピーしてみよう」

「魔法? そんなものが使えるんだ」

「使えないの?」

「うん、使えた試しがない。でも、これで二人でゲームが出来るかも」


 といったような感じでゲームを楽しんだ私達。

 それから田舎にいる間は毎日私はクロウに会いに行った。

 この頃はまだ気の合う友達、といった感じだった気がする。


 そして気づけばインターネットを通して(ネットは異界と繋ぎやすいらしい)会話をしたりしていた。

 やがて、色々なネットワーク上のゲームをしたりして、クロウとの時間が私の中でかけがえの無いものになっていく。

 そうしている内に私達は、恋に落ちていた。


 だけど異世界人同士というのもあって、私はクロウとの記憶を封じられて……別れさせられてしまったのだった。







 私はパチリと目を覚ますと、心配そうに覗きこむリゼルがいた。

 どうしたんだっけと私は思って思い出した。


「そうか、確かクロウが魔王になったんだっけ」

「うん、そして姉さんもそちら側にいってメノウを連れて行って、あと、シオンも行っちゃった」

「そうなんだ……うん、最悪の事態、になるのかな」

「たぶん、そう」


 うなだれているリゼルを見ながら私は上半身を起こす。

 ここはベッドの上だった。

 リゼルが連れて来てくれたのかもしれない。


 さて、それでこうなってくると、


「今後の予定だよね。まずは魔王城を目指して、全員取り戻しに行こう」

「……出来るかな」

「やるしか無いでしょう? バッドエンドは、私は好きじゃないしね」


 そうリゼルに答えるとリゼルは大きく目を見開いてから笑った。


「確かに私もバッドエンドは好きじゃないね。頑張る」

「うん。それに私も全部思い出したから」

「何を?」

「私、クロウとは幼馴染なんだ。それで恋人同士だったんだ」

「だった?」

「異世界人だから記憶を封じられて分かれさせられちゃって。色々思い出したよ、クロウが昔、たまに踊り出す果物があるけれどそれが当りであるらしい果物とか持ってきたこととか」

「ああ、あれ美味しいよね」

「……ここでは一般的だったんだ。でも思い出したので、そろそろ私も色々話を聞きたいかな」


 私がそう呟くとそこで、ふっとこの世界に転移する前にあったお爺さんが現れたのだった。








 久しぶりに会ったなと思いつつ、この人によって引き裂かれたんだよなと思い出した私は複雑だった。

 聞きたい事は沢山有るけれど、どうしようかと私が思っていると、


「その様子ではどうやら思い出してしまったようじゃな」

「はい、というか、別れさせたのに何で私をこの世界に召喚したのですか? クロウと敵対するかもしれない“勇者”にさせようとしたり、ちょっと酷すぎでは?」

「そうじゃな、そう言われても仕方がない。すまなかった」

「……謝罪を頂けたのでとりあえずは、話を聞きます。それから私も私なり、行動させて頂きます」


 はっきりとこちらの意思を告げる。

 つまり、貴方の敷いたレールである“勇者”になるかどうかは、話を聞いてから私が決めるという事だ。

 それにクロウの父は、


「構わない。わしの話を聞いてくれるだけでも満足だ」

「……時間が惜しいです。行動は早めに起こした方がいいと私は考えていますから」

「ふむ。まずはどれからか……記憶がどこまで戻っているかは、不明なので最初からわしは話すことにする。まず、初めの“サンプル”として召喚したという話は嘘だ」

「そうですね。確かあの時息子の話を聞き返したのですが答えなかったのは、私の記憶が戻るのが怖かったからですか?」

「いや、息子と再び再会して記憶を取り戻した方が、劇的な再会になるかと思ったので黙っておった」

「記憶が戻って欲しくなかったのでは?」


 苛立ったように聞き返してしまったのは、どうして今更、とか、それだったら初めから中を認めてくれてもいいじゃないか、という私の気持ちの問題があったからだ。

 だがそれに対してクロウの父は、


「君に、“空間転移適正”があるとわしは知らなかったのだ。しかもよくわしが君と初めて会ったと思っているあの場所に、クロウの保護無しで連れて来てもらっていたようだし」

「え?」

「……あそこに来ても大丈夫なのは、“空間転移適正”を持つ者がほとんどだからのう。わしはクロウの保護の力によって連れて来てもらっていたと思っていたのだが、お主自身の力でまさか存在を固定しているとは思わなんだ。そもそもクロウもそれを早く言えばいいのに……」


 怒ったようにブツブツと愚痴をこぼすクロウの父の話を聞きながら、私はあの空間に来た覚えもなければ、“空間転移適正”があるかどうかなんて話も記憶が無い。

 まだ思い出していない情報があるのだろうか?

 そう私が困惑していると、


「その様子ではその辺りは覚えていないようじゃな。もうほとんど思い出しているようじゃから全部解いてしまおう」

「……あ」


 そこで私はようやく全てを思い出した。

 確かに言われている通りで、クロウとそんな話をしていた。

 すると更にクロウの父は、


「あの君にとって不思議な空間は、この世界と君の世界の“狭間”にあたる。そこを通ってい世界に向かう通路でもあるのじゃが、そこで存在していられるのは“空間転移適正”があるもののみなのだ」

「それは、もしもそれがなかったならどうなるのですか?」

「誰かの庇護がなければ、存在すら消滅してしまう。そしてそれ故に、その庇護を求める相手に隷属を強いられてしまう。一時期わしら神々の間でも問題になって、今では禁止されてしまった力の一つじゃ。もしそれを破れば神々ではいられなくなり、わしらが“悪魔”と呼ぶ存在になってしまう」

「まさか、クロウは……」

「その危険もあるし、君に対しても負担になる。それにもしも何かのミスで力を供給しそこねれば消滅してしまう。そのような事故は昔幾つも聞いたのじゃ」


 まさかそんな事情があったなんて知らない私は真っ青になる。

 それでは別れさせようとするだろう。

 けれどこうして呼んだというのは、


「もしかして、クロウとの仲を認めていただけるのですか?」

「ふむ、能力があるからの。それにクロウも異世界人である君はその世界で幸せになるべきではと思いながらも諦めきれないようじゃったからの。だからあの息子クロウを魔王として据えて、勇者として来てもらい、“空間転移適正”持ちであり世界に貢献したという形で我々の仲間にすることで、恋人同士一緒にいられるようにしようと考えた……のだがのぅ」


 そこでクロウの父は深々とため息を付いてから、


「どうやら息子は魔王として、君と敵対するのも嫌であったらしくて、アンケートをとったり色々して無しということに強制的にしてしまったのだ。だが、役目のない神々は段々に力を失い最後は消滅する場合もあるので、とりあえずはクエストという形で、ちょうどいい願いがあったので彼らと一緒に旅をさせることにしたのだ」

「あの……もしかして魔王などの役目があると存在が強くなるのですか?」

「そうじゃな。わし等も認識されなければそこに存在するかを定義づけられないというのもあって、魔王はとても印象的だからのぅ、ちまちまクエストをやるよりはよほど存在を示せる」


 魔王は人類にとって脅威じゃからのう、とクロウの父は言うが。

 となるとクロウは私と敵対したくなくて魔王をやらなかったが、その魔王の役目をやるのがクロウにとっては命のようなものだということになる。

 それでも、私が呼ばれてもそんなことを話さずにクロウは、今のままでいいと言っていた。


「クロウの手助けを出来るなら私はしたい。でもクロウは魔王になるのを望んでいない。どうしようか」

「うむ、そのために、君の体をステータスが見えるようにしたりなど強化したのじゃ。つまり、勇者としての道具をすべて使わなくても戦えるように」

「? どういうことですか?」

「実は勇者の道具が目覚めるといともに、魔王の力も一つづつ開放され……否、クロウの力が変質していくのじゃが、全部開放しなければクロウ自身も魔王として不完全なままなのじゃ。そして強化された君の力でお互い十分それほど怪我などせずに、魔王であるクロウを倒せるようになる」

「……つまり、勇者の宝物が三つほどありますが、一つづつ開放していって三回ほど不完全な魔王であるクロウを倒せば……」

「一回完全な魔王を倒したものと同じになるという寸法じゃ。こうすれば、人類にそれほど危害が加えられることもなく、クロウの存在も神としていきれる寿命が増えるのだ」

「そうなのですか。まさかそんな仕組みだとは思っていませんでした」


 私に対しての残酷なしうちと悪く考えてしまいそうだったのだけれど、どうやらそういった事情もあったらしい。

 でも、私は、


「クロウの事を思い出したら私も、諦めるのは嫌だって思いました。でもクロウは私から離れたいのかな……」

「いや、未練がタラタラでなまけ者になるくらいじゃからの。ああ見えてこの世界に夢中で、あの敵を倒したら色々なものが手に入るシステムも、君の世界のゲームとやらを参考にしているらしいのう。それによく、君の手助けをしていたではないか」

「……確かに親切でした」

「それでも敵対したくなかったのか勇者関係には触れさせたくないようだったし、君の“無意識”もクロウに“魔王”に似た要素を感じ取っていたのか、武器では悪役のようなトゲ付き鉄球を選んでいたからのぅ。記憶がなくても、ラブラブじゃの」


 そう言われて私は顔を赤くするしかなかった。

 まさかこのような結果になるとはと私が思っていると、そこでリゼルが、


「では、これから勇者としての道具を一つ起動させて、魔王城に行くということですか?」

「ふむ、そうなるのぅ」

「では、ここに再び戻って魔王城に行くのは面倒ですね。一回で終わらせられないでしょうか」

『はーい、私にいい考えがあります』


 そこで今までの話を静観していたらしい幽霊のミリアがどこからともなく現れた。

 さすが幽霊、そう私が思っていると、


『イズミがそのペンダントに触れなければ、最終的に起動しないので、リゼルに後はイズミが触れればどうにかなる状態にして持って行ってもらいましょう。それにそれでクエストは完成ですし』

「そうじゃのう。それに……剣は最終的にクエストをクリアしないと、元に戻らないしのう」


 そこで私は、本当に最初から最後まで勇者として、魔王として不完全なまま戦うように仕向けられているのに気づいた。

 そもそもこのクエスト自体が、勇者の剣であるクーゲルシュトライバーをもとに戻すためのクエストなのだから。

 まるで約束されたハッピーエンドのようで、ちょっと私は脱力してしまった。

 

 そこでクロウの父はふうと息を吐き、


「さて、魔王が生まれたと皆に伝えねばのぅ」

「それは必要なのですか?」

「不完全とはいえ魔王が生まれたことにしておかなければ、認識してもらえないからのう。だが君が頑張ってくれるのだろう?」


 そう言われて私は大きく頷き、


「はい、そしてクロウが何かしなければならなくなる前に私が倒します。クロウのためですから! ……よし、じゃあリゼル、早速、道具を探しに行こう」

「うん。そうしたらまた皆で、シオンも含めてクエストの続きができるかな」

「出来るよ。だから頑張ろう!」


 私は、不安そうなリゼルにそう返したのだった。


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