ぷにぷにと悪戯をしてみる?
さて、そんなこんなで私は、ベッドに戻る事に。
私が今やっているクエスト自体が、本来の目的のものと実は異なっている。
そういえばクロウも、勇者として目覚めてしまうからとか何とか言っていたような。
私は異世界人のサンプルとして放り込まれたのではなかったのだろうか?
暗い屋敷の廊下を歩きながら私は、月明かりの届かない部屋の隅に闇が燻ぶるように、私の心の端がちりちりと嫌な予感に侵されていくのを感じる。
気のせい、だと思いたい。
けれど不安な要素ばかりが頭に浮かぶ。
「どうすればいいんだろう? どうしよう……こうなったらミリアのクエストは、しばらく保留にした方がいいのかな?」
クエストって一個でも失敗したら駄目なのだろうか?
クリアした量にってことにならないのだろうか?
「その辺りは後で、クロウに聞こう。一つくらいクエストをクリアしなくても大丈夫な要素があるかもしれないし」
希望的な観測を持ちつつ、私は早く寝てしまおうと思う。
そして明日は、ミリアにどう話そうか。
「勇者として目覚めると魔王が復活するかも、みたいな話をした方がいいのか……とりあえずしばらく待ってもらえないかを聞いてみよう」
私は一人呟き私達の部屋に向かう。
そして向かってというか戻ってきた私は気づいた。
今日は、クロウと一緒に寝ていた。
先ほど私とメノウの話をしていた時に起きていて私達の話をこっそり伺っていたらしい。
ただそれが本当の事なのかは私にはわからないけれど。
「でも、クロウが私のことを好きとか、どうして言うかな……」
初めは私がクロウを好きかどうか聞いてきたかと思ったら、クロウが私のことを好きで、気づいていないのは君だけと言われてしまった。
「そういうのは普通、気づいていないな、ニマニマと言って見守ってくれるものじゃないのかな?」
よくよく考えてみると、残酷な仕打ちを受けてしまった気がする。
メノウめが……同じような目に合わせてやるお!
そう心の中で誓って、ラティとの仲をどう進めてやろうかと暗く笑いながら算段を立てつつ私はベッドに向かった。
どうやらカーテンを、完全に閉めてはいなかったようだ。
そういえば、リゼルと寝る前に明日の予定をどうしようかという話をしていた。
捜索範囲をさらに広げようかといった話ではあるけれど。
「リゼル達にはどう説明しよう。……うん、寝て起きた後の自分に全部丸投げしよう」
未来の自分頑張れ、と問題を全て先送りにしてから、再び見なかったことにしたそれを見る。
クロウがベッドで眠っている。
カーテンの細い隙間から降り注ぐ月の光に、クロウのあどけない寝顔が浮き彫りにされている。
こうやって見ると本当に、すごい美形だなと思う。
でもなんで普段はそこまで感じないのだろうと私は考えて、
「うーん、私にちょっと意地悪だったり、あまりやる気が無い感じだからかな?」
きっともっとキリッ、としていた方が女の子にモテモテなのではないだろうか。
そう考えた私は、そのままでいいやと思った。
けれどもう一度クロウの顔を見ると、やはり綺麗だなと思う。
それを見ていて子供のような心が私の中に浮かんでくる。
流石に眠っているクロウのまぶたの所に、油性のマジックで目を書くなどといった暴挙はしない。
……気づかれそうだし。
なのでそっと近づき、ほほを人差し指でぷにぷにしてやる。
ぷにぷに。
やはり起きる様子がない。
メノウが、クロウが聞いていると告げたけれど、あれからそれほど時間が経っていないのだから起きているのならすぐに起きるはずである。
どうやら気のせいだったようだと私は思いながら、靴を脱いでいそいそと布団の中に潜り込んで……そこで腕を掴まれ、クロウに抱きしめられた。
「お、起きてたんだ」
「もちろん。あれだけ、ぷにぷにされればな。という訳で今日は俺専用抱枕になってもらおうか」
「え、ええ! というか、ふぇっ、むぅう」
ギュッと楽しそうなクロウに抱きしめられて私は、クロウの胸に顔を埋める形になり声が出せない。
しばらく抵抗するようにムームー私は呻いていたけれど、クロウの体温も心地よくて段々と眠くなってしまい、気づけば深い眠リへと誘われたのだった。
評価、ブックマークありがとうございます。評価、ブックマークは作者のやる気につながっております。気に入りましたら、よろしくお願いいたします。




