怠惰はアイデアの進歩!
こうして私達は街に向かっていったのだけれど、私たちは後どれくらいで街につくのだろうか。
ちょっとした疑問を持ったので私は聞いてみる。
「そういえば、街ってここからどれくらいなのかな」
「夕方までには着くだろう」
「そうなんだ……ところで今は何時なのかな?」
やけに日差しが朝の光のように柔らかい。
道も明るいのに誰も歩いておらず、森からは小鳥のさえずりがする。
嫌な予感がする、私はそう思ってクロウを見上げると、クロウはポケットから懐中時計を取り出し、
「八時半だな、朝の」
「……ちなみにこの世界の夕方は何時くらいなのでしょうか」
「今の時期だと、午後五時半くらいかな」
ちょっと待てと私は思った。
この世界の交通事情はどうなっているのかとも思う。
いや、もしかしたなら、
「途中から馬車、とか?」
私がある種の希望を持って聞いてみるとクロウが、
「そんなに歩きたくないのか? まあ、俺達が先ほど出た街と次の街の間は今、馬車協会がストライキを起こして後何日かは走らないらしいんだよな」
「ストライキ……異世界なのに、そんなものが……」
「それに賃上げ交渉が上手くいっていないから更に時間がかかりそうなんだ。というわけでお前が召喚されるからわざわざ歩いてここまで来たわけだ」
それを聞きながらそういえばと私は思って、
「クロウ達の前に、クロウのお父さんが私を飛ばしてくれたんじゃないの?」
「移動する目標物の直ぐ側に召喚したら、最悪怪我で済んだらいいことになるからな」
「? 怪我? ぶつかると?」
「召喚にはタイムラグがあるから、下手をおすると俺の腕がイズミの腕の中を貫通していた、ということに」
「がくがくぶるぶる」
「そんな召喚誤差をなくすために、そして魔力が周囲にたまっているところのほうが召喚にブレが起きにくいからあんな場所になっているんだ。人間の街は特に魔力を使うから魔力の値が低いことが多いから、自然とこんな人通りのない場所になる」
「そ、そうなんだ……」
実は結構怖い状態だったんだなと私は気づく。
もう少し色々と詳しくあの神様に聞いておかないとなと私は思った。
そこで先程の話に戻り、
「うう、夕方まで徒歩か。きついな、自動車とかないのかな」
「自動車って、液体で走るあれか」
「あれ、クロウ知っているの? そういえばゲームとかも知っていたし、私の世界に詳しいんだね」
「それは、まあ……それでその自動車か、イズミは運転できるのか?」
「うん、この前、免許を取ってきたばかりだよ!」
自信満々に告げるとクロウがどこか安堵したような表情で、
「よかった、ゲームで運転したことができるから運転できるよと言い出さなくて」
「それはギャグネタだと思われます。昔の」
「そうか……それで、作るのか?」
「え?」
「魔道具が作れるのだろう? それで自動車を……とは考えなかったのか?」
クロウに言われて私ははっとした。
確かにこの世界の物以外にも私の世界のものを、作れるように神様にしてもらったのだ。
つまり私は今、この時、
「この前とった車の免許の力を開放する時!」
「……それは自信を持って言うことなのか」
「だってこの前、とれたばかりなんだ! 取るの結構大変だったし。でもこんなことが出来るなら、ついていたかも! えっと、自動車っと……“炎の魔法石”“風の魔法石”“大地の魔法石”“ミノタロ石”らしいです。有りますか?」
「俺は持っていないな、魔法石以外は」
クロウが私に言う。
なので私はすぐにリゼルに、
「リゼル、自動車を作りたいから、材料頂戴!」
それにリゼルは珍しく困ったような顔になり、
「……その“じどうしゃ”がどういうものか私は分からないが、この武器も作ってもらったし、渡したいのは山々なんだけど……この前売ってしまった」
「え?」
「シオンは持っていたか?」
「私も全部売ってしまいましたね」
「ごめん、私達は力になれないかも」
そんなぁ、と私は絶望した。
そんな私にクロウが、
「また魔物と戦えば、それを落とすかもしれない。この前までこの道で倒した魔物から、“ミノタロ石”がそこそこ採れたから」
「本当! 早く魔物が出てこい、魔物出てこーい」
「そんなで出てくることはないから、先に進むぞ」
「うう……絶対そのうち自動車を作ってやるんだから!」
「歩いていればもしかしたなら魔物に当たるかもしれない、ほら、叫んでないでいくぞ」
クロウが私にそう言って、“自動車”に興味をもったリゼルに急かされて更に進むこと4時間。
休憩場所のようなお店のある近くまで来たところで私達はようやく、その“ミノタロ石”を手に入れたのだった。
休憩所で、バターと蜂蜜のパウンドケーキのようなものと、採れたてハーブのお茶を頂く。
空はどこまでも青い。
雲が真っ白で、綿菓子が浮かんでいるようでとても美味しそうだ。
ほのぼのとしながらケーキを頬張る。
甘い蜂蜜の香りがして、幸せだ。
ハーブティは井戸水で冷たく冷やしたものだと言っていた。
口にするとミントのようなさわやかな香りが私の口いっぱいに広がる。
そうやって私はぼんやりしていると、クロウに私は肩を叩かれた。
「さて、そろそろイズミには自動車を作ってもらおうか」
「あ……忘れてた」
「徒歩がいいならそれでもいいぞ? この時間なら夕方まで歩けば大丈夫だ」
「く、もう疲れたから嫌だ……だから文明の利器を使う!」
「それで材料のお礼は、イズミはどうやって俺に支払う?」
「え?」
「無料で渡すわけ無いだろう?」
「の、乗せて連れて行ってあげるから!」
そう告げるとクロウは、なるほどとつぶやき小さく笑った。
「折角だから、体でも要求しようと思ったのにな。残念だ」
「そ、そんなもの要求されてたまるか!」
「はは、冗談だ。それで材料はこれだな」
「うん、私の前においておいて。えっと車は……普通の自動車でいいかな?」
黒塗りの高級車というか外車でも良かったのかもと思いつつ国産車を選ぶ。
スマホ画面に映しだされたそのボタンを、ポチっと押す。
すると材料が以前のように溶け出してすぐに、
「明らかに材料よりも大きい気がするのだけれど……」
「深く考えると疲れるだけだぞ」
「一部この世界のシステムに加担した人が言う台詞じゃないと思う。……あれ?」
そこで私はスマホ画面に追加された項目に気づく。
それは制限時間と書かれており、一秒一秒減っており、恐らくは、
「この自動車が使えるのは、6時間らしい。あと、時間短縮は出来るみたいだね」
よく見ると下の方に、制限時間6時間、任意で短縮可と書かれている。
けれど夕方までなら、自動車の速度も考えて、6時間もあれば余裕だ。
そう思ったところで自動車が出来た。
そこでリゼルが、
「前の席になにかついている。見たい!」
「シオン、申し訳ありませんがリゼルと一緒に後ろの席に乗って、リゼルを抑えてくださいませんか?」
「はいはい、いつものことですので大丈夫です」
「おい、シオン、私は前の席に、ぁあああああああ」
そこで後ろの座席のドアを開いた私。
即座にシオンがリゼルを放り込む。
そして前の席にはクロウが乗り、私が運転席に乗り込み……シートベルトの付け方を教えてから、
「というわけで出発!」
そうして私達は次の街に、明るい内に辿り着いたのだった。
評価、ブックマークありがとうございます。評価、ブックマークは作者のやる気につながっております。気に入りましたら、よろしくお願いいたします。




