ハードルは下げておこう
さて、食事を楽しんだ私達は、二人っきりにするなと悲鳴を上げるラティと喜々として部屋に連れ込んで行くメノウを見送った。
ラティを部屋に連れ込む前にメノウが、宝物庫以外は見に行ってもいいよと言われていたので私達はそこそこ探させてもらう事にした。
まずは地下の食糧庫である。
何でも食べ損ねた昔の保存食やお酒等が奥の方に転がっているらしい。
それこそ、幽霊のミリアが住んでいた頃の物もあるらしい。
どうしてそれが分かったかというと、以前古いワインがたまたま見つかり、それがミリアが住んでいた頃と一致するからだそうだ。
そんなわけで私達は多分こっちかなといったように移動をしていくとそこでリゼルが、私にこんな事を言ってきた。
「イズミって、意外に鈍感なんだね」
「! ど、鈍感てなんだ!」
「うん、やっぱり気付いていなかったんだ」
リゼルが楽しそうに笑う。
それはそれで私としては、あまりいい気持ちがしない。
なので不機嫌さを示すために私は頬を膨らませながら、真剣に考える。
一体何が鈍感なのか。
私の常識からして何か違和感がないだろうか。
……そうか!
「リゼルのお姉さんのラティと、メノウは恋人同士だ! それを素直に受け入れるのがおかしいってことなんだ!」
「……うん、そうか」
リゼルが微妙な反応をする。
と、そこで私は珍しくしオンに話しかけられた。
「先ほどはありがとうございます。ラティ様には、私は嫌われていますからね」
「リゼルが大好きみたいだから、取られてしまうと焦るのかな?」
「……そうかもしれませんね」
シオンがそう意味深に笑う。
こう含みのある様な言動をされると気になってしまうなと私が思っているとそこで、地下の食糧庫に私達は付いたのだった。
地下の食糧庫の中には魔法で明かりがともされていた。
なので中を探っていくのはそれほど大変ではない……わけではなかった。
私は左右を見回して、
「ひ、広すぎる」
ワイン棚やら木箱やらが大量に積まれている。
入口近くは新鮮な野菜などが箱で置かれているけれど、少し奥の方はもう少し保存性のいい物や魔法で作られた冷蔵庫らしきものも見受けられる。
けれどその更に奥の方は、無造作に色々な物が積まれているのがその先にちらりと見える。
それを見ていたクロウが提案した。
「よし、二手に分かれるか」
「そうだね。ミリアはどっちについていく?」
『じゃあ、イズミ達の方についていくわ』
との事で私達は二手に分かれた。
何かあったら声をかけようという話しになり、そこで私は、
「行き違いになったりしないかな」
「大丈夫だ、イズミ。その勇者の様なコスプレの恰好は見つけやすいからな」
「……クロウ、どうしてそんな変な格好を私にさせるの?」
「いや……勇者姿もいいなと俺が思ったからだ」
どうやら面白がって私にこんな格好をさせたらしい。
酷スと私は心の中で思いつつも、今私がこれまで来ていた服は洗濯中なので、その内、クロウには魔王のコスプレをさせてやる、そう決意したのだった。
そんなこんなで私達は奥を目指す。
まず出来るだけ奥の方の壁際の箱を見た方が良いんじゃないか、というわけで奥の方にやってきた私達。
だが、当然だといえば当然だけれど。
「凄く埃が沢山……またシャワーを浴びないと……ん?」
そこで私はある事に気付いた。
すでに埃が私の服には少しついているというのに、クロウは少しも汚れていない。まさか、
「クロウ、魔法で服を綺麗にしているな!?」
「ふ、ばれたか」
「わ、私にもかけてくれてもいいじゃないか!」
「あー、忘れていたな。でももう汚れているな」
「確かにもう汚れている……というか綺麗にしてよ今すぐ」
「分かった。でもあとでまとめてでいいだろう。どうせ今綺麗にしてもすぐ汚れる」
「うん」
というわけで後で綺麗にしてもらう約束を私は取り付けた。
そして私には気になっていた、埃が積もった箱に手を伸ばす。
クロウにも手伝ってもらってそれを開けると、
「……石みたいなものが一杯入っている。これってこの世界の食べ物?」
「いや、ただの石だな。食べられない」
「何でそんな物がここにあるんだろう」
「それもそうだがこの宝箱には、“見た人がそこにある物を避けてしまう”魔法が掛けられているな」
「え? もしかして私、それにかかっていなかった?」
「この前の花の件といい、イズミには妙な効果があるようだな。“勇者”としての特性か?」
「そうなのかな? でもそういった魔法がかけられているなら、期待をお聞くしてもいいよね?」
そんな人目を避ける物があるとしたら、きっと重要な物だと私は思ったけれどそれにクロウは少し黙ってから、
「いや、がっかりしたくないなら期待は下げておいた方が無難だろう。食糧庫だし」
「……それもそうだね」
クロウの言葉に私は頷き、その箱を私は探り始めたのだった。
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