本来の予定はこちらです
クロウの、これからどうするという言葉に私は首をかしげる。
「これからって、クリームリートさんのお屋敷に戻るんだけれど」
「その後だ。ここに残っていればその内次のクエストが降ってくるかもしれないが、なかなかそんな困った事態にはならないと思う。つまり」
「つまり?」
「短期間でクエストがこなせなくなる。クエストがないからな」
「なるほど……でも次は何処に行く? 次はどこどこの場所に行くのがクエストだ~、みたいなのは無いのかな」
「ないな。イズミが来るから迎えに行くついでに移動したり、クエストのついでに移動したりするのが主だったからな」
それを聞きながらなるほどと思う。
だが私が思った所で、
「私はこの世界の事をよく知らないから聞かれても分からないかも」
「そうだな、イズミに聞いても仕方がないな……リゼル、シオンはどう思う?」
すぐにリゼルとシオンに聞くクロウ。
何となく仲間はずれ感がしてしまったけれど仕方がない。
私はこの世界に来てそんなに立っていないのだから。
そこでリゼルが、
「場所移動なら、メノウと一緒に移動するのはどうだろう? メノウの家に転がり込むのも宿代がかさまなくていい」
「駄目です」
珍しくリゼルの言葉をシオンが断定的に否定した。
シオンは何処か怒っているようだ。
何でだろうと私が思っていると、
「突然リゼルを攫ってい追ったのは許せませんね。私をからかうといっても気に入りません」
「いや、あれ、メノウなりの冗談だし。そもそも姉さんがメノウは好きなんだし私には来ないと思う」
「……その姉と似ているリゼルが、それを言いますか?」
そう怒ったようにシオンが告げるとそこで、
「……何故俺の頭にまた落ちてくる」
呻くように呟いたクロウが、落ちてきた紙を拾う。
私も背伸びして覗きこむと、
「メノウと一緒に、メノウの恋をかなえましょう、だそうです」
私の読みあげた言葉に、シオンは沈黙してから、
「なるほど。リゼルに手出しされるのは気に入らないですから早くあちらの方の処理をしてしまいましょう」
「処理って……シオン」
リゼルがちょっと引いたように呟くけれど、シオンは何も答えず何かを考えているようだ。
私は不安に思ってクロウにこっそり、
「シオン、大丈夫かな」
「大丈夫だろう、やる気になっているし。……もともと俺が、魔王になった時に宰相をやるはずの人間だから、いい案でも考えてくれるんじゃないのか?」
「そ、そうなんだ。……でもそうなってくるとリゼルは私の仲間になる予定?」
「あ……うん。そうだな、そうだ……」
微妙に歯切れの悪い返答を寄こすクロウ。
確かにこの仲の良さを見るとこれを引き離すのは、引き裂くのは酷に思える。
でも今はそうじゃない。
「そうならなくて良かったね」
「そうだな」
私の言葉にクロウは頷き私の頭を撫ぜる。
私はむかっとした。
「私より身長が高いからって頭を撫でないでよ、子ども扱いされているみたいで何だか嫌、うがっ」
「そうかそうか、もっと強く撫ぜてやろう」
「うがぁ」
といったように私がクロウと話しているとそこでシオンが、
「分かりました。メノウとの話は私にさせて下さい」
そう、シオンが言ったのだった。
屋敷に戻って早速、シオンはメノウに話をする。
「ふむ、なるほど。クエストで手伝ってもらえるのか」
「ええ、つきましては我々をメノウ様の屋敷に滞在させて頂ければと」
「それは構わない。でないとこの計画は上手くいかないからな。それでリゼル、本当に協力してくれるのか?」
それにリゼルが頷く。
メノウは少し考えてから、
「しかも連れてくれば、何か困った事が出来るとクエストと称して、無料でリゼルをこき使えるという事か」
「ひ、酷い……」
「家宝の剣のために頑張りたまえ」
悔しそうに涙目になっているリゼル。
一方、メノウは勝利を確信したように笑う。
そこで、頼んでおいた例の物が私達の部屋に運ばれてきた。
何やら歯車などの複雑な物が組み合わされた物と、透明な水晶玉の様な物が木箱に入っている。
これはこの世界の“電話”の様な物らしい。
そこにメノウとリゼルが近づき、傍でそれを操作している執事らしき人に、リゼルの屋敷に繋ぐよう伝える。と、
「……いったい誰からだ? え、リゼル?」
そんなリゼルと同じような声がしてそこで、リゼルとメノウは顔を見合わせて頷き、
「タスケテー、ネイサン。メノウノヤシキニサラワレルヨー」
『リ、リゼル、どうした!?』
「ハハハハ、お前の妹は我が手中にある。返してほしければ私の屋敷に来るのだな!」
「お、おのれ……」
「ネイサン、タスケテー」
『! リゼル、分かった、お姉ちゃんはすぐに行きます!』
こうして通信が途絶えた。
それから真顔になったリゼルが、
「チョロいですね。まさかここまで姉さんが簡単に引っ掛かるとは……」
「本当にね。こんな簡単ならもっと早くにリゼルに協力してもらえば良かった」
深々と嘆息するメノウ。
けれどうまく事が運んだ事は確かだった。
なにはともあれこうして私達は、メノウの恋のお手伝いをすることとなってしまったのだった。
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