強力な魔物を瞬殺しました
リゼルの背後に現れた黒い影。
私の身長の二倍近くの大きさの黒い塊に赤い瞳が爛々と4つ輝いている。
はっとしたようにリゼルが振りかえろうとした所を、すぐさま走ってリゼルを抱えるようにしてシオンはその場から離れる。
それと同時だった。
ザッ
黒い影から現れた細長い棒のような物がリゼルのいた場所に振り下ろされる。
大きな亀裂がその場所に走った。
「ちょ、え、何あれ!」
「珍しいな、こんな場所に“黒い影”がいたのか」
クロウがそれほど焦ることもなくそう言い出した。
それを聞きながら私は、
「強い部類の魔物?」
「そうだな。普通は遭遇したら瞬殺されるよな、背後を取られたわけだし」
「シオン、反応がすごいよね」
「シオンは手練だからな。リゼルの従者をやっているのがおかしいくらいの」
「おい、そこ、聞こえているんだからな!」
クロウのさりげない悪口は全部リゼルに聞こえていたらしい。
そして今言われたその言葉がリゼルの心をえぐったのか、私が以前あげた“魔導式バズーカ”を手にして、
「シオン無しでも私だって出来るんだからぁああああ」
といって引き金を引いた。
大きな音が発されて弾が発射されて、その黒い魔物に当たる。
大きな悲鳴を上げて魔物が消滅した。
「……強い魔物?」
「イズミが作ったあの武器が強力すぎたのだろう。気づいていなかったのか? というか、通常のものよりも強化されている気がするな」
クロウがのほほんとそんな話をしてきてえっと私は思う。
なんで武器を強化しているんだろう……そう私が思っているとリゼルが、
「どうだシオン、私だってシオンがいなくても大丈夫だよな!」
「攻撃されそうな所で振り返ろうとしたのは誰でしたか?」
「う、いや、でも私だって……」
「では、私はもう必要が無いと」
「え?」
リゼルが不安そうにシオンを見上げた。
それに苦笑しながらリゼルの頭をシオンが撫ぜる。
リゼルが嬉しそうに笑っている。
リゼルは本当にシオンが好きなんだなと思っているとそこでクロウが、
「そういえばイズミ。そのトゲ付き鉄球を使ってみる気はないか?」
「え? 別にいいよ。わざわざ戦う気はないし。振りかかる火の粉は振り払うけれど」
「そうかそうか。それで……背後を取られているぞ」
それを聞いた私は、背筋がゾワッとして、恐慌状態に陥り……振り返ろうとすると同時に涙目でトゲ付き鉄球を打ち付けた。
同時に気づけば私の背後に音もなく“黒い影”が現れていたが、私のトゲ付き鉄球が一発あたりだけで消滅する。
しかも倒したら、何かがパラパラと降ってくる。
見るとここにあるものよりもピンク色の花だ。
「ああ、“赤釣鐘の草”じゃないか、イズミは運がいいな」
「確かにこれの方がピンク色が濃く見えるかも」
「そうなのか? どうしてここにあるものが青白く見えないのかが分からないが、運がいいな、欲しいものがこんなに手に入ったようだし」
「うん……って、クロウ、後ろ!」
そこで、黒い塊がクロウの背後に現れる。
私は焦ってトゲ付き鉄球を構えるけれど……クロウの背後にいたそれは、悲鳴も上げず崩れ落ちる。
そしてアイテムらしき、小麦粉のようなものがあとに残った。
でも、私には今、クロウが何をしたのかが分からない。と、
「イズミ、俺の心配をするより自分の心配をした方がいいぞ?」
「う……で、でも危険だと思ったら心配はするよ」
「そういう所はイズミの可愛い所だな」
「か、可愛いって、そこじゃなくて、全く普通に心配しただけなのに」
私の好意にそう返すのは、酷い気がする。
だがクロウは笑うだけでそれ以上言わない。
そうしている内にリゼル達が近づいてきて、
「目的のものが手に入ったから移動しよう。こんなにも危険な“黒い影”が二体も出てくるなんてなにかおかしい。夜行性の危険な魔物だから、明日にでもここ周辺を調査しておいたほうがいいかも」
「そうなんだ……そうだね、早く戻ろう」
そして私達はアイテムを手に入れて、メノウのいる馬車へと急いで引き返したのだった。
戻ってクリームリート達に話すと、
「では明るい内に調査をしましょう」
といった話になった。
そして手に入れたばかりのその“赤釣鐘の草”は、屋敷内にある植木鉢に植えられた。
これから少し待つと花が散って種が取れるらしい。
丁度一つだけ種が付いているのがあるからと、私はそれを見せてもらった。
緑色の蔓に、月の白い光に輝く黄緑色の宝石のような種。
実は種になる時期はそれぞればらばらで早いものは植えてからすぐに手に入るらしい。
その種を手に入れて、メノウはご機嫌だった。
また、まだ彼もしばらく滞在するらしい。
「強力な魔物が多く出る原因は私も知っておきたいのでね」
とのことらしい。
三体もあの場に、“黒い影”が現れるのは“異常”だそうだ。
そこで、先ほどのクエストをクリアして残り97個だと話していたクロウの頭に再び何か紙が落ちてくる。
「く、どうして俺の頭に落とすんだ、あのジジイ」
恨めしそうにクロウが呟いている。
そしてその紙をクロウが開き、やっぱりなという嫌そうな顔をして、
「次のクエストは、魔物の現れた原因を探れ、だそうだ」
嫌そうにクロウが告げたのだった。
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