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冬3
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「ユカリさんお疲れ様です。」
「なっちゃんお疲れー!」
今日で仕事納め。年末の忙しい残業の日々が終わる。
「あ、そういえばさぁ、明日スズ達と飲むんだけどなっちゃんも来るー?」
「明日…」
「29日!年末帰んないて言ってたし、スズ明後日までこっちいるって」
「29…」
ほんの一瞬返事を迷っていると、ユカリさんに気付かれてしまった。
「あれ、帰るの?」
「いや、まだ決めてな」
「帰ろうか迷ってるんだー?それは帰った方がいいよ、帰んな帰んな」
ユカリさんは飛び抜けて営業成績が良いけれど、それは多分人のことをよく見ているからだと思う。
「帰った方がいいのかな…」
小さく呟くと、ユカリさんは美人スマイルでうんと大きく頷いた。
なんとなく、明日が来るのが怖い。
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次の日。
目が覚めると12時を過ぎていた。
「寝過ぎたな…」
適当に家事を終わらせて、部屋だけいつもより念入りに掃除した。
いつものカバンに充電器ごとケータイを入れて、くたびれたスエットを紙袋につめて家を出た。
実家に長居するつもりはない。自分の部屋は思い出がありすぎて近寄りがたいから。