冬2
家に着いてコートを床に脱ぎ捨て、そのままソファにうつ伏せに横になった。今日は何だか、すごく疲れた。しばらく残業が続いていたせいかな。このまま寝てしまいたい。明日休みだし、いっか。
そのままソファで寝ていたら、夜中に寒くて目が覚めてしまった。
「なんか食べよ…」
ソファの下の転がっているカバンから、飲みかけのペットボトルのお茶を出すと、スマホの通知ランプが光っていた。
珍しい。
不在着信が2件。高校の同級生だったマイからだった。
メッセージが来ている。
『なっち電話でてー!!』
『おーい!!』
『もーしょーがない!
あのね、ハルくん結婚したんだって!』
『なっち仲良かったじゃんか、ハルくん結婚したことみんな知らなかったからさぁ』
『なっち知ってたのかと思ったらハルくん言ってないって言うし!びっくりして電話しちゃったよ!』
、、、ハルが結婚した?
時間はギリギリ日付が変わる前。少しためらったけれどマイに電話をかけた。
「もしもし?」
「あーもしもしなっち?超ー久しぶり!元気にしてたー?」
「あ、うん元気。夜中にごめん」
「いやいーよいーよ全然起きてたから!てかハルくんのことメッセ送ったの見たぁ?」
「見た」
「やばくなーい?まーじびっくりしちゃってぇ、今日本当たまたま駅でばったり会ったんだけどさぁ」
「うん」
「妊婦さんと歩いてて、あれー?って思って、そしたら半年前に結婚したってー!
デキ婚てやつー?」
「半年前…」
「いやーもー本当びっくり!式とかも挙げてなくて特に周りにも言ってなかったみたい。
でもー、なっちにも言ってないって言うからびっくりしちゃって」
「うん」
ハルとはずっと会ってないし、連絡もとってない。
「なんでー?ってきいたら黙っちゃうし、どーしちゃったのよあんた達」
「あー、うん」
「アキちゃんのことがあったし気持ちはわかるけどさぁ」
私の気持ちがマイにわかるわけない。
「年末帰ってきて顔出しなよー!」
「うん」
「29日忘年会やるから!ハルくんも誘ったから!
たまには帰っておいで!」
「うん」
「またメッセするからーじゃあねーおやすみー」
「うん、おやすみ」
電話を切ったスマホには、日付が変わって28日の0時と映し出されていた。
結婚、かぁ。
ハルが、結婚、か。
いつかこんな日が来るとは思ってたけど。そんな日はずっと来ないとも思っていた。