冬
親友が死んだのは、17歳の時だった。
死んでしまった親友のアキと、その彼氏のハルも私の親友で
ずっと三人一緒だろうと漠然と思っていたものは、突然なくなった。
喪失感で死ぬんじゃないかと思ったけれど、ただただ月日は流れていって
私たちは、アキを置いて大人になった。
25歳。冬。
実家から通える名の知れた大学はいくつもあったけれど、
そこにいられなくて、離れた大学を選んで一人暮らしを始めた。
そのままそこで就職して、3年。実家に帰ったのはアキの七回忌の時くらい。
友達は特につくらず、いつも一人でいた。
「なっちゃん年末休み実家帰るのー?」
更衣室で脱いだ制服をハンガーにかけていると、隣のロッカーのユカリさんはもう着替え終わってヒマそうに髪を直していた。
「いや、帰らないです。」
「帰んないんだ?去年も帰ってないよね?」
「そうですね、ここ何年か帰ってないです。」
四個上のユカリさんは美人で仕事ができて、人当たりも良い。
「そーなんだ?
てか、この前の結婚式連絡先きかれてたじゃん、あのかっこいい人どーなった?」
「ああ、スズさんの時の?返事してないです。」
ユカリさんの一個下のスズさんは、ユカリさんより一足早く寿退社した。
正直スズさんよりユカリさんの方が美人だけど、ユカリさんはしばらく彼氏がいないらしい。
世の男共は何をしているのだろう。
「もったいなーい!」
「スズさんの知り合いなんて、適当なことできないじゃないですか。」
「真面目に付き合えばいいのに!」
「無理ですよ、無理無理。」
アキが死んだ後、ハルと少しだけ付き合ったことがある。
私はアキの代わりになろうとして、ハルはアキの代わりにしようとして。
予想がつきそうなものだけれど、そんな風な気持ちで上手くいくはずもなくすぐに別れた。
「付き合うから寂しくなるんですよ。」
「んん?それはなっちゃん、今まであまり良い恋をしてきてないね?」
「どうだろう、そもそも恋愛ってしたことないかも」
「ちょっとぉ、可愛いのにもったいない!」
「はは、その言葉そっくりユカリさんに返しますよ」
大事な人を失うのは
「もーう、男紹介しようか?」
「適当にしていい相手だったら。じゃあ、お疲れさまです。お先に失礼します」
もう二度とごめんだ。
「お疲れー」
アキ以外の友達が欲しいと思ったことはない。
アキがいい。