Act.4 二人の夕方
鑑定、発動!!
《鑑定が発動されました。鑑定中...鑑定完了。データ詳細表示。》
お、またナレーターさんだ。もしかしてこれって鑑定する度に出てきちゃうぱてぃーん?
《魔法使用時の簡略化を実行しますか? Yar/Nein》
なんか狙ったように出てきたし。まぁYarの方を押しとくか。あれ一々言われるのも面倒だし。
《この変更は、再度変更可能です。変更時は再度簡略化と発音すれば変更が可能です。》
そ、そうですか。ご丁寧にどうも。さぁ、そして鑑定結果はどんな感じだ?
名称:カルド レベル:32 クラス:両手剣士
種族:人間・アラン族 精神状態:平常
年齢:23歳 使用武器:シニ―スタールソード
HP:318/318 MP:89/89 SP:108
天命値:231 筋力値:204 敏捷値:121
知識値:137 魔力値:39 カリスマ値:285
幸運値:119
スキル
両手剣術:Lv.4 投擲術:Lv.2 注意転換:Lv.5 指揮:Lv.4 危険察知:Lv.3 流撃術:Lv.2 火魔法:Lv.2 索敵:Lv.2 瞬間回避:Lv.3 反撃:Lv.3
エクストラスキル
雪操作
着用防具
シニ―スタールの防具(兜、鎧、籠手、脚甲)、剛力の指輪、氷雪鹿の外套
強い...の?はてさて転生してから初めての鑑定だからどれが強くてどれが弱いのかさっぱりだな。
すると、
〔まぁまぁですね...ランクEの上ぐらいかな...〕
『見えるのか?』
〔はい。たぶん兄者のスキル「共有」のおかげかと〕
なるほど。あのスキル「共有」っていうのはどうもスキルを使用したときに、装備者にも効果があるみたいだな。
『どうする?』
〔まずは話を聞いてみましょうか。害意は無さそうですし〕
『そうするか』
結構見た目はナイスガイだな。さっぱりした黒のショートヘアーで結構女子からモテそうだ。身長は180ぐらいだろうか。鑑定がなかったら格下だとは思えなかっただろうな。
「何の用?」
「ああ、すいません。驚かせてしまったようで。僕はランクE冒険者カルドです。パーティー、「雪国の守護者」でリーダーをしています」
「私はヒナカ。ランクD冒険者。武器は軽弩弓。用件は?」
日向夏って結構知らない人物に対しては素っ気無い口調になるのね。まぁ、女の子だから舐められないようにしてるのかな?
「はい。実は今、ダンジョンからの帰還途中で、魔獣に襲われないように小さいパーティーや、ソロの冒険者さん達に、一時的にパーティーに入ってもらえないかお願いをしているんです」
「私にパーティーに入ってもらいたいと?」
腰に手を当て、少し不満気味に問いかける。
「ええ、その通りです。お願いできませんか?」
「報酬は?」
青年がポケットの中からチャリチャリと音を立てる巾着らしきものを取り出し、こちらに見せる。
「形式上は町までの護衛となっていますので、銀貨5枚ほどでどうでしょうか?もちろん魔獣を斃した分だけ報酬は上乗せさせて頂きます」
金銭価値が分らないとここの当たり全く交渉のしようがないな。急ぎで学ばねば。
「ギルドの許可は?」
「その点についても大丈夫です。正式な依頼として承認されています。これを」
カルドが取り出したのは何かの羊皮紙だ。たぶん書類か証拠といったところだろうか。
「...わかった。依頼を受ける。ただし、私、使用武器が軽弩弓だからこの森の中だと乱戦の中支援、っていうのは難しいから遊撃っていうポジションでお願い」
日向夏が自分の得物を背中から取り出し、青年に見せる。
「承知いたしました。パーティーメンバーの皆さんにも伝えておきます。では、パーティー野営地はこちらです」
そういって案内されたのは綺麗な滝壺の近くにある野営地だった。テントの数は...4人入りの中型テントが20程だろうか。なかなか多いな。
「着きました。ここが我々のパーティー、「雪国の守護者」の野営地です。ヒナカさんはあちらのテントに割り振られています。こちらはここら周辺の簡易的な地図になっています。出発は明後日となっていますのでごゆっくりどうぞ」
「ありがと」
「それでは」
ぺこり、と一礼しカルドがテントの向こうに消えていった。さて、この後はゆっくり休ませてもらおうかな?もう陽も落ちてるし。
『さて、テントに向かうか』
「そうしましょう。私、もうそろそろ疲労で倒れそうです...」
全身から疲れたオーラを出す日向夏は年相応の可愛らしさを持っている。
『おつかれ。今日はゆっくり休むか』
ねぎらいの言葉をかけた後、5分ほど歩いただろうか。テントについた。少し珍しい形のテントだな。なんか向こうにあったモンゴルの遊牧民が使ってるっていうゲルみたいな形をしている。さて、入るか...と思った次の瞬間、
〔あ、あのぉ...兄者?〕
『どうした?』
なぜかおずおずと俺に話しかけてくる。
〔あの...その...入り口を...〕
『?』
入り口を見る。Oh...ソウイウコトネ...まさかの女性専用って感じの絵がついた張り紙が、入り口にその存在感を顕にしている。。本来は男冒険者が悪さをしないように張り付けてあるんだろうけどな...どうしよう。
いや、俺よ、こう考えるんだ。俺はもはや人外の存在へと昇華したのだから性別など関係のないことだと...どうだろう、これで俺も桃源郷へれっつごーできるハ...
〔兄者、だぁ↑め↓〕
ですよねー。まぁ人外の存在でも中身は男ですしねー?仕方がない。大人しく鞄か何かの中に入っとくか。そうしよう。欲望は否定しないが。
〔わかりました。じゃあ、兄者はこれに入っててください〕
そういって日向夏が取り出したのは革製のポーチだった。俺が外され、ポーチの中に入れられる―――はずだった。
「あれ?外れない...?」
え?うそぉ?これは、まさか、まさか、神のお導きかぁッ―――!?
「あ、外れた」
そんなことなかったね。はい。大人しくポーチの中入ってまーす。そんな訳で俺は周りが一切見えないまま残りの日を過ごすことになったのだった。
*
はぁー、疲れた。今日はいろいろなことが...ありすぎたなぁ...パーティーの壊滅。兄者との出会い。今日ほど記憶に残る一日は今までなかった。この後どうするかなんて何にも考えてない。
~~~ッ!もぅっ!!疲れて何も考えれやしない。
仕方がない、少しここら辺を歩いて回ろうかな。お風呂とかも探したいし。
そう、お風呂!!もう、かれこれダンジョンに入ってから一週間以上経つっていうのに一回もお風呂に入っていなかった。まずはお風呂だ。
兄者は...一応持っていこう。兄者を手首に嵌め、指輪らしきものを中指につける。
〔兄者?〕
『ん?どした?』
優しく、それでいてどこか読めない声が頭の中に響いてくる。
〔今からここら辺を少し散策したいんですけど一緒に行きますか?〕
『おう。どうせ俺も少しうたた寝してたし、暇だから行くか』
兄者って寝るんだ...素朴な疑問を抱きつつテントを出る。
「地図、地図っと」
ふぅーん。ここの野営地は滝壺に沿って建てられているんだ。地図はパーティーの詳細が書いてある紙と一緒くたになって綴られていた。
「あら、女の子じゃなぁい!」
「?」
誰このブロンド超美人さん。けど、足の運び方でわかる。かなりの実力者だ。私なんか遠く及びもつかないぐらいの人だ。
「なんですか?」
「あらぁ、その素っ気無い態度もス、テ、キ!!」
正直言ってあんまり関わりたくないタイプの人だ。けど、そこまで敵意も感じない。誰だろう?
「...ご用件のほどは?」
「あらぁ、驚かせちゃってたりしてたらごめんなさいねぇ?用件はねぇ、一緒にここの周りをお散歩しなぁい?」
「...メリットは?」
ブロンド美人さんの眉が少し吊り上がる。一瞬の間を置き、
「お友達になれるかなぁ、っていうところかな?」
はぁ、仕方がない。けど、かなりの実力者だろう。何かしら益のある会話ができるかもしれない。たまたましようとしていたことも一緒。行こうかな。