Act.16 日向夏の家
お久しぶりです。今回はちょっと長めです。
「そのもしかして、だぜ。おいらも最初は目を疑ったんだけどさ、鑑定したらまさかの魔鉱石、しかもランクが一番高いヴァイサイトの特異型だったんだよ」
うん?何か聞き慣れない単語が出てきたぞ?
「えっ...っては!?ヴァイサイトの特異型!?何でそんなものが!?」
「いやー、まあなんか出てきたんだよね、これが」
日向夏の驚き様からしてかなり珍しい物なんだろう。それにしてもケモ耳っ娘はマイペースだねホント...
「...本当にいいの?」
「応ともよ。女に二言はないぜ?」
「...ありがと」
「おーおーかわいいこって。ヒナ、これからヒマ?」
「え?あ、うん、大丈夫だよ」
「よーしじゃあヒナん家でなー」
「...はいはい。あ、それとセイ、少し試したい型があるから南刻より後に来てね」
「ほいさ」
ケモ耳っ娘はそう言い残し、演習場を出ていく。すると、今度は黒髪お姉さんから話し掛けられる。
「久し振り、ヒナカ。調子はどうだい?」
「あ、ティアさん。お久しぶりです」
こちらも仲は良さそうだね。艶のある黒髪を動きやすいように後ろで纏め、実力者オーラをこれでもかと言うほど振り撒いているね。
『この人は?』
〔知り合いのティアさんです。元ランクS冒険者で、皆からの信頼は厚いですね。あと美人ですし〕
ふーん、元ランクS冒険者か。鑑定してみよ。
名称:ティア・アシェス レベル:76
クラス:盗賊
種族:アルヴ・雪精族 精神状態:平常
年齢:102歳 使用武器:白鯱の片手短剣、紅蜥蜴のナイフ
HP: 489 MP:201 SP:103
天命値:353 筋力値:301 敏捷値:441
知識値:505 魔力値:204 カリスマ値:359
幸運値:314
スキル
短剣法:Lv.7 暗視:Lv.8 気配察知:Lv.8 音響特定:Lv.7 消音:Lv.9 潜影:Lv.Max
気配断絶:Lv.8 罠解除:Lv.5 罠製作:Lv.8 登攀:Lv.Max 毒生成法:Lv.8
熱源探知:Lv.Max 体賢法:Lv.3 擬態:Lv.8 空間魔法:Lv.8 木蘭魔法:Lv.2
ユニークスキル
超感覚
アディショナルスキル
潜水:Lv.6 水中遊泳:Lv.7 火魔法:Lv.7 体色変化:Lv.8
シピアルスキル
軟化
着用防具
白鯱の皮防具(胸、腹、腰~足首)、影王の外套、亡霊の腕輪
これもうランクTぐらいなんじゃね?と思えるほどステータスが高かった。前にドゥーシャを鑑定したことがあったけど、それに比肩するほどの強さだ。現役時代とかどんだけやばかったんだよ...
〔うわ、凄いですね。私も初めて見ましたけど、さすがランクTに最も近かった女性冒険者だっただけはありますね〕
聞けば聞くほどやばいな...
そのあとは少しティアと世間話をし、新しい型を試したいと伝えたら、快く応じてくれた。
結果こそ負けたけど、受け流しのやりやすさは前に比べて格段にしやすくなったな。
日向夏は元々遠距離戦タイプだったけど、これで近距離での斬り合いもしやすくなったね。簡単な型の説明としては、攻撃を受け流してからその隙を突いて魔法か剣で攻撃する形だな。
「なかなか様になってるわね。いつの間にこんなに腕を上げたの?」
「帰り際にドゥーシャさんに会って。それで少し訓練をお願いしたんです」
「なるほどあいつがねぇ...ま、いい経験になったんじゃない?」
「はいっ」
話を聞く限りドゥーシャとティアは知り合いかなんかなのだろう。
日向夏はティアたち冒険者たちに礼をし、荷物をまとめて演習所の門をくぐる。日が傾いてきていた。
「あ、やばっ。もうそろそろ南刻じゃん。セイもう来てるかな?」
『なあ日向夏、そのさっきから言ってる南刻って何なんだ?』
さっきから気になっていた単語だった。察するに時間の指標みたいなものなんだろうけどな。
〔そうですね...まあ時間を大雑把に表す指標みたいなものですね〕
日向夏曰く、この星では時間は東西南北を使って時間を表しているそうだ。
奇跡的に時間周期は地球と同じらしく、一年の長さも等しいらしい。
中世の雑踏の中を進みながら、日向夏の家へと進む。途中、変な挙動をしている神父らしき人に話しかけられ、瞳の中を覗き込まれたが、無視して進んだ。
俺たちが通り過ぎるや否や、はっとした表情を浮かべ、すぐに何故私はここにいるんだろう、という疑念を顔に浮かべたまま元居た場所に戻っていった。
そういえば、と俺は日向夏に聞いておかないといけないことを思い出す。
『なあ日向夏、俺のことはどうするんだ?言うのか?』
〔そうですね...何か嫌な予感がしてないこともないですけど...そうですね、言いましょうか〕
『おっけ』
あ、そうだ、あの銀髪ケモ耳っ娘の名前も聞いておこう。日向夏曰く、あのケモ耳っ娘の名前は、セイディ・ラバーリングというらしい。
程無くして、俺たちは日向夏邸、もといヴァイサイト邸に到着した。ヴァイサイト邸は、向こうの家と比べるとかなり大きかった。周囲を森に囲まれており、周り10Km位は人っ子一人いなさそうな雰囲気だ。
まぁ、そんな立地だからこその広さなんだろうけどね。家の造りは石を土台にして、その上に丸太や板を組み合わせてできたログハウスのような作りだった。
〔兄者、ようこそ私の家へ〕
『おう。お邪魔させてもらうぜ』
玄関は少し木の階段を上ったところにあり、重厚なドアによって閉ざされていた。
「ただいま、アリセル。開けてくれる?」
『?』
すると、
「おかえりぃ。数週間ぶり?ま、元気そうで何よりだわ。ちょっと待ってね」
「うん」
.......?だれ?
と、俺の心を代弁するかのようにそよ風が吹く。日向夏曰く、この家のお手伝い、もとい使い魔らしい。名前はアリセリシアで、アリセルかアリシアと呼ばれているらしい。母親がかなりランクが高かった魔女だったらしく、使い魔として日向夏が生まれたときに召喚したそうだ。
「んん?なんか魂が感じられるけど...誰?」
あれ、これもうばれてるやつじゃ...
「あれ?アリセル分かるの?」
「もちろんよ。妖精だもの魂の一つや二つ、感知するだけなら他愛もないわ。けど、肝心の器のほうが感知できないのよね...」
あー、なんだ、ここは言っとかなきゃいかん奴かな?と、考えていたらタイミングよく声がかかった。
「へーい、ヒナぁー遊びに来たぜー?」
「あ、セイ。中入って」
「アリシアもおひさー」
「あら、久しぶり。...また身長高くなってない?あなた」
「え、まじ?やったね」
どうやらアリセルとも仲は良いらしいな。セイディはどうも小さい時から日向夏と仲がいいらしく、よくここに遊びに来ていたそうだ。
そのおかげで日向夏の家とセイディの家は家族ぐるみで仲がいいらしい。まあ、周囲が森だから、小さい子たちからしたら、格好の遊び場なのだろう。
セイディがリビング奥にある椅子に腰かけ、あの四次元袋(暫定)の中からお菓子らしきものを取り出している。
「はいヒナ。母さんが持っていけ持っていけうるさいもんだから黄金鶏のクッキー持ってきたぞー」
「え!?黄金鶏!?やったっ!ありがとっ!お茶淹れるねっ」
なかなかの反応ですなぁ。うーん、どうしよう。二人とは裏腹に、暇になってしまったな。どうしよう、家の中でも探索してこようかな。
『なあ日向夏、家の中見て回ってもいいか?』
〔あっ、はい、いいですよ。外見て貰っても構いませんし。どうぞごゆっくり〕
『さんきゅ』
と、言うわけで、ヴァイサイト邸探索開始だな。ニガに来てもらい、アリセルとセイディに見えないところで変形し、首輪になってニガにつけてもらう。移動開始っと。
ヴァイサイト邸は見た目の通り広く、掃除が大変そうだな、と一瞬思ってしまった。
家の構造としては三階建て...に近いような作りで、かなり広かった。特に興味をそそられたのは、一階の大部屋だった。なんとぱっと見40畳ほどの広さで、天井も3m程はありそうだった。
床はコンクリートのような物質で塗り固められており、かなり頑丈そうだ。中でも目を引いたのは、壁にかかっている無数の武器たちだった。典型的な片手剣から、かなり歪な形をした戦槌まで、ありとあらゆる武器がその部屋にはあった。
なかなかコレクター魂が熱い人のお部屋だねぇ。部屋の中には藁で編まれた人形などがあり、どうやら訓練所かそんな感じの使い道らしい。
次に興味をそそられたのは、ガレージ(?)的な部屋だった。こちらもさっきの大部屋に負けず劣らずの広さで、何かよくわからない機械が二台置いてあった。
ぱっと見一人乗り位しか分かることがないんだよなぁ...と思いつつ家の外に足を運ぶ。家の外は広葉樹林っぽい感じの木がたくさん立ち並んでいた。近くから水が流れる音も聞こえるし、川か何かがあるのだろう。森は落ちかけた夕日に照らされ、神々しく輝いていた。
ひとしきり探索を終えた後、リビングに戻ってきた。日向夏とセイディがテーブルをはさんでカードゲームをしている傍ら、アリセルが皿の片づけをしていた。
む、何か良い香りを出してやがるなあ、あの皿。




