夜の鯨
掲載日:2016/12/03
夜の鯨は闇の中
星を吹いては
その身体を翻し
誰の夢を泳ぐ
穏やかな眼差しで
慈愛に満ちた声で
大きな闇のまま
優しく躊躇いを包み
思い起こすこと
思い返すこと
振り向いた夜の端から
それでも
迎える朝に向けて
あげる飛沫
誰かの涙に似た温度で
冷たい夜があって
ひとりではどうにも
堪えきれない夜があって
いく千の見知らぬ窓の中
彼は彼の
彼女は彼女の
さみしさを握りしめているから
夜の鯨は闇の中
照らされるには
かなしい気持ちを
救うでもなく
癒すでもなく
ただそれを知っていると
添う
大きな闇のままで




