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第五十八話 祭りの後

「遠くで一つ邪な気が消えた。まぁ、当然か向こうには守璃がいるんだから。それよりこっちもそろそろ終わりそうだ」

 眼下で一体の獣が佇んでいる。

 体は虎、尾は蛇、顔は狛犬のような身の丈5メートル程の巨獣。

 そんな化け物が傷だらけとなり今にも崩れ落ちそうになっている。

 それをやってのけたのも巨獣の前に立ちはだかる二人の少女。

「体力測定の時も思ったけど、戦うときは雰囲気が違うな二人とも。例えるなら――」

 憂いの表情で袖を振り乱す舞姫と悲痛の表情で剣を振り回す剣姫っと言ったところか。

 そんな二人の戦姫は巨獣を翻弄するように、互いを支え合うように立ち回っている。

 巨獣が力の限り振り上げた腕も舞姫の神楽を見れば目を回したようによろめき屈む。

 そこに剣姫が剣で四肢を切り刻む。

 凡人達(ひと)にとっては最良の戦法。

 しかし、それは薄氷の上を歩くに等しい。タイミングをはずせばあっさりと崩れ去ってしまう。

「あたしと守璃じゃまずできない。それを合図無しでやっているんだから余程の信頼と鍛錬を積み上げてきたに違いない」

 桜木の上で垂れ下がった赤髪を弄びながらあたしは静かに俯瞰する。

 そして半刻ほどの戦闘もいよいよ終わりを告げる。

「とどめだぁぁぁ!」

 剣姫は、雄叫びと共に跳躍し舞姫によって屈まされた巨獣の首を両断する。

「お見事」

 剣姫が華麗に着地すると、巨獣は跡形もなく消えていった。

 浄化だ。

 神聖な力によって倒された怪は、天に滅される。そうしなければ、新たな怪生み出す材料になってしまう。

「やったね、みーちゃん。けがはない?」

 舞姫。もとい音無春乃は剣姫こと近衛美麗に駆け寄る。

 戦いを終えた二人はいつもの雰囲気に戻っていた。

「あぁ、もちろん。それよりも、もう一体不穏な気配がしていたが大丈夫だろうか」

「たぶん大丈夫じゃないかな。もう気配は消えてるし、この境内だったら結界が貼られてるからここみたいな少しずれた世界でしか顕現できないよ。もちろん人が迷い込む心配も」

「そうか。そうだな、今回は強敵だったし無理に探すのはやめようか」

 この鬱蒼とした夜の森に似つかわしくない仲睦まじい空気をかもしだしながら、二人はそろってその場を後にした。

「さて、音無春乃に近衛美麗。現代の退魔師か。これは少々厄介になりそうかもしれない。一応大将に報告かな、幼狐には……まだ黙っておこう。っと、そろそろ夏樹たちと合流しとくか」

 あたしは二人が完全にいなくなったのを確認してから桜木から降りて、一人薄暗い木々の中に溶けていった。



「ふむっ、やはりおかしいのう」

 先ほど守璃と永遠から極秘に報告を受けてからというもの、わしの美しい黄金色のひげがビンビンと反応しておる。

 あきらかに向こうに異常が発生している。

 怪の異常発生は一応調べていたから分かっていた。じゃが、それよりも今回遭遇したものの特異性、そして永遠の証言から狙われたのは夏樹かもしれないということ。

 わしが思っている以上の何かが起きておるのかもしれん。

「どうしますか幼狐様」

 後ろに控えていたロアが問うてきた。その表情も非常に険しい。

 どうやら、怪物界の方の情報収集でも何か問題があったらしい。ここ二、三日不眠不休で働いておる。

「向こうに直接行くべきかもしれんのう」

「それは了承できません。まだ仕事が残っていますから。他のものを向かわせましょう」

「しかし、誰に行かせるのじゃ。怪と出会う可能性を考慮するならば戦闘に長け、かつ現状を把握できる知力も必要になってくる。わしとロア以外で誰かおるかのう」

「それは……」

 わしの配下のものも総動員で情報収集に向かわせておる。該当するようなものはそう思いつかなんだ。

 しかし、わしとロアの沈黙は意外な形で破られた。

「わっちが行きんしょう」

 扉の先から声が聞こえてきた。この人を小ばかにしたような女の声は、ワシの良く知る人物じゃった。

「どうしてこんなところに貴様が」

「たまたまどすぅ。それよりも、数日後にわっちが行くんでよろしゅうたのみますえ」

 一方的にそう決めると、扉を一度も開けることなくその人物は遠ざかって行った。

 奴は昔からそうじゃった。ふてぶてしく、押しつけがましい。正に暴君。

 しかし、独自のカリスマ性を持っている。

「よろしいのですか。彼女に行かせると色々と問題が起こるのでは」

「仕方あるまい。許可せずとも勝手に行ってしまうじゃろ。むしろ、事前に向かうことが分かっただけましじゃよ」

「では、後々夏樹様達に向かわれることを伝えておきましょう」

「それが最善か……」

 しかし、奴が動き出すとはいつもの気まぐれなんじゃろうか。

 あの三大妖怪一の武闘派が。

こんにちは五月憂です。

今回で、お花見回も終わり一段落。

爛がいなくなった理由と今後の展開を示したエピローグ的な話でしたがどうだったでしょうか。

さて、次回からのお話ですが、以前お知らせをしていました。今回からしばらく休止し、全体の推敲や加筆修正等の作業時間を設けたいと思っています。詳しくは、後日活動報告にてお知らせしますが、皆さまには大変ご迷惑をおかけします。

最後になりましたが、「突如始まる異種人同居」を読んでいただきありがとうございました。

今後とも「突如始まる異種人同居」をよろしくおねがいします。


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