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第四十話 第1の計画

 しばしの仮眠から起きたばかりで、頭が朦朧とする。かろうじて先生の女性にしては少々低く抑揚のない声が聞こえてくるくらいだ。

『今日はホームルーム前にみんなに伝えておくことがある』

 先生がそう言ったことが合図のように教室のドアが開き、誰かが教室内に入ってきた。

 すると、一気に教室の空気が変わった。

 入学式を終えて数日しかたっていない。やはりどこか浮かれた雰囲気が漂っていた教室が、ぴしゃりと静かに、どこか張り詰めたような空気になる。

 そして、さっきまでのぼけていた俺も他とは違う意味でグッと息をのんだ。

『新しいクラスメイトだ』

『初めまして』

『銀木阿斗です』

『……猫目、クロ』

『織田爛だ』

『御盾守璃』

 教卓の傍には、今朝まで顔を合わせていた面々が。

 どうしてあの四人が!?

 俺は思わず立ち上がりそうになるほど驚愕し、同時にこの場の空気に納得した。

 絶世の美女。

 そう形容してしまうほど彼女等の容姿は整っている。

 その上、一人は包み込むような優しさが、一人はすべてを魅了する愛らしさが、一人は爛爛とした明るさが、一人は芯の通った凛々しさが。その仕草と言葉遣いから伝わってくる。

 つまり、この場の誰もが彼女らに見惚れたのだ。男女とはずに。

 そして、その静寂は彼女らの簡素な自己紹介と共に瓦解し、当然のようにボルテージは最高潮に達する。

 どよめくクラス。歓声とも雄叫びとも分からない。

 拍手を送るもの。隣の人と彼女らについて話すもの。人知れず顔を赤めるもの。

 彼女ら自身が面食らってしまうほど――実際クロは少しビクついていた――クラスは騒がしくなる。

「はいはいはい」

 それを、手を叩きながら諫める先生。

「彼女たちは、海外から帰国したばかりで入学式にも遅れてしまった。この様子だと、大丈夫だと思うが仲良くするように。以上」

 そう言って、ショートホームルームは始まったのだが、やはりクラス中はどこか集中し切れてないような感じで、仕方ないかと肩を透かした先生はチャイムと共に教室を後にした。

 一時間目の休み時間。クラス中が四人のもとに集まっていた。

 特に、男女の差は顕著で。クロと守璃さんは女子メインに、阿冶さんと爛さんは男子メインの囲まれている。

 どうやらクロの愛らしさと守璃さんの凛々しさが女子受けしたようで、阿冶さんの柔らかさと爛さんの話しかけやすそうな軽さが男子受けしたようだ。

 本当は今回の事情を聴きたいところなんだけど

 あの中に入った挙句、俺たちの関係――特に一緒に住んでいることが周知の事実になるのは避けたい。非常に。

 一体どうすれば

「すごい人気だね。あの人って確か。銀木さんだよね――」

 俺が悩んでいると、音無さんが話しかけてきた。

「――夕月君と一緒に住、はわっ!」

 そこで、俺は慌てて音無さんの口に手を当てた。そして、顔を近づけて耳打ちする。

「ごめん音無さん。一緒に住んでいる件はい言わないで」

 音無さんは、顔を真っ赤にしてコクコクと勢いよく頭を縦に振る。

 すると、

「何をやっているんだ」

 薄らと青筋を浮かべた近衛が立っていた。

 音無さんいるところに近衛あり。近衛が音無さんの傍にいないわけがないのにうかつな行動だった。

「やっ、これには訳が」

 バッと、俺は音無さんから離れた。

 顔を赤くした音無さんが近衛をなだめて幸いにも制裁は免れた。

「それにしても、四人そろって入学式に間に合わなかったなんて珍しいよね。しかも、全員同じクラスだし」

「そ、そうだね」

 遠くから警戒心を向ける近衛が未だ気になりながら答える。

 ……そうだ! わざわざあの集団に割って入らなくてもいいんじゃないか

「音無さん。お願いがあるんだけど」

「えっ?」



 二限前の休み時間。

 俺は阿冶さんを屋上前の踊り場に呼んだ。

 正しくはさっきの休み時間のうちに音無さんにお願いして呼んでもらったのだが、おかげで目立たず合流することに成功した。

「あの、夏樹さん。今回の件についてですよね」

 阿冶さんは、どうやらなぜ呼ばれたのか察しがついているようだった。

「はい。どうして学校に」

「これは、こちらの世界に我々が順応できるのかという当初の目的の実戦でして――」

 阿冶さん曰く、今回は異種人が人間界で人間と混ざって学校生活を送れるのかというデータをとるための事だったようだ。

「――ちなみに入学式に間に合わなかったのは幼狐様が学校諸々の事を忘れていたようで、私たちもつい先週今回の計画を聞きました」

 なるほど、道理で最近皆忙しそうにしていると思った。

 それにしても、あの狐は一体何をやっているんだ

「でも、俺に一言教えてくれても」

「それはですね……大変申し上げにくいのですが……」

 阿冶さんは眉根をへの字にして困った表情をしながら話し始めた。

「どうしたんですか?」

「……幼狐様がおもしろそうだからと――」

 良し。ロアさんに言いつけよう

 俺は、静かに妖狐への制裁を心に決めた。

「あの、なるべくご迷惑をおかけしないようにするので、一緒に学校に通わせてもらえませんか?」

 阿冶さんの切実なお願いを聞かないわけにもいかない。支えて貰っているのは俺の方だし。まして、俺は彼女らに強制を強いる権利など持ちたくないとも思っている。

 既に結論は見えているのだが。

 心配なんだよな。学業は大丈夫だろうけど、なにぶん常識が欠落している節がある。阿冶さんは天然を発揮するときがあるし、クロは人間関係が心配だ。そして、あの二人、爛さんと守璃さんにいたっては、逆セクハラと初対面でいきなり決闘である。本当に何から何まで心配が尽きない。

 何だか最近親の気持ちが分かってきた気がする

「……分かりました。俺も、いつもお世話になっているし、サポートします」

「ありがとうございます。夏樹さん」

「でも、とりあえずこれだけはみんなに伝えといてください。俺と一緒の家に住んでいることを言わないこと」

「分かりました。けど、どうしてですか?」

「それは、良からぬ噂が流れかねないからです。まして、四人とも美人ですから。それに、無駄に俺たちが注目されると秘密が漏れる可能性も上がりますし」

「なるほど。理解しました」

 とりあえず伝えたかったことは言えて、少し気が楽になった。

「それにしても、外国から来たとかって」

「設定的には――四人とも親が仲良く海外の同じ学校に通ていて、高校進学とともにこちらに戻ってきた――っていう設定らしいです」

「設定って。よくそれが通用しましたね。そういえば、皆すんなり受け入れてたし」

「それは、妖狐様が妖術を使ってみんなの認識を少しだけ変化させたためですよ」

 難しいことは分からないが、妖狐の術らしい

「本当万能ですね」

「言っても、洗脳と違い一種の催眠術みたいなもので、あくまでちょっとしたことの認識に関与することしか出来ないようです」

「へー」

 余計に分からん。

 それからしばらく会話をしてから俺と阿冶さんが教室に戻ると、

「夕月君。ちょっと次の休み時間いいかな」

 満面の笑みの音無さんが待ち構えていた。

皆さんこんにちは五月憂です。

もうすぐ年が明けますね。

皆さんは年越し、誰とお過ごしですか。家族? 友達? 恋人?

五月は、一人で年越しです。。。

さて、今回で異種人達が学校に入学したわけですが、今後波乱万丈な出来事が待っていそうですね。

そして、ラストの音無さん。一体なぜ待ちわびていたのか次回お楽しみに。。。

っと言いたいのですが、活動報告にて予告していましたが、二月ごろまでテストで休載です。

最後になりましたが「突如始まる異種人同居」を読んでいただきありがとうございました。

今後とも「突如始まる異種人同居」をよろしくお願いします。


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