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第十八話 幽霊騒動?

夏樹は、家の名称について一晩中考え続けた。

遂に一夜明け、あらかたの準備は整った。

朝食後、住民全員が集まった場で夏樹は、自分が考えた名前を皆に伝える。

『とばり荘』

異界と異界の中間にして出会いの場。異種人達の憩いの場でありつつづけられるようにそんな願いのもと、この日からこの場所はとばり荘となった。

そして、そんな目でたい日の深夜夏樹は見ることになる。

冷たい印象の切れ長の赤目に腰まである白髪の女性の姿を。

「なに~? 幽霊をみた~?」

 昨晩の事見たことを早朝トレーニング後にそれとなく爛さんに話してみた。異種人だと思うし、雰囲気というか、一瞬で消えたところというか、なんとなく思いつくのが幽霊だったから、まず初めに爛さんに聞いてみた。

 しかし、話しを聞いた爛さんはと言えば、おなかを押さえて盛大に笑い散らかしている。

「なんなんですかその反応は?」

「いやー、おかしなことを急に言うから――フフフフフッ」

 爛さんは口元を押さえているが、これっぽっちも笑いをこらえきれていない。

 その態度は返って失礼な対応なのにきづいているのかこの人は

 俺は、あからさまに馬鹿にしている爛さんにイラっとしつつさらに付け加えた。

「ほんとですってば。幽霊を見たんです」

「いや、信じてないわけじゃないよ。むしろ、毎日見てるじゃん。あたしを……クックックッ」

「いえっ、爛さんではなくて。もっとこう全体的に希薄なオーラを漂わせていて幽霊っぽいっていうか」

「それじゃぁ、あたしが幽霊ぽくないってことか?」

「そうですけど」

 爛さんはガクッと、足を踏み外した。

「言うようになったな夏樹」

 爛さんは顔を近づけてきて俺の胸にドスッと人差し指を当ててグリグリとえぐる。

「まぁ、でもそれはありえないと思うけど」

「どうしてですか?」

「あたしが感じないからだよ。あたしも幽霊だからな、それなりに霊気を感じ取れるんだよ。最初に来た日に確認したけど霊的なものは感じられなかったし。それにあたしたちは物体を透過することは出来ても姿を完全に消すことは出来ないからな。少なくとも幽霊ではないだろう」

「そうなんですか。じゃぁ、あれは一体何だったんだ?」

「どんな感じ奴だったんだ? その――容姿とか」

「そうですね。透き通った白い肌に腰まである白い髪。切れ長の赤目で静かで冷たい印象、でしょうか」

 俺は、昨日見た女性について思い出しながら事細かく説明する。と言っても、一瞬だったし何か声を発したわけじゃないから、姿形しか話せることはなかった。

「ふーん、……そういうのが好みか」

「えっ、何か言いました」

「……夏樹の妄想じゃないの~? 理想の女性とか」

 爛さんは、神妙な顔をしたのち、俺の問いにいやらしくニヤニヤしながら茶化すように言った。

「ちっ違いますよ」

「じゃぁ、どんな子が好みなんだ?」

「何でそう言う話しになった!?」

 好みの子か……

「……そういえば、考えたことなかったな」

「嘘つけ。お前ぐらいの年の男が考えたことないわけないだろ。何だ? 人には言えないようなタイプか? 実はマニアックな趣味があったのか?」

「バカな事言わないでください」

「じゃぁ、どういうのが好みなんだよー」

「そんなこと言われても」

「じゃぁ、家のメンツで言えば?」

 家って……家のメンバーは俺が言うのもなんだけど全員かなりレベル高いじゃないか。阿冶さんは家庭的で頼りがいがあるし、爛さんも意外と繊細で可愛らしい部分とかあるし、クロは言わずもがな小動物的な保護欲をくすぶられるし……イヤイヤ、これじゃぁ、まるで俺が優柔不断みたいだし

 元々一人を選んだら後々気まずくなるんだから決める必要ないか。うん、そう。気まずくなるから

「……皆素敵だと思いますよ」

「あたしもか?」

「はい」

「そうか……エへへ」

「何照れてるんですか。柄にもなく」

「そうか? エヘヘヘヘ」

 爛さんは、一人照れながら道場へと向かって言った。

 何がそんなに嬉しいのやら

 それから、朝食をとった俺は、居間でクロと日向ぼっこをしながら考えていた。因みに、爛さんはと言えば、いやに気合が入っているのか朝食には出てこず未だ道場で素振りをしている。

 ともかく幽霊じゃないのか。でも、幽霊じゃないってだけで異種人である可能性はまだ十分にあるんだよな

「クロ」

「あに~」

 胡坐を掻いた上に気持ちよさそうに座るクロは、間延びした声で答える。

「異世界から異種人が勝手にこっちに来る事って可能なのか?」

「う~ん、ほとんど不可能だと思う」

「どうして?」

「門は厳重に警備されていて、それぞれの世界の長が直接管理しているの。だから、勝手には無理」

「そうか」

 じゃぁ、やっぱり爛さんの言う通り気のせいだったのかな

「でも――」

「でも?」

「突発的に門が出現することはある。こっちの世界に私たちの存在が記されているのがその証拠だと思われている。例えば人が死んで魂が冥界に行く際は、魂が一定数一か所に集まったら突発的に門が開くの。それが、どういう理由で起こるのかは分からないけど、そう言う現象があるのは確か」

「なるほど。確かに」

「それ以外にあるとしたら、まだ見つかってない門があるか、各世界の長並みの強い力があれば無理やり開くことも可能かも?」

 そうなると、故意かあるいは偶然かでこっちに来た異種人をたまたま俺が見たのか。でもそれって

「極めて低い可能性の話だけど」

 そうだよな。そんな都合よくここに現れるわけないよな

「なるほど。良く分かったよ。……珍しいよな、クロがこんなに話してくれるなんて」

 いつも口数は少ない方だし

「夏樹だから。……夏樹にだけ」

「そっか。何かうれしいな」

「クロも夏樹と話せてうれしい」

「じゃぁさ、もう一つ聞いていい?」

「何?」

 クロは頭を俺の胸にポスッと当てて見上げてくる。

「クロってもしかしてかなり頭いい?」

 さっきの話を聞いてて思ったけど

 クロは、頬をふくらませって言った。

「……夏樹、失礼」

「ごめん」

「私の成績は学年で二番」

「二番! すごいな」

「ちなみに一番が阿冶」

「あー、確かにそれは納得……って、同じ学年なの!?」

「……さらに、失礼。私も阿冶も同い年。私が小さいのは種族故のこと、猫又はもともと体の大きい種族じゃないの」

「そうなんだ。そういえば、爛さんは?」

「爛は、年齢の変化はないから。でも、同級生」

「へー、異世界の人達が入り混じった学校か」

「唯一の学校。私たちはそれぞれの世界の長に所縁があったからその学校に行ってた。でも、私たちが直接関わり始めたのはここに来ることが決まってから」

「そか……本当に――」

「同い年!」

「……すいません」



「夏樹さん。幽霊を見たってほんとですか?」

 夕食の後片付けをしていると、阿冶さんが不意に話題を振ってくれた。おそらく爛さんやクロに聞いたんだろう。

「実際は、幽霊じゃないみたいですけどね。見間違いかもですし」

 そう言えば、阿冶さんにはまだ相談していなかったっけ

「阿冶さんは、何か変わったことに気づきませんでしたか」

「そうですね……相変わらず寝苦しくてよくここに来たりしているんですけど、そういうことはなかったですね」

「そうですか……あの、まだ体の方が」

 話してくれてから、まだ数日しかたっていないのだから、改善されてなくてもおかしくはない。最近ボーとしていることも多いし。俺にできることがあればいいんだけど

「大丈夫ですよ。世界が違うからなのか火照ったような感覚がありますが、お水を飲んだりして色々工夫していますから」

 阿冶さんは、そう言った後、さらに自分の世界について少し語りはじめた。

「もともと怪物界に太陽はなく、常に暗い夜の世界なんです。だから、気温も必然的に低いと考えられます」

「考えられる?」

「はい。環境や地形の差による温度の差はあっても、一か所に留まっている種族にとっては四季も天候の変化もない常に常温の環境ですから。今までこんなことはありませんでしたし、この世界に来た住人の話も聞いていませんので」

 なるほど

 確かに、日光がないということは気温の上昇も考えにくいのが普通だ。こっちの世界の常識が通用するのならの話だけど

「そう言えば、昨夜もお水を飲みにキッチンに来たんですけど、やっぱり何も見ていませんね。夏樹さんと会っていないので仕方のない話なのかもしれませんけど」

「そうですか……」

 じゃぁ、やっぱり見間違えただけなのかな

「夏樹。……まだ悩んでる?」

 気づいたら隣にクロがいた。

 炊事場に手を掛けて一生懸命俺の顔を見ようとしている。

「いや、もう考えない事にしようかなって。考えすぎな気がするし」

「どうしても、気になるならロアに相談」

 ロアさんか。確かにロアさんなら何か手を打ってくれそうだな。幼狐じゃなくて

 ロアさんがクロに信頼されているのか、幼狐がクロに信頼されてないのか。同じ世界で過ごしたクロでさえ幼狐ではなくロアさんを名指しする辺り幼狐の扱われ方が不憫に思われる。

「そうだね。あんまり心配をかけたくはないけど、どうしてもって時は連絡するよ」

「ロアさん頼りがいがありますからね」

「ロア頼りがいある」

 この会話の中に幼狐が出てこないのは、日頃の行いのせいなんだろうな。やはり、信頼されてなかったか幼狐よ



「むっ、今誰かにバカにされているような気が」

 怪物界――書斎にて。

 金色の毛に覆われた狐耳を震わせて幼狐はそう感じた。

「仕方ありませんよ。事実ですので」

 その横にぴったりと幼狐をマークしているロアさんがさらっと言い捨てる。

「そんなことはない。ワシは、狡猾な九尾の狐じゃぞ。深層心理を読み解き欺くことが容易なほど頭は良いのじゃ」

「ほう。では、今私が思っていることを当てて見てください」

「そんなのたやすい事じゃ」

 得意気に幼狐は、振り返ってロアの顔を見る。

 すると――

「えーっと、仕事が山積みなうえに脱走を測り、そのうえ……どうでもいい事で……手を、止めて――」

 読んでいくうちに幼狐はポタポタと冷や汗を流していく。

 それに従って、ロアのいつもと同じ無表情の背後に少しずつ鬼――いや、黒狼が浮かび上がっていく。

「分かったら、早く手を動かしなさい!」

 怪物界では今日もまた鉄拳が振り落とされるのだった。

「ごめんなのじゃー!」



 暑い。重い。

 深夜――もう月が空高くに上り、後は落ちていくだけといったころ。

 俺は、猛烈な暑さとのしかかられるような重さを感じた。

 まるで、金縛りのような。幽霊騒動(俺の勝手な思い込み)のおかげで余計にそんな心霊チックな単語が俺の頭の中に浮かんだ。

「フー」

 何だろう。何か聞こえた。顔に風が当たる。

 ドアなんて開けてたっけ? もしかして、開けられた?

 やばくないか。誰かが侵入してきたとしたら。……生命の危機! 落ち着け、爛さんが夜這いをかけに来ただけかも……それはそれで貞操の危機だ!

 まずい一刻も早く目を開けないと

 怖い。けど、そんなこと言ってられない。

 俺は、三、二、一、とカウントをして勢いのまま目を開けた。

 すると、

「――!」

 目の前には、鋭い紅の瞳。真っ白い肌の女性の顔が――

 恐怖で声が出ない。空気が漏れて出て行くのを感じる。

 まるで獲物を狩るような眼。冷や汗すら出てきそうなプレッシャーを感じる。

 吐息が顔にあたる。

 そして――

「……夕月……夏樹……」

「うわぁぁぁぁぁー!」

こんにちは五月憂です。

皆さんはもう学校は始まりましたか? 私は明日から、授業開始というわけで真剣に億劫な中投稿しています。

今回から、また新編突入ということで途絶えないように頑張って投稿していきたいと思います。

来週は、ついに紅の瞳の女性の正体が明らかに!

是非、また読んでくださいね。

あっ、来週から授業の日程の関係で更新日が変更されます。予定は、木金のどっちかにしようとは思っていますが、詳しくは後日更新する活動報告を読んでいただけると嬉しいです。

最後になりましたが、「突如始まる異種人同居」を読んでいただきありがとうございました。

今後とも「突如始まる異種人同居」をよろしくお願いします。


【改稿後】

今回十八話は、細かいところの加筆がメインとなっております。

前回の話が一新したことによって、会話に違和感がないようにも編集しました。

是非読んで見てください。

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