プロローグ
気がつくと暗闇の中に居た。
上も下も右も左もわからない。深い深い闇の中。
どうしてこうなってしまったんだっけ
自分が今どんな状態で、どこにいるのかさえも分からない。
分かる事はひどい苦痛。
痛い、苦しい、熱い
これは、夕月夏樹の夢。それが過去に体験したことなのか、それとも唯の架空のことなのか。
俺には分からない。
ただ、目覚めても記憶に焼き付いているほど幾度となく見る不思議な夢。
全身を突き刺すような痛み。呼吸すらままならないほどの苦しさ。そして体の内側から焼かれるような熱さ。
そんな感覚が幼いころの俺に襲い掛かる。
まだ精神的にも肉体的にも小さな俺には、とても耐え難い苦痛だった。
助けて。お父さん、お母さん。お願い、誰か……
どんなに強く願っても、それが口から発せられることはなかった。
次第に痛みは増していき、「あぁ、もう死ぬんだ」と、覚悟とも諦めともつかない思いが俺の胸中を満たしていく。
そんな時だ。決まって何かが聞こえてくる。
「―――」
誰?
それは幻聴か――いや、聴覚が働いているかさえも分からないが、微かに誰かの声が聞こえた気がした。
僕を呼んでいる? ……誰でもいいから、助けて
必死に助けを求めようと口をパクパクと開閉する。開閉しているつもり。
とにかく誰なのかも分からない相手に向かって必死に口を動かし。暗闇の中で必死に手を伸ばした。
それに反応してくれたのかどうかは分からない。ただ、僕の口を塞ぐように優しく柔らかなものが触れた。
幼い自分には、何が起こったのか分からなかった。
目は見えないし、耳も聞こえているか分からない。訪れる感覚は、酷く痛烈なものばかり。しかし、そんな状況下でもはっきりと感じられる感触だった。
それから、霞がスッと消えていくように俺の中の世界がクリアになった。
黒が白に塗り替わっていった。
痛みが消え、苦しみが消え、熱さが消え、そして耳がはっきりと聞こえるようになった。
「もう、大丈夫」
それは、とても優しい女性の声色だった。
まるで母に抱きしめられるかのような安心感のある声。
幼い俺は、その助けてくれた女性を見ようと重い瞼を開ける。
………
それからの記憶は覚えていない。思い出せない。
唯、その女性が優しく綺麗で……温かかったことはぼんやりと覚えている。
こんにちは、五月憂です。
今回、初の連載作品を出させてもらいました。
テーマは、タイトルにもありますが異種人(人外)同居モノです。
今まで出した作品と少し方向性が変わるかもしれませんが、一生懸命書くので是非ついてきて欲しいです。また、プロローグの書き方がよく分からずおかしな文章になっているかもしれませんが、温かい目で見てやって下さい。アドバイスや感想も是非もらえると嬉しいです。
初連載で、これからのことが少し不安ではありますが、「突如始まる異種人同居」をよろしくお願いします。また、五月憂の他作品、「桜花の舞」や「ハイイロセカイ」などもよろしくお願いします。
【改稿後】
皆様大変おまたせしました。
今日から毎日一話ずつ阿冶編までを改稿していきます。
この休止期間分の作品を改めて見ている中で、誤字脱字、文のおかしなところ、改善点を自分でも多く発見しました。今回大型改稿するにあたって、これでいいのだろうか。間違いはないだろうか。と、疑心暗鬼になりつつ直していました。久しぶりに投稿するにあたって誤りがないかと今も心配な気持ちはありますが、今の自分にできることはやったつもりなので改めて多くの人には楽しんでいただき、また、未熟な点は指摘していただきたいと思います。改めまして、「突如始まる異種人同居」をよろしくお願いします。