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助手としてのこれから

 その後のことは助手として語るべきだと思い、記すことにする。

 結局事件は自殺ということに片付いたらしい。

 当然、熊谷ちゃんにお咎めなし。

 そりゃあそうだろう。告白されただけなんだから。

 雨音さんは理事を辞職したらしい。

 家も引っ越してしまって音信が途絶えてしまった。

 風の噂だと、海外に移ったようだ。

 手芸同好会は廃部になった。

 部員がいなくなったのだから、仕方がないと言えば仕方ない。

 友人たちと先輩たちはどうなったのか、よく知らない。

 疎遠になったらしいけど、詳細は知らない。

 これらのことは青木さんから教えてもらった。

「砂原さんは知るべきだと思ってね」

 そう言って悲しげに笑った。

 そんな私は、まだ葉桜探偵事務所で働いていたりする。

 土日を挟んで月曜日。

 鍵を開けて「おはようございます」と挨拶したら、驚かれた。

「てっきり辞めると思ったよ」

 そう言われたけど、私は「まだ教えてもらっていないこともありますから」と言った。

「教えてもらっていないこと? なんだろうな」

「どうして熊谷ちゃんが返事を保留したのかとか、結局返事はどうなのかとか」

「…………」

 沈黙してしまった桜川さんに私は満足した。

「もしかしたら、保留したんじゃあなくて、返事をしたのかもしれませんね」

「なぜ、そう思う?」

「女の勘です」

「……はあ?」

「嘘です。理由はシュシュをしていないからですね」

 シュシュをしてこなかったのは疑われるから。

 裏を返せば疑われることをしたと言うことになる。

「そこまで分かっているなら、訊くこともないじゃないか?」

「それと、雨音さんにあんなこと言ったのは熊谷ちゃんを助けるためですよね」

 怒りの矛先を自分に向けるため。

 そうすれば死の原因である熊谷ちゃんに怒りが向くことはない。

「意外と優しいんですね。桜川さん」

「……むかついたのは確かだよ」

 そっぽを向いて肯定しなかった。

「さて、助手を続けることでいいんだな」

「はい、これからもよろしくお願いします」

 我ながら良い返事ができたと思う。

 桜川さんはいつものように安楽椅子に。

 私は調理室に向かって紅茶の準備をした。

 紅茶の準備をしながら、私はさっきまでの推理らしきことを教えてくれた院長の言葉を思い出す。

「彼は不器用な人ですけど、優しい人でもあるんですね」

 そう電話で言っていたけど、そのとおりだなあと思った。

 差別的な物言いをするけど、私はそれを包み込んであげたいと思うようになった。

 雨音真理ちゃんの言う恋愛でもない。

 友愛でも家族愛でももちろんない。

 言うならば、博愛かな?

「砂原さん、紅茶の準備できた?」

「はーい、今すぐに」

 ようやく気づいた自分の気持ちが嬉しくて。

 今日も平和になればいいなあと思った。

 だって、世界は愛に満ちているんだから。


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